×
メニュー 閉じる メニュー

【パラ聖火リレー アラカルト】 パラ選手の躍動、唇で描く 「他の障害者に希望を」

2021.8.23 13:00 共同通信
聖火ランナーを務めた前田健司さん(右)=18日午後、千葉市
聖火ランナーを務めた前田健司さん(右)=18日午後、千葉市
 千葉県市原市在住の前田健司さん(48)は、事故による大けがで首から下が動かず、唇でくわえる特殊なマウスを使い、パソコンで絵を描くアーティストだ。
 パラリンピック選手が躍動する瞬間を捉えた作品を多く手掛け、千葉県の聖火ランナーに選ばれた。公道走行は中止になったが「自分が表舞台に出ることで、少しでも他の障害者の希望になれば」との思いで聖火をつないだ。
 妻や生まれて間もない娘と順調な生活を送っていた36歳の2009年、サーフィン中に波にのまれ、海底の岩にぶつかって首を損傷。命は助かったが、まひが残った。
 「人に頼まないと何もできない」と毎日絶望し、見舞いに来た家族につらく当たった時もあった。
 転機は翌10年。転院先の国立別府重度障害者センター(大分県)で、パソコン教室を受講した。「自分より重い障害のお年寄りが『孫にクリスマスカードを書く』と努力していた。勇気をもらった」。
 口でマウスを操る訓練の日々。文書作成ソフトで図形や線を組み合わせ、アンパンマンを描くと娘が大喜びした。「家族の笑顔のために生きよう」と前を向いた。
前田健司さんが文書作成ソフトを使って描いたパラリンピック選手のイラスト(本人提供)
前田健司さんが文書作成ソフトを使って描いたパラリンピック選手のイラスト(本人提供)
 写真データをパソコンに読み込み、明るさや鮮やかさによって色分けする独自の描写方法を編み出し、会員制交流サイト(SNS)に作品を投稿すると「かっこいい」「パワーを感じる」と人気に。パラ選手の絵を発表し始めたところ、選手本人からも依頼が来るようになり、20年には個展を開催した。
 「設備面だけでなく『心のバリアフリー』も広がってほしい」。障害者の社会進出に貢献したいと、聖火ランナーに応募した。
 「障害のある当事者やその家族が、僕の活動を知って『励みになった』と言ってくれる。一時は人生終わったと思ったけれど、今は僕にできることがあると感じる」と力強く話した。