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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

旅立ちと再会 可愛い教え子の心遣いに感謝

2022.8.4 14:51 中村 多聞 なかむら・たもん
現在タモンさんが指導する電通のRB陣と胎内ディアーズのRB宮幸崇選手(中央)=中村多聞さん提供
現在タモンさんが指導する電通のRB陣と胎内ディアーズのRB宮幸崇選手(中央)=中村多聞さん提供

 

 またまた新型コロナウイルスの感染が拡大して「第7波」ですか? 飲食店にとってはホント迷惑な話です。

 風邪やインフルエンザでも重症化する人はいます。しない人はしない。うつるひとはうつるしうつらない人はうつらない。なのにメディアは戦争などの情報より大きく長い時間を割いて報道しているように思えます。

 

 高いモラルを維持しなければならない大きな会社では、複数での会食を自粛するという自律的な行動を促す流れが復活し「飲食店で楽しい時間を過ごすのは悪」とされてしまいます。

 以前は都や国から補助金が支給されたりしてお客様が全然来なくても何とか生き延びることができましたが、今回はそういうのもないらしく「自力でどうにかせい」となっちゃいました。

 それならせめて毎日テレビで大騒ぎするのだけでもやめてくれれば助かるのですがねー。まあお互い仕事ですし仕方ないですかね。

 

 お客様不足なら従業員も不足している、六本木にある僕のお店「ゴリゴリバーガー」ですが、時には僕も勤務して厨房に入ったりしております。

 僕が数年間コーチをしていた早稲田大学アメリカンフットボール部所属の現役アルバイトくんに「タモンさんは今度いつ勤務に入っているのですか?」と事前にシフトの問い合わせをしてきて、僕の勤務日に合わせて二人のランニングバック(RB)の選手がサプライズで会いに来てくれました。就職が決まったという報告です。

 

 以前にもこのコラムで書いていますが、こうやって指導していた選手が家やお店を訪れてくれることは、その選手がプレーヤーとして成功することと同じくらい、コーチにとっては嬉しいことなのです。

 選手とコーチの関係だった頃、僕は厳しいことしか言いませんし、選手に好かれるのが目的の「プレーヤーズコーチ」と真逆の存在ですので「嫌われてナンボ」だと思っています。

 ですから慕ってくれる人はとても少ないです。そんな鬼コーチのやっている店にお金を使ってまで会いに来てくれるなんて「何か理由があるのか?」と勘ぐってしまいます。

 

 一人は九州から大学進学のために上京してきたコデラ君。パワーやスピードにはそれほど恵まれていませんでしたが、その分ひたむきに練習に打ち込み、努力を続けてきた選手です。

 上級生になる頃には誰にも負けない持久力とリーダーシップを身につけていった頼もしい男は、郷里に帰って銀行員になる予定でしたが、最近になって大手の会社から内定が出て、そちらに就職することになったそうです。

 

 そしてもう一人は入部時にチーム全体から注目を浴びるほどに体力のあったヨシザワ君です。

 練習しているシーンを見て「私に預けてください。素晴らしいRBに育てます」なんてチームにお願いして、他のポジションから奪い取ったほどの逸材です。

 予想通り関東大学リーグでは一目置かれるような選手になりました。来年からXリーグでプレーする予定だそうです。ライスボウルを目指して頑張ってもらいたいです。

 

 僕がコーチをしている電通キャタピラーズが、最近名称変更した「胎内ディアーズ」と練習試合をしました。

 「鹿島ディアーズ」時代は日本一の経験もある名門チームです。ここでは、僕がノジマ相模原ライズのコーチだった時に指導していたベテランRBの宮幸崇選手がエースとして活躍しています。

東京・六本木にあるタモンさんのお店「ゴリゴリバーガー」には、教え子たちが集まってくる=中村多聞さん提供
東京・六本木にあるタモンさんのお店「ゴリゴリバーガー」には、教え子たちが集まってくる=中村多聞さん提供

 

 試合前には挨拶だけして「試合後に電通のRBに兄弟子として何か言ってあげてね」とお願いしておきました。

 宮幸選手は中央大学時代に2年連続で1000ヤードラッシャーになっているスーパーRBです。IBMでコーチしていた僕をシーズン途中の夏に無理やり引き抜いて「アンタの知っているRBのことを全部教えろ!」というヤル気に満ちあふれた選手です。

 

 体力も気力もご家族からのサポートも抜群。運動神経も反射神経も申し分なし。ボールセンスや激突も全てが一流。毎回の練習で「指導するネタを探すこっちの身になってくれよ」と言いたくなるほど教えることなど何も残っていないんです。逆の意味で困らせてくれた選手です。

 

 僕がライズをやめる時、宮幸選手がこう言ってくれました。

 「僕にとって多聞さんと過ごした4年間は、本当に密度の濃い時間でした。多聞さんが来なければフットボールをやめていたと思いますし、もう一度うまくなりたいと心から思わせてくれたのも多聞さんでした」

 

 日本人フットボール関係者が経験したことのない世界や景色を、僕の乱暴な言い方で伝えているだけなのですが、こうやって思ってもらえるのは幸せなことです。

 一緒にいる時は「なんで言うてることが分からんねん!」「何べん言うたら覚えるんじゃ!」なんてモヤモヤしたりする時間が多いのですが、何か少しでもその人の中に残すことができたらこうやってお互いに心が通じて感謝し合うんだなー。

 マトモな人なら昔から知っているし経験しているのでしょうが、僕はようやく最近になってそれが分かってきました。

 

 それにしても、お店ヒマやわー。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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