【編集後記】Vol.400=「節目を迎えて」

2022年06月09日
共同通信共同通信
宍戸 博昭 ししど・ひろあき
スタンド上部にある記者席から臨むアミノバイタルフィールド
スタンド上部にある記者席から臨むアミノバイタルフィールド

 

 小欄「週刊TURNOVER」の編集長という立場で書いてきた「編集後記」が、節目の400回を迎えた。

 ロンドン五輪が閉幕した2012年の8月に立ち上げたアメリカンフットボール専門サイトは、その特殊性もあってコアなファンがつき支えられてきた。ありがたいことである。

 

 試合会場に行って話を聞き、記事を書く。それ自体は記者として長くやってきた作業なので苦にならない。むしろ楽しい。

 アメフト界で起きた不祥事から目をそらすことなく、真相に迫るために聞きにくいことを当事者に「質問」する姿勢を貫いてきたという自負もある。

 

 今の時代「勝利至上主義」は肩身が狭い。それを奨励したり称賛すると、時にこっぴどく叩かれる。

 指導者が教え子に過度なプレッシャーをかけ愛情のない鞭を入れる背景に、己の名誉欲があったりすればそれは論外だ。

 コミュニケーションを密にしてお互いの合意があってこそ、初めて同じ目標に向かって進むことができる。

 

 スポーツは本来「真剣勝負」が原則だ。勝ち負けにこだわらないスポーツはやっていて面白くない。勝つために努力するからこそ、楽しめるのだ。

 「勝利至上主義」にはどこかバランスを欠く響きがある。しかし、勝利を目指さないスポーツの試合はそれを見るファンの心をつかめない。

 

 この10年、アメフト界の指導者や選手、関係者を数多く取材してきた。

 その過程であらためて感じたのは、シーズンのクライマックスで栄冠を手にするのは、例外なく全員が勝つためにとことん自らを厳しく律してきたストイックなチームであるということだ。

大学日本一を決める「甲子園ボウル」を開催する阪神甲子園球場
大学日本一を決める「甲子園ボウル」を開催する阪神甲子園球場

 

 「仲良しクラブになるな」は、故篠竹幹夫・元日大監督の口癖だった。

 仲間のミスを安易に許すのではなく、原因を徹底的に追究する。そこには、お互いに傷をなめ合っていては成長しないという考えが根底にある。

 責任者のさじ加減が難しいが、そこをうまくコントロールする醍醐味を知ったリーダーには、自分の言葉とある種のおおらかさが備わっているという共通点がある。

 

 競技人口の減少など、プロ組織のない日本のアメフト界の未来は決して明るくない。そんな状況の中で、専門サイトの編集長として何ができるのか。

 まだまだ掘り起こしていないテーマがあるはずだと信じて、現場に足を運びたい。

 

 読者の皆さん、そして長年個性的なコラムや写真を小欄に提供してくれているライターとカメラマン諸氏には、この場を借りて感謝申し上げます。(編集長・宍戸博昭)