【編集後記】Vol.409=「京大ギャングスターズ」

2022年09月22日
共同通信共同通信
宍戸 博昭 ししど・ひろあき
立命大戦で140ヤードを走った京大のQB泉岳斗選手(17)=撮影:アメフト写真館・山口雅弘
立命大戦で140ヤードを走った京大のQB泉岳斗選手(17)=撮影:アメフト写真館・山口雅弘

 

 京大の元監督の水野彌一さんが、日大と対戦した1990年の甲子園ボウルを振り返り、こんな話をしてくれたことがある。

 

 「あの時の日大は、グラウンドに出てきた選手が思い詰めたような、悲壮感漂う顔をしていた。それを見て『これはいかん』とこちらも引き締め直したが遅かった。あの時、既に勝負はついていたのだと思う」

 試合は日大が34―7で勝ち、甲子園ボウル3連覇を果たした。

 

 当時の京大は今とは違い、アメリカンフットボール経験者がほとんどいないなかで、徹底した反復練習と高い精神性を重んじた水野さんの指導で、関西のライバル関学大に対抗していた。

 甲子園ボウルで6度の優勝は、まさにそうした「ギャングスターズ」ならではの〝文化〟を大事にしてきた結果なのである。

 

 京大の一方的な低迷で、かつては関西学生リーグの「ドル箱カード」だった「関京戦」が、シーズン序盤に組まれることが当たり前のようになってしまった。

 今年の両校も第2節で顔を合わせた。先制したのは京大だったが、徐々に地力の差が出て関学大が押し切った。

 

 京大の3年生エースQB泉岳斗選手は、開幕戦の立命大との試合で140ヤードを走る活躍を見せ優勝候補を慌てさせたが、最後は関学大戦と同様に逆転負けした。

 

 泉選手と初めて話をしたのは4年前。彼が都立西高2年の時だった。

 東京・駒沢第二球技場での試合後「とんかつが大好きで、いつもご飯をおかわりしている」と可愛いことを言っていた逸材は、現役で京大に合格しギャングスターズに入部した。

 「その才能とポテンシャルは、京大史上最高」と水野さんが絶賛したQBは期待通りに育っているが、何か物足りなさも感じる。

 

 地を這うような激しいラッシュで相手のQBをサックするDE。レシーバーに突き刺さるような強烈なタックルを浴びせるDB。京大といえば、荒々しいプレースタイルで対戦相手に立ち向かうチームだった。

 そのひたむきで悲壮感が漂う姿は、ファンにとってはたまらない魅力だった。

 

 時代が違うと言ってしまえばそれまでだが、京大にはどうしても勝敗とはまた別の部分で期待してしまう。

 無骨だけれど強いギャングスターズの復活は、ライバル校の願いでもある。(編集長・宍戸博昭)