【編集後記】Vol.424=「国際試合」


国際試合は、その競技のさまざまな課題をあぶり出す。いい部分も悪い部分も。
1月22日、国立競技場で行われた「日米ドリームボウル」は、全日本選抜が米アイビーリーグ選抜に20―24で敗れた。
試合後、全日本選抜の山本洋ヘッドコーチ(HC)=富士通HC=とLB趙翔来主将(富士通)がそろって挙げた敗因は「フィジカル面の強度の差」だった。
今回の全日本選抜は、日本社会人Xリーグでプレーする米国籍の選手も含まれていた。その多くが、アイビーリーグより上のカテゴリーの大学でプレーした経験がある。
実際、ニューメキシコ州立大ではLBとしてプレーし、日本でRBに転向したトラショーン・ニクソン選手(富士通)は、アイビーリーグ選抜の守備陣を体力と技術で上回るシーンが度々あった。
「Durability(耐久性)」は、コンタクトスポーツのアメリカンフットボールをプレーする上で大切な資質であり、ここ10年で日本人選手の耐久力の向上はめざましいものがある。
ただ、国籍を問わない〝オールジャパン〟の布陣で臨んだ試合での敗戦は、日本のアメフトのレベルを確認するものとなった。
勝つことを至上命題に掲げていた全日本選抜の選手とコーチにとっては、自分たちの立ち位置を実感する試合になった。
「このレベルの相手には、勝たないといけない」。カナダのプロリーグ(CFL)に参加したRB李卓選手(オービック)の言葉は頼もしい。

新しくなった国立競技場で、アメフトの試合が開催されるのは初めて。最上級の舞台で全日本選抜はアイビーリーグ選抜をあと一歩のところまで追い詰めた。しかし「善戦」や「ナイスゲーム」という評価は、彼らにとってなんの慰めにもならない。
学生では、WR溝口駿斗選手(関大2年)がフィールドに送り出された。せっかく選んだのだから、この機会に全員を出場させるべきだったという声もあるが、ここはコーチ陣の判断を支持したい。
競った試合では1プレー、一人のミスが勝敗に直結する。あくまで「勝ち」にこだわるチームを預かる立場では、そうしたリスクは避けなければならないからだ。

記者会見で趙主将は「1対1で勝てないと駄目だということ」と、憮然とした表情で言った。国際試合であらためて突きつけられた課題は、そう簡単には解決できない現実がある。
明るい材料もある。かつては米国チームのDLに蹂躙されていたOL陣の健闘だ。サイズ的にもかなり大きくなり、QBにパスを投げる十分な時間を与えていた。
試合内容とは別に、フィールドに足を踏み入れて気になったことがある。それはゴールポストのお粗末さだ。むき出しの短い鉄柱はいかにも古めかしく、国内最高の器(競技場)とのギャップがあまりにも大きく、残念だった。
大会を実現した関係者の努力には敬意を表したい。願わくば、継続的に国際試合を開催してほしい。それは会場に足を運んだ1万2083人の熱心なファンも、同じ思いだと信じたい。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 (ししど・ひろあき)プロフィル
1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を30年以上務めている。