スティーラーズファンに愛され18年 QBロスリスバーガーが引退発表

2022年01月28日
共同通信共同通信
生沢 浩 いけざわ・ひろし
チーフスとのプレーオフ1回戦で敗れ、NFLでのキャリアを終えたQBベン・ロスリスバーガーの功績をたたえるスティーラーズファン(AP=共同)
チーフスとのプレーオフ1回戦で敗れ、NFLでのキャリアを終えたQBベン・ロスリスバーガーの功績をたたえるスティーラーズファン(AP=共同)

 

 NFLスティーラーズのQBベン・ロスリスバーガー(39)が、現地時間の1月27日(日本時間28日)、ビデオメッセージで自らの引退を正式に発表した。

 2分16秒の映像のなかでロスリスバーガーは、アシュリー夫人と3人の子どもと一緒にソファに座り、用意されたメッセージを読み上げた。

 

 「ロッカールームを整理し、クリーツ(スパイク)を脱ぐ時が来た」と述べ、家族やオーナーのルーニー一家、これまでかかわったコーチやチームメート、そして彼が「すべてのスポーツファンの中で最高」と呼ぶスティーラーズファンに感謝の意を表した。

 ビデオにはこれまでのハイライトシーンも多く流れ、最後はロスリスバーガーがハインツフィールド内のロッカーから自分のネームプレートを外すシーンでフェードアウトする。

 

 マイアミ大オハイオ出身のロスリスバーガーは、2004年のドラフトでスティーラーズから1巡(全体の11番目)指名を受けた。

 同期のQBにはイーライ・マニング(元ジャイアンツ)やフィリップ・リバース(元チャージャーズ、コルツ)ら大物がいる。

 

 新人の年の3試合目からスターター起用され、レギュラーシーズンを13勝0敗で終えてルーキー・オブ・ザ・イヤーにも選出された。

 この年のスティーラーズはAFC決勝まで駒を進めたが、ペイトリオッツに敗退。翌年にチームとしては26年ぶりとなるスーパーボウル制覇を果たした。

 

 ロスリスバーガーはその後も2008年シーズン(優勝)と2010年(パッカーズに敗退)にもチームをスーパーボウルに導いた。

 数々のチーム記録を打ち立てただけではなく、テリー・ブラッドショー以来の「フランチャイズQB」として記憶にも残る選手だった。

2006年1月、ブロンコスとのAFC決勝でTDランを決めチームメートのWRハインズ・ウォード(左)に祝福されるスティーラーズのQBベン・ロスリスバーガー(AP=共同)
2006年1月、ブロンコスとのAFC決勝でTDランを決めチームメートのWRハインズ・ウォード(左)に祝福されるスティーラーズのQBベン・ロスリスバーガー(AP=共同)

 

 間違いなくスティーラーズの一時代を築いたQBである。

 それまではラン主体だったオフェンスはロスリスバーガーの強肩を生かすためのパッシングオフェンスに変貌し、メンバーもRBよりWRやTEの人材を重用する「ロスリスバーガー仕様」となった。

 それはNFLのトレンドにも合致し、ロスリスバーガーが率いるスティーラーズオフェンスは、QBトム・ブレイディのペイトリオッツ、QBペイトン・マニングのコルツと同様に、AFCトップクラスのパスオフェンスを誇り、プレーオフの常連に名を連ねるようになった。

 

 そんなロスリスバーガーが無条件でファンに愛されたかというと、必ずしもそうではない。

 キャリア序盤で成功を収めたせいか、彼の傲慢な態度は時に批判された。筆者自身もスティーラーズのロッカールーム内で横柄な態度をとるロスリスバーガーを幾度か目撃したことがある。

 

 2007年にはバイクで重大な事故を起こし、2010年には女子大学生に対する不適切な行為で4試合の出場停止を受けたりもした。

 フィールド上での活躍が称賛される一方で、彼のオフフィールドでの言動には眉をひそめる人も多かったのである。

 

 そんなロスリスバーガーに変化が訪れたのは、やはり2011年のアシュリー夫人との結婚ではなかっただろうか。

 すぐに子宝にも恵まれたロスリスバーガーは、メディアとのインタビューにも柔らかい表情で応対することが多くなり、彼の発言に「ファミリー」という言葉が頻繁に出てくるようになった。

 

 チームリーダーとしての自覚も持つようになる一方で、「自分が自分が」という態度は見られなくなっていった。

 WRアントニオ・ブラウンのように彼と衝突する選手が皆無ではなかったが、この件についてはむしろ非難されたのはブラウンの方で、ロスリスバーガーを擁護する発言がチーム内外から多かったのは印象的だった。

 人格者とまでは言えないが、周囲に受け入れられる選手になったことは間違いないだろう。

2005年のペイトリオッツ戦で自らボールを持って前進するスティーラーズのQBベン・ロスリスバーガー(AP=共同)
2005年のペイトリオッツ戦で自らボールを持って前進するスティーラーズのQBベン・ロスリスバーガー(AP=共同)

 

 ロスリスバーガーが入団した時、筆者は「これでスティーラーズがあと四つはスーパーボウルリングがとれる」と思ったものだ。

 残念ながらその皮算用には二つ届かなかったが、2度のスーパーボウル優勝の瞬間を生で見ることができたのは素直に嬉しいと思う。

 

 そして、筆者にとって初めてのスーパーボウルのテレビ解説が、ロスリスバーガーからWRサントニオ・ホームズへの劇的な逆転TDパスで優勝を決めた第43回大会(2008年シーズン)だったことも貴重な体験だ。

 ピッツバーグは、学生時代に留学していた思い出の地だ。ロスリスバーガーには、一スティーラーズファンとして「お疲れさま。18年間ありがとう」と言いたい。