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こーろぎ南極記

雪と氷が埋め尽くす「白い大陸」・南極。日本人初の上陸から100年。地球温暖化や未知の自然に挑む第54次南極観測隊のサイドストーリーを同行記者がお届けする。

ワンチャンスの帰還(2月8日)

2013.2.8 23:17
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雪上車3台に分乗して到着したとっつき岬
雪上車3台に分乗して到着したとっつき岬

 朝起きると快晴だった。このままなら早く帰れるだろうと思って安心していたが、朝食を食べている間に大陸内部の方から雲が押し寄せてきていた。そのうちに昭和基地から「ヘリ輸送はしばらく見合わせ」との無線連絡が入ってきた。この後何日間かは天気が悪いとの予報が出ているので、非常にまずい。同行した地圏グループは前夜の焼肉で生の食材を使い果たしているので、残留となればあとはカップラーメンやレトルト食品で食いついないでいくしかない。午前中に観測機器のチェックがすんでやるべき任務が終わると、後はひたすら天気の回復待ちだ。何度外に出ても空は雲だらけで真っ白なので、「今日はダメかな」と半ばあきらめながらiPhoneで将棋をしたり外で写真を撮ったりして時間をつぶしていた。
 朗報が入ったのは昼食の直前だった。「S17でのピックアップはできないが『とっつき岬』まで雪上車で移動すれば迎えのヘリを出せる」と再度の無線連絡。とっつき岬とは大陸へ向かうときの起点になる場所で、雪上車で移動すると2時間だ。全員大あわてで昼食を済ませてS17の小屋を片付け、雪上車に乗り込んだ。雪上車は凹凸のある雪の上を走るのでそこそこの揺れがあり、乗るたびにいつも眠くなる。360度全てが真っ白のぜいたくを少しでも長く見ていたいのだが、不覚にも何度か寝てしまった。
 大陸の端にあたるとっつき岬では、雪がなく岩や砂が露出しているところもある。厚い氷床の上にあるドームふじ基地で過ごしてきた方々は何の変哲もない石を見て「うわー、石だ!」と感激していた。迎えのヘリで昭和基地に戻るともう夕方。天気も悪くなってきていたので、戻るならおそらくこのワンチャンスしかなかったかもしれない。
 ドーム隊の方々のために用意されていたのはなんと露天風呂。後からはほかの人にも開放されたので私も入らせてもらったが、昭和基地からの雪と氷の景色を眺めて入る風呂は最高に気持ちがよかった。当時の気温マイナス2度、風速10メートルは、体感温度ではマイナス18度くらいに当たる計算だ。湯船の中は暖かかったが、濡れた髪とタオルはバリバリに凍った。湯船を出てから屋内に戻るまでの寒さもすさまじいものだった。

興梠 敬介

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