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南極を喰らふ

日本から1万4千キロも離れた南極で観測隊員は一体何を食べているのだろう。11月しらせで出発した観測隊に共同通信の澤野林太郎記者が同行。南極料理人が作る南極料理を紹介しながら南極生活の裏話をお伝えします。

1月1日地球を診る(53日目)

2010.1.1 16:30
流れ出た巨大氷山
流れ出た巨大氷山

風速30メートルのブリザードが吹きすさぶ中、昭和基地の新年が明けた。ペンギンやアザラシと戯れていたこれまでの南極の姿は一変し、厳しい自然が素顔を見せた。長い間、人類を寄せ付けなかった「白い大陸」南極。南極は今、私たちに小さなシグナルを送り始めている。

観測船「しらせ」で日本から14000キロ。例年よりも南極から離れた南緯50度で初氷山が見えたのはなぜか。観測隊員は、海中の二酸化炭素の量や塩分濃度を調べている。

産業革命以降、昭和基地周辺でも急激に増え続ける二酸化炭素。人間の活動場所から遠く離れた場所で、人間の生産消費活動に起因するであろう二酸化炭素が増え続けるのはなぜか。観測隊員は、半世紀もの間3時間おきにデータを取っている。

強烈な紫外線が降り注ぐ南極の空。日焼け止めにサングラスをしていても容赦なく肌を黒色に変える。フロンによって数センチしかないオゾン層に大きな穴があいたのはなぜか。観測隊員は、大きな気球を飛ばし大気を直接調べている。

「南極は温暖化しているのか」。この問いに多くの研究者は慎重な姿勢を示してきた。実際に昭和基地ではこの50年間、気温はほとんど上昇していない。一方で南極の別の地域では気温が上昇している地点もある。本当に二酸化炭素が温暖化の原因なのか。それとも数万年の単位で繰り返す氷河期、間氷期のサイクルの一局面に過ぎないのか。

南極では人間は風邪をひかないという。ウィルスがいないためだと観測隊の井口まり医師が教えてくれた。ドクターいわく「風邪は体調のバロメーター。疲れていれば体が自然に休養を取ろうとして風邪をひく」。すなわち風邪は不調を訴えるシグナルだ。風邪をひかないと、体に異常があったとしても知らず知らずに無理をしてしまう。その結果、南極で隊員が医者にかかる時点では、症状はかなり重くなってしまっているという。

もしかしたら南極も同じではないだろうか。体(環境)に少し異常があったとしても、あまりにも遠く、あまりにも大きな自然で、あまりにも小さな変化のため、そのシグナルに気づかなかった。私たちは南極についつい無理をさせてしまってきたのではないのだろうか。そしてシグナルに気づいたときには、南極の空に大きなオゾンホールが空いていた。

南極観測隊員は医者に似ている。人でなく南極を診る、そして地球を診る。南極が発している声なき声に、隊員は今日も耳を澄ます。

澤野林太郎

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