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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

レーベンズ一筋16年 NFLの名パンター、サム・クックが引退

2022.5.26 14:41 生沢 浩 いけざわ・ひろし
レーベンズ一筋に16年プレーした名パンター、サム・クック(AP=共同)
レーベンズ一筋に16年プレーした名パンター、サム・クック(AP=共同)

 

 NFLでレーベンズ一筋に16年プレーした名パンター、サム・クック(39)が引退を発表した。今後はチームのスペシャルチームコンサルタントに就任する。

 

 ネブラスカ大出身のクックは、2006年のドラフトで6巡指名を受けてレーベンズに入団。レギュラーシーズン256試合(フランチャイズ記録)、2012年シーズンのスーパーボウル優勝を含むプレーオフ20試合に出場した。

 レーベンズのように常に地区優勝やプレーオフ出場を期待されるチームでクックが長期にわたって活躍できたのは、ひとえにそのパントコントロールの巧みさにある。

 パントの飛距離はキャリア平均で45・3ヤード、シーズン平均が43ヤードを下回ったことはない。

 

 そしてクックが最も得意としたのがインサイド20、つまり敵陣の20ヤード以内にパントを蹴り込んで相手のオフェンスに厳しいフィールドポジションを強いることだ。

 最も多かったのは2017年の40回で、生涯平均も27。ちなみに27回のインサイド20は昨年のパント部門記録に当てはめると8位の成績だ。

 

 レーベンズといえば強力なディフェンスがチームの看板だ。相手のオフェンスが20ヤード以内で始まればディフェンスは守りやすく、高い確率でパントに追い込むことができる。

 ほとんどゲインをさせずにパントに追い込むことに成功すれば、今度はレーベンズのオフェンスがいいフィールドポジションから攻撃権を得られ、それだけ得点の可能性は高くなる。

 クックのパント技術はまさにレーベンズのプレースタイルに合致していたと言える。

 

 パンターというポジションはなかなか評価を得にくく、クックですらプロボウル選出は1度だけだ(2015年)。また、プロフットボール殿堂入りしたパンターも過去に一人しかいない(元レイダーズのレイ・ガイ)。

 

 パントのスタッツがあまり重視されないのは事実だ。飛距離は脚力を測るバロメーターにはなるが、試合のシチュエーションによっては短距離でサイドラインに蹴りだす方が戦術的に好まれもする。

 ネットアベレージ(パントの飛距離からリターンされた距離を引いた数字の平均)はむしろパントカバーチームを評価する数字だ。

 

 しかし、いいパンターというのはチームが有利なフィールドポジションを獲得するために試合の流れの中で大きな貢献をする。これは数字には表れないパンターの重要性の一つだ。

 そこが評価対象になるのであれば、クックは殿堂入りに値する貢献が十分にあったと言っていい。

 そして、それが実現することになれば、NFLでパンターに対する評価基準が変わったことを意味する。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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