できるようになるまで諦めるな! 上達には「ど根性」が必要なのです

2022年09月28日
共同通信共同通信
中村 多聞 なかむら・たもん
守備選手が下半身にタックルしてきたときの対処法を体得するための練習=中村多聞さん提供
守備選手が下半身にタックルしてきたときの対処法を体得するための練習=中村多聞さん提供

 

 新しいスポーツ(競技種目は内緒)を習い始めて、3度目のレッスンを受けてきました。

 1度目と2度目に習ったことがより実戦向けになり難易度も運動量も上がり、右往左往して先生の指導を必死に聞きながらも、手足の筋力が段々と落ちてきました。呼吸もハアハアとなっているので集中力を保つことが段々と難しくなってきました。

 

 ぶっ通しで同じ動きの練習を続け、疲れが限界になり動きに少し慣れを感じてきた時に先生の指示通りの動きができたのです。先生はとっさに「それそれ、その動きです!」と叫びました。

 

 これまでも、1ミリか2ミリ上達すると「上手、上手。その調子です」なんて、ご商売ですからヘボでも機嫌を損ねないよう現代風の「褒めて伸ばして」で指導してくださいましたが、さっきの「それそれ、その動きです!」の言い方はちょっと本気が入っていたように感じました。

 僕もランニングバック(RB)を指導している時に選手が少し上達したら「それそれ、その動きです!」と言わないといけませんね。今度試してみます。

 

 疲れが出て体が自然にいい具合に脱力し、無駄な力みが取れた状態で正しい感覚を感じ取れました。

 90分以上ギラギラした太陽の下、休憩も挟まず水も飲まずのかなり旧式なシゴキ教室ですが、初心者から初級者への道が見えた瞬間でした。

 

 当然のことながら指導されながら理屈を頭で考えて取り組んでいるレベルなので、よそ見をしたり会話をしたりは不可能です。

 いわゆる「体が覚えている」という状態まで達していませんし、繰り返し同じ動きはできません。まだ失敗しながらもうまくいく回数が増えているだけです。

 

 結局RBの指導や上達につながるのですが、単調な動きでつまらない基礎中の基礎的な練習を繰り返しやり込んで、ようやく見えてくるものがある、というタモン式RB養成所で口酸っぱく唱えているアレですね。

 元京大監督の水野彌一さんも同じようなこと(水野さんの場合は確か1万回)をおっしゃっていたように思います。

 しかし、そんなしんどくてつまらない練習を肉体の限界を通り越すまで継続して頑張る若者が、この令和の時代に多く存在するわけがありません。

 

 説得する。諭してその気にさせる。恐怖で強制する。泣き落としてお願いする。まあどれもその場限りで継続にはつながらないように思います。

 ダイエットに代表される肉体改造と同様、本人が本当に必要だと思う以外に自分が変われる方法はないですもんね。

 

 写真のようにボールを持った自分に対し、守備選手が下半身にタックルしてきたシーンを想定した練習をしたとしましょう。台となる「守備役」も身を守る防具類はもちろんクッションのような物を持っていいても、痛いしけがをする危険があります。

 力の入れ方や角度などのクオリティーも大切です。練習する意図を理解して実行しなければ、せっかくの練習もしんどくて痛いだけになってしまいます。

 そうやって協力してくれる他のRBと交代しながら、この状況を打破する方法を考えて習得する練習です。

 

しかし「知恵の輪」ではないので、考えるだけでスコッと抜けたりはしません。

 試合のシーンですと、お互いが勢いよく接近してから激突するのですから、ボールを持ったRBの体は強制的に停止させられ、オフバランスになった瞬間に別の守備選手が迫ってきて地面へ倒されてしまいます。

 

 最初は足をすくわれて宙に浮き、上半身は前のめりになって推進力を奪われます。下半身が浮いてしまわないようにするにはどうすればいいのでしょうか。

 衝突の衝撃でボールを落としてしまうこともあるでしょう。何度も何度も失敗して倒されて痛い思いをして、悩みに悩んでからコーチがアドバイスすると「足を前に出さないといけないこと」が理解できます。

 

 次に足を前に出しながら敵を思いきり蹴る動きをプラスすればいいんだと気付きますが、これもまた実際にやってみると非常に難しいのです。

 太ももの筋肉を強く打ち付けてしばらくまともに歩けなくなる通称「モモカン」になってしまう恐怖も頭をよぎります。

 

 「膝関節が逆方向にいってしまうんじゃないか?」「足の骨が折れちゃうんじゃないか?」といろんな怖さがあるかもしれません。

 それは遊園地の絶叫マシンと同じで、怖いなら乗らなきゃいいのです。フットボール、よりによってRBなんてやらなきゃいいのです。

 激突から逃げたいならスポーツは他にもたくさんありますし、ましてや年数はかかろうとも勝ち進めば日本ナンバーワンになれてしまうリーグでやっちゃいけません。

 

 興奮して話がそれましたので元に戻します。この恐怖を乗り越えるためには、仰々しいヘルメットやショルダーパッドのない部分で激しく敵と激突してもけがなどしないと、自分の頭と心に経験を積んで刻み込むしかないのです。

 そうすれば、この守備の壁をぶち破って強行突破する「技術」を身につける権利と資格が神様から与えられます。

 

 激突してからバランスを取り、そこからまたアクセル全開にして疾走していくための技術練習は大変ですけどたまにはやってみてください。うまくなると、もちろん試合でも使うことができます。

 

 こんな感じのシーンは密集地帯で発生します。観客はプレーをよく見ているもので、守備に囲まれたあなたを「あー、こりゃ止められたな」とすぐに分かります。

 相手をなぎ倒して真っ直ぐエンドゾーンへ駆けていけば「オー!」という興奮した歓声がスタジアムに響き渡ります。誰もが止まったなと思う中央のプレーで止められずに走り抜ける。これって、とてもワクワクしませんか?

 

 僕の挑戦しているスポーツはレジャーですし、せいぜい自然と自分の心が敵ですが、フットボールは複数人が綿密な計画を立て全力で肉体をぶつけて我々RBの行く手を阻もうとしてくる特殊なスポーツですので、襲われ続けるボールキャリアは大変ですね。

 

 今回言いたかったことは「怖いならやめてしまえ」ではありません。

 才能に満ちあふれた天才中の天才ではない人が今以上になりたいなら、結局のところ失敗を繰り返して何度も何度も訓練するのが王道なのだなと、自分の体験を交えて思ったということです。

 

 「できるようになるまで諦めなければ、できるようになる」の法則をクリアするには、とてつもない「ど根性」が必要ってことですね。ファンに愛され、敵から嫌われるRBを目指しましょう!