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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.378=「名門チームの矜持」

2021.11.18 14:29 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
立教大に敗れた試合後、学生に話しかける日大の紅野謙介部長=11月13日、アミノバイタルフィールド
立教大に敗れた試合後、学生に話しかける日大の紅野謙介部長=11月13日、アミノバイタルフィールド

 

 果たしてその言葉は、学生の心に響いたのだろうか。そんな疑問とともに、抑えようのない怒りが込み上げてきた。

 

 11月13日、東京・アミノバイタルフィールドで行われた関東大学リーグ1部TOP8の第3節で、前年の覇者・日大が立教大に27―35で敗れた。

 急な体制転換が、さまざまな影響を及ぼした末の3連敗である。

 

 試合後のハドル。久しぶりにサイドラインで試合を見守った「フェニックス」の紅野謙介部長は、学生を前に昨年までとはチームの雰囲気が明らかに違うというようなことを言っていた。

 学生は憮然としていた。当然だ。

 大人の事情に翻弄された学生からすれば「チームがボロボロになった今頃やって来て、何を言っているんだ」となる。紅野部長を見る目がそう言っていた。

 

 日大文理学部長で、大学本体の理事でもある紅野部長は、任期満了で退任した橋詰功前監督(立命大OB)の契約延長の実現に奔走した人だ。

 しかしある関係者によれば、理事会トップの一声で「悪質な反則タックル問題」で揺れたチームを立て直した功労者の事実上の〝解任〟が決まったという。

 

 後日、紅野部長に立教大戦後の発言の真意を聞いてみた。紅野部長はこう答えた。

 「あの時の発言は、私にとっても苦いものを残しました。部員たちに注文を付けるのは、確かに酷だと思います。なぜ早く後任(監督)を決めて引き継ぎをスムーズにしなかったのか。負けていく過程で(目的意識が)散漫になる学生もいました」

 自らを含めた、大学側の対応のまずさが招いたチームの低迷に責任を感じていた。

 

 フェニックスOBの元日大理事が逮捕、起訴された背任事件は連日メディアが取り上げ、大学当局の不誠実な対応を厳しく指摘している。

 何の落ち度もない学生が、これ以上肩身の狭い思いをするような状況は、一刻も早く終わらせなくてはいけない。

 

 18年ぶりに日大を破った立教大の中村剛喜監督は、うれし泣きする若いコーチを見ながら「彼らが本当に良くやってくれました」と、こちらも目を潤ませた。そしてこう続けた。

 「私の世代のOBにとって、日大は特別な存在。フェニックスへのリスペクトは永遠です」

 同様の声は、他大学の関係者からも小欄に届いている。

18年ぶりの日大戦勝利を喜ぶ立教大の中村剛喜監督(前列中央)とコーチ、スタッフ=11月13日、アミノバイタルフィールド
18年ぶりの日大戦勝利を喜ぶ立教大の中村剛喜監督(前列中央)とコーチ、スタッフ=11月13日、アミノバイタルフィールド

 

 大学日本一を決める「甲子園ボウル」優勝21回。

 「不死鳥」が復活するためには、学生と指導陣が一体となって、規律と名門チームの矜持を取り戻すしか道はない。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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