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北極を喰らふ

北緯約77度。北極点まで千数百キロのグリーンランドで、日本の北極観測隊と現地イヌイットは何を食べているのか。同行記者がルポする。

「ルポ・北極圏」 凍らぬ海峡アザラシ捕れず

2012.8.24 12:39
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氷山の末端で大島さん=シオラパルク・グリーンランド
氷山の末端で大島さん=シオラパルク・グリーンランド

 40年北極圏に生きる  日本人の大島さん 
 北緯77度、北極圏のグリーンランドで先住民イヌイットと狩猟生活をしながら約40年間暮らしている日本人がいる。
 大島育雄(おおしま・いくお)さん(65)。かつて氷上を犬ぞりで渡ることができた海峡は近年、凍らなくなり、伝統的なアザラシ猟が難しくなった。極北の地で温暖化を身近に感じてきた大島さんと猟に出た。
 幅約60キロ。グリーンランドとカナダの間に広がるスミス海峡。「ここらはかつて6月でも凍っていた。カナダに犬ぞりでよく行ったもんだ」。7月、大島さんが船で連れて行ってくれた場所は青い海が広がっていた。冒険家の故植村直己(うえむら・なおみ)さんが1975年に犬ぞりで横断したこの海峡を2005年以降、犬ぞりで渡った人はいないという。
 パーン。氷河が浮かぶ海に猟銃の音が響く。約200メートル先で海面が赤く染まり、アザラシが浮かんだ。
 「最近は冬に氷が張らず、猟ができる時期が短くなった」。冬季、太陽が昇らない「極夜」となる。真っ暗な中、イヌイットは氷上にマンホールほどの穴を開け、海中のアザラシの「通り道」に網を仕掛けて捕る。
 かつて10月から翌年6月まで張っていた氷は、90年代半ばから12月から5月ごろまでになった。
 大島さんは日本大学で山岳部に所属。日本人で初めて北極点に到達した隊のメンバーだ。初めてシオラパルクを訪れたのは72年。当時、シオラパルクに滞在していた植村さんやイヌイットに犬ぞりや極地での生活方法を教わった。狩猟生活が肌に合い、そのまま居つきイヌイットの女性と結婚。現在9人の孫がいる。
 「面白いところがあるんですよ」。大島さんが船外機を付けた小さな船で連れて行ってくれたのは氷河の末端。氷河下の海底から湧き水のように水が噴き出し、海面が所々盛り上がる。上空には無数の鳥が舞う。
 研究者によると、噴き出す水は真水。氷河表面が解けて落ち、末端から出てくるとみられる。
 アザラシやセイウチなどを捕り、自然とともに暮らしてきた大島さんは、自然の変化に敏感だ。村周辺の海ではかつてはなかった海藻や貝が増えてきたという。風景も変わった。村から見える氷河も40年前は真っ白だったが、海岸から陸に向けて茶色の山肌があらわになってきた。
 「あの氷河、将来はなくなっちゃうだろうな」。真っ黒に日焼けした大島さんが寂しそうにつぶやいた。(シオラパルク共同)

 

澤野林太郎

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