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北極を喰らふ

北緯約77度。北極点まで千数百キロのグリーンランドで、日本の北極観測隊と現地イヌイットは何を食べているのか。同行記者がルポする。

北極圏で資源獲得競争  温暖化で氷減、油田注目

2012.9.17 6:27
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鉱区の説明をするグリーンランド自治政府の鉱物石油省副大臣
鉱区の説明をするグリーンランド自治政府の鉱物石油省副大臣

 北極圏のグリーンランドで、原油や鉄鉱石をめぐる各国の資源獲得競争が激化している。海域や陸地を覆っていた氷が温暖化で急速に解け、採掘が容易になったためだ。グリーンランド沖には原油ガス田があると見込まれており、日本も年内に鉱区獲得に向けた国際入札に参加する見通しだ。
 ▽500億バレル
 北極点まで千数百キロのグリーンランド北東海域。「ここには約310億バレルの原油と天然ガスが埋蔵されている可能性が高い。シェルやエクソンモービルなど数社が優先入札権を持っている」。グリーンランド自治政府の鉱物石油省のヤン・ネルソン副大臣は「来年までに北東海域約20鉱区の探掘権を国際入札にかける」と付け加えた。
 周辺海域の原油、天然ガスの埋蔵量は推計500億バレル。最終的に約10カ国の企業が入札に参加するとみられる。
 日本の独立行政法人、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)もエネルギーの安定確保に向けて東京都港区に会社を設立、12月に入札に参加する予定だ。資源エネルギー庁の松山泰浩(まつやま・やすひろ)石油・天然ガス課長は「北極圏は原油のフロンティア。世界中のメジャー(国際石油資本)が関心を示しており、日本も将来に向け、関心を持っている」と話す。
 ▽減少
 「かつては10月から翌年6月まで張っていた氷が、90年代半ばからは12月から5月までになった」。そう話すのは北緯77度付近のシオラパルクに40年間住む日本人の大島育雄(おおしま・いくお)さん(65)。
 さらに今年の氷減少は激しい。日本の宇宙航空研究開発機構は8月、人工衛星のデータから北極海を覆う海氷面積が観測史上最小記録を更新したと発表した。海域だけでなく、陸地でも鉱山資源をめぐる競争が激化。今春には中国の資源担当相が視察に訪れたという。
 氷の減少は、北極海の往来も可能にした。アジアと欧州を結ぶ従来のスエズ運河ルートより、ロシア北部を通過する「北極航路」は距離が3分の2。燃料削減や日数短縮が期待できる。2011年には中国などの船計34隻が鉱山資源を運搬している。
 ▽懸念
 これまで主な産業は漁業しかなかったグリーンランド。このような大規模開発は初めての経験だ。「この好機を捉え、国の新たな産業を興したい」。ネルソン副大臣はそう意気込む。
 しかし、急激に進む開発を懸念する声も多い。環境社会学が専門のグリーンランド大のマーク・ナタル教授は「環境が汚染されていないか、中立的な機関がきちんと調べなければならない」と指摘する。
 市民団体代表の男性(40)も「いったん原油が漏れれば、北極海の海で回収することはほとんど不可能だ」と話し、住民による監視が必要だと訴えている。(ヌーク共同=沢野林太郎)

 

澤野林太郎

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