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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.380=「歪んだ組織論」

2021.12.2 11:11 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
学生が運営し毎月発行している「日本大学新聞」
学生が運営し毎月発行している「日本大学新聞」

 

 毎月、定期的に送られてくる郵便物の中に「日本大学新聞」がある。

 紙面には学内の人事や叙勲を受けた大学関係者らの名前などが掲載されているが、絶対に載らない記事がある。それは幹部職員の不祥事だ。

 

 2018年5月に関学大との定期戦(東京)で起きた「悪質な反則タックル問題」の際も、この新聞には1行も載らなかった。

 目につくのは、田中英寿理事長の功績を礼賛する記事ばかり。大学トップが主導する強権体質に内心忸怩たる思いを抱えながら、学生が運営する新聞社が抗えない現実がある。

 歪んだ組織論が幅をきかせる体制下では、自由な紙面作りができなかったに違いない。

 

 日大には、年度末に全国制覇や関東優勝などのタイトルを獲得したスポーツ競技部のチームや個人を表彰する制度がある。

 昨年、紆余曲折を経て関東大学リーグ1部TOP8を制し、3年ぶりの「甲子園ボウル」出場を果たしたアメリカンフットボール部も当然表彰される資格があった。

 ところが、表彰式に出席したチーム関係者によれば「フットボール部の優勝はなかったことになっていた」そうで、後日記念品だけが送られてきたという。

 反則タックル問題以降、大学側の「フェニックス」に対する冷たい姿勢は理解しがたいことばかりで、学生を大切にしないやり方には憤りを覚える。

 

 1年生だった17年に甲子園ボウル優勝を経験した昨年の4年生は全力を尽くしたが、ライバル「ファイターズ」に屈した。

 彼らが流した涙には、秋のリーグ戦への出場停止や降格というつらい時期を過ごした先輩への思いが込められていたはずだ。

 

 関西のファンは「不死鳥」の復活を心から祝福してくれた。OBとしてありがたかったし、嬉しかった。

 一方で、日大の勝利を望まない人たちがいたそうだ。それが日大の幹部職員と聞いたとき「何で?」という驚きとともに、怒りが込み上げてきた。

 

 甲子園球場には、反則タックル問題で辞任した元監督が観戦に来ていたという。かつての教え子の晴れ舞台を、どんな思いで見ていたのだろうか。

 

 12月1日、所得税法違反の疑いで逮捕され「容疑者」となった田中理事長が、理事長職を辞任する意向を大学側に伝え、同日の臨時理事会で了承された。(編集長・宍戸博昭) 

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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