【編集後記】Vol.401=「下高井戸のたい焼き」

2022年06月16日
共同通信共同通信
宍戸 博昭 ししど・ひろあき
「新生フェニックス」を率いる(左から)中村敏英監督、小林孝至助監督、吉江祐治総監督=東京・桜上水の日大グラウンド
「新生フェニックス」を率いる(左から)中村敏英監督、小林孝至助監督、吉江祐治総監督=東京・桜上水の日大グラウンド

 

 三軒茶屋から東急世田谷線に乗って終点の下高井戸へ。駅から日大文理学部へ向かう途中の商店街は、ずいぶんと様変わりした。

 

 昔から残っているのは、たい焼きが名物の「たつみや」と、かつて店主がアメリカンフットボールの防具の修理もしていた「靴のチトセ」ぐらいだ。

 昼食後、奥の座敷で仮眠をさせてくれた定食屋は代替わりを繰り返し、今は居酒屋になっている。

 

 3年ぶりに「フェニックス」のイヤーブックの巻頭記事を担当することになり、日大グラウンドを訪れた。通称「日大下高井戸グラウンド」の所在地は、京王線の隣駅と同じ桜上水である。

 

 クラブハウスでは、指導体制の発足から3カ月が経過した吉江祐治総監督、中村敏英監督、小林孝至助監督が待機していた。

 相手が誰でも、約束の時刻の30分前には現地に到着しているという「フェニックスタイム」をしっかり守っていた。

 

 故篠竹幹夫元監督の教え子である3人の指導者に、それぞれの母校への思いとチームをどうしていきたいかを語ってもらうのが今回のメインテーマだ。

 社会人や他大学でのコーチ経験を買われ抜擢された中村監督が目指すのは「復活」ではなく「新生フェニックス」の構築だ。もちろん、根底にあるチーム哲学の継承の大切さも認識している。

 「過去のことは今の学生には関係ない。真っ直ぐ日本一を目指してもらいたい」と言い、それを実現できる体制が整ったと感じている。

 

 長年日大鶴ケ丘高の監督を務めている吉江総監督は、自らの役割をこう語る。

 「僕の立場はフェニックスの総監督ではなく、日本大学ファミリーのまとめ役。付属高の生徒をはじめ『アメフトをするなら日大だよね』と高校生に思ってもらえる環境を作りたい」

 

 教員として勤務する佼成学園高を関東の強豪チームに育てた小林助監督は、指導者としてのロールモデルは篠竹さんと断言する。

 「1年の時から試合に出してもらい、合宿所でいろんな話を聞いた監督(篠竹さん)からは、教え子への愛情と規律の大切さを学んだ。学生、コーチに信頼される存在になりたい」という。

東京・桜上水にある日大グラウンド
東京・桜上水にある日大グラウンド

 

 インタビューを終えた帰り道。「たつみや」でたい焼きを一つ買って食べてみた。

 尻尾まで入った懐かしいあんこの味をかみしめながら、世の中には変わっていいものと変えてはいけないものがあるのだと、独りごちた。(編集長・宍戸博昭)