【編集後記】Vol.386=「不死鳥の復活願い新天地へ」

学生やOBとの軋轢で、自分の思いや指導方針がなかなか伝わらない。外部からやって来た監督にとって、未知のチームをコントロールするには相当な時間と忍耐が必要になる。
コーチが立派な職業として成り立っているアメリカなどと違い、日本の場合〝外様〟は悲哀を味わうケースがある。
組織に根付いた「伝統」や「しきたり」が、改革を進める上での足かせになるからだ。
日大を3年で再生した前監督の橋詰功さん(58、立命大OB)が、同志社大のヘッドコーチ(HC)に就任する。
不祥事に揺れた名門チームを立て直す過程で、エースQBとの確執や大学側の冷遇を経験した橋詰さんが、再び母校ではない関西の古豪の指揮を執ることになった。
「僕はカリスマでもなければ、監督としての経験もない。できることを一つずつ積み上げていくだけ」
「フェニックス」の監督に就任したとき、橋詰さんはこう話していた。
この人の一番の強みは「なるようにしかならない」という自然体にあるのだと、今あらためて思う。きっと新天地でも、自分のやり方で学生に寄り添った指導をしていくのだろう。
昨年の8月いっぱいで契約期間を満了し、教え子に思いを残して退任した橋詰さんは、日大の試合がある日は滋賀県の自宅から上京し、客席の片隅で学生を見守った。
11月下旬。日大は変則のリーグ戦を3連敗で終え、東大との関東大学リーグ1部TOP8の7、8位決定戦に臨んだ。橋詰さんはこの日も会場に来ていた。
「(RBの走り方を見て)相手に当たるのかそれともかわすのか、どっちつかず。今のプレーは中途半端やな」「○○はいい。でも、あと一歩前に出られたはず」
番号を見なくても選手の特徴を知っている人ならではの寸評を聞かせてくれた。
優秀なOLとDLを擁する今季の日大は、7位で終わるようなチームではなかった。それは関東のライバル校の指導者も認めている。
今年の4年生はかわいそうだった。「悪質な反則タックル問題」が起きた2018年に入学し、最終学年では大学当局の無配慮に振り回された。

「初戦で強い日大に勝って、チームが成長した。日大は、いつの時代も強くあってほしい」。今季の関東を制した法大の有澤玄HCの言葉である。
日大は現在、橋詰さんからチームを引き継いだOBの平本恵也HC(34)の下で新体制づくりに着手している。
「平本君には頑張ってほしい。フェニックスがフェニックスらしく復活することを願っています」。橋詰さんから届いたメッセージである。(編集長・宍戸博昭)