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共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

誰もが納得する制度に 立命館―関学の再戦に思う 

2017.12.7 12:35 中村 多聞 なかむら・たもん
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昨年、早大のコーチとして甲子園ボウルに参加した中村多聞さんと関学大の鳥内秀晃監督=写真提供:中村多聞さん
昨年、早大のコーチとして甲子園ボウルに参加した中村多聞さんと関学大の鳥内秀晃監督=写真提供:中村多聞さん

 

 大学フットボールは東日本、西日本の代表校が決まり、いよいよ12月17日は学生日本一決定戦の「甲子園ボウル」です。

 これに勝利したチームが社会人(Xリーグ)ナンバーワンと戦うのが「ライスボウル」です。知らない方のために念のため。

 さまざまな意見があるのが、現行の学生の西日本代表校の決め方です。制度を導入して2年目の今シーズン、想定されたことではありますがついに波乱が起こりました。

 関西リーグ優勝を決めた立命館大学が、代表校決定戦でリーグ2位の関西学院大学に敗れてしまったのです。

 今年で72回目を迎える甲子園ボウルは、2008年まで関西の優勝チームが関東の優勝チームを甲子園球場に招く「招待試合」という位置づけで、事実上の学生日本一を決めていました。

 生放送で試合が放映されるのは僕のような大阪人にとって当然のことであり、師走の風物詩として関西のスポーツファンの間で親しまれてきました。

 国立大学である京都大学が強くなるとともにフットボール人気が高くなり、立命館の台頭などもあり関西は「3強時代」に突入し、テレビの視聴者も来場者も凄まじい数に膨れあがったと聞きます。

 近年では生放送も危うくなったりと、フットボール人気は下降気味でした。

 しかし、NHKが甲子園ボウル、ジャパンエックスボウル、ライスボウルという日本の「3大ボウルゲーム」を放送してくださることになり、大会の方式が少し変わりました。

 日本協会に登録しているチーム全てがこのボウルゲームに出られる仕組みになり、地方リーグにも門戸が開かれたのです。

 ボウルゲームの開催日は「東京ドームが空いている日」と決まっているので、参加チームが増えてしまうとスケジュールがキツくなるのは当然です。

 しかし、なぜかこの苦しいスケジュールに関西学生リーグで不思議な枠が登場しました。

 「関西リーグ2位」が西日本の各地区優勝チームと対戦し、勝った方が「関西リーグ1位」と甲子園ボウル出場権を懸けて争うという、若干疑問符が付く仕組みになりました。

 そのため、昨年に続いて「関西学院vs立命館」の第2ラウンドが開催されたわけです。

 残念ながら、現在の地方リーグの力ではこの両チームを倒すにはまだまだ底上げが必要ですので、関西の2強の「再戦」はリーグ戦終了時点で決まっているようなものでした。

 つまり考え方によっては、1試合は四つのクオーターですので2試合で合計8クオーター。しかも真ん中で一旦両チームの得点がゼロになるという変則的な試合方法なわけです。

 前半負けていても勝っていてもハーフタイムで一旦ゼロになり、後半開始なわけです。

 これは極めていびつです。〝最初の2クオーター〟あたりで劣勢だった関西学院は立命館の作戦を全て使い切らせる手法を取り、体当たりで相手の力量を探ったという見方もできます。

 そして後半、立命館の戦略や力量を読み切った上で、自分たちが前半戦に隠していた作戦を使って勝ちに行った。立命館はまんまとそれにはまってしまった、と言えるかもしれません。

 「関西学院は2週間で生まれ変わった(チェンジした)わけではなく、1年間かけてやってきたことを出しただけ。そんなにすぐ変われるわけがないでしょう」というのが、フットボール有識者のご意見です。

 一フットボールファンとしては、面白い試合が増えることは純粋に嬉しい気持ちではありますが、もしやる側だったらとても大変だろうなと思います。

 関西学院や立命館と2週間で2回も試合をしなければいけないなど、ちゃんと学業をこなしながらだと、負担が大きすぎます。

 僕がコーチをしている早稲田大学は、専任のコーチは一人も存在しないので、他チームの分析などは学生が分担して行っています。

 2週間とはいえ、関西リーグ2位のチームはその間に地方リーグの勝者との試合があるので、残りは1週間しかありません。

 NFLやNCAAだとそのような週一のスケジュールが当たり前ですが、それだけを職業にしている専任の監督やコーチが何人も働いていますから、まあどうにかなるってものです。

 最近ではNFLは木曜日に試合をすることもあるので、遠征でマンデーナイトゲームの次に火曜水曜を過ぎればすぐ試合、という不運なスケジュールを組まれるチームもありますが、まさにそれと同じです。

 幸い、関西学院も立命館も組織力というか人材には事欠かないのでしょうけれど、それでも大変だったと思います。

 聞いた話ではこのシステムは来年まで続行され、再来年からはまだどうなるか決定されていないそうですので、どうにかもう少し時間的な余裕が生まれるような仕組みにしてあげられればいいなと思います。

 僕はこのコラムでは学生フットボールのことはあまり取り上げてきませんでしたが、最近は自分が学生に関わっていますので、甲子園ボウル出場に懸ける学生たちの気持ちを身近に感じています。

 この原稿を書く前も、来季の主軸となるメンバーたちに「根性論」を叩き込むミーティングをしてきたばかりですが、いわゆる「大人の事情」というものが、現役の学生さんを苦しめるような事態だけは避けてもらいたいですね。

 テレビで放映され注目されなければ、人気や競技人口も下がり続けてしまいます。

 しかしそのために現在頑張っている人たちが身を削らなければならないというのは、いかがなものでしょうか。

 誰もが納得して誰もが頑張れて皆に平等な条件になる、夢のような素晴らしい改革を実現してほしいと心から願います。なかなか難しいでしょうけれど。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優 勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は梅田と西麻布でバーガーショップを運営する有限会社 タモンズ代表取締役。。

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