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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.385=「WRブレナン翼」

2022.1.6 12:07 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
ライスボウルで富士通に敗れ、肩を落とすパナソニックのWRブレナン翼選手=1月3日、東京ドーム
ライスボウルで富士通に敗れ、肩を落とすパナソニックのWRブレナン翼選手=1月3日、東京ドーム

 

 残り試合時間は30秒。6点差を追うパナソニックは、富士通陣25ヤードから第4ダウンで1ヤードを残しギャンブルに出た。

 QBアンソニー・ローレンス選手から、WRブレナン翼選手に投げられたパスは高めに浮いた。

 飛びつくブレナン選手の手に収まりかけたボールは、富士通のベテランDB樋田祥一選手のハードヒットでこぼれ落ち、インコンプリートに終わった。

 

 残り25秒から、富士通はビクトリーフォーメーションで時間を消費しタイムアップ。パナソニックの6年ぶり5度目の日本一の夢はついえた。

 

 1月3日、東京ドームで開催された「ライスボウル」。今季から日本社会人Xリーグの王者決定戦に衣替えした日本選手権は、レベルの高い攻防を展開し大いに盛り上がった。

 この試合で最も注目していたのが、今シーズンからパナソニックに加入したWRブレナン選手である。

 

 早稲田大の4年だった2019年の甲子園ボウルでは、6回のパスレシーブで3TDを記録した。

 抜群のスピードとボディーバランスで、学生王者・関西学院大の守備網を切り裂くプレースタイルは圧巻だった。

 当時「一台だけ、馬力の違う車がレースに参加しているようだった」と書いた記憶がある。

 その彼が、日本一を決める大舞台でどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、とても楽しみだった。

 

 高校までをハワイで過ごしたブレナン選手のフィジカルの強さは、学生レベルでは突出していた。

 しかし、ほどよく脂が乗り中身がギュッと詰まったXリーグの主力選手に比べると、その体は線が細く見えた。

 

 その彼が、強豪・富士通を相手に大活躍した。第3クオーターにボールをキャッチすると、体と腕を精いっぱい伸ばしてファーストダウンを獲得した。

 この直後、パナソニックはTDを奪い18―14と逆転に成功する。

 

 ブレナン選手は勝負所で頼りになる、いわゆる「クラッチレシーバー」だ。今回のライスボウルでも、12回の捕球で116ヤードはチーム一の記録である。

 最後に取り損ねたパスもキャッチミスではない。樋田選手の読みの確かさと寄りの速さを褒めるべきである。

関学大と対戦した2019年の甲子園ボウルの第3クオーターにTDを決める早大時代のWRブレナン翼選手(右)=阪神甲子園球場
関学大と対戦した2019年の甲子園ボウルの第3クオーターにTDを決める早大時代のWRブレナン翼選手(右)=阪神甲子園球場

 

 サイドラインに戻ったブレナン選手は、囲いのあるベンチの一角で号泣していた。その光景は、28―38で敗れた2シーズン前の甲子園ボウルを思い出させた。

 

 表彰式。チームエリアの端でブレナン選手は憔悴しきっていた。目指した勝利を手にできなかった悔しさが、その後ろ姿から伝わってきた。

 ブレナン選手には胸を張ってほしい。その奮闘ぶりは、生まれ変わったライスボウルの「Most Impressive Player」(MIP=最も印象的な選手)として称賛し、記憶にとどめたい。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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