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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

カージナルスが6連勝 好調の要因はQBマレーの成長

2021.10.20 14:20 生沢 浩 いけざわ・ひろし
ブラウンズ戦でパスを試みるカージナルスのQBマレー(AP=共同)
ブラウンズ戦でパスを試みるカージナルスのQBマレー(AP=共同)

 

 カージナルスが好調だ。開幕から6連勝で、NFLでただ1チーム無敗を守っている。

 過去5年間勝ち越しのシーズンがなく、プレーオフからも遠ざかっているカージナルスだが、気の早いファンはチーム史上初のスーパーボウル優勝に向けて期待を膨らませている。

 

 大躍進の最大の原因はやはりQBカイラー・マレーだ。6試合を消化してパス成功率は73・8%を記録し、14TDパスに対して被インターセプト4という成績だ。

 パサーレーティングは1試合を除いて104・1以上と高水準を維持している。

 

 今年のマレーの特徴は、得意のランプレーが減ってパスに重きを置いている点だ。

 第6週終了時点で、ボールキャリー数は37回で獲得距離は116ヤード。ペースとしては新人だった2019年(93回のキャリーで544ヤード)に近いが、昨年(133回、819ヤード)に比べると激減しており、1キャリー当たりの平均獲得距離は3・1ヤードで、過去2年のおよそ半分だ。

 

 試合を見ていても、当初から決まっているマレーのランプレーは減っている印象だ。

 マレーが脚力を使っていないわけではない。しかし、脚力はむしろロールアウトに活用され、ポケットから積極的に出ながらパスラッシュをかわし、レシーバーがフリーになる時間を稼いでパスを投げている。

 

 身長が178センチしかないマレーにとっては、ドロップバックしてポケットの中にとどまるより、ロールアウトによって視界を広くしてターゲットを探す方が有効なのかもしれない。

 レシーバーが空いていなければそのままスクランブルで走ればよく、マレーの長所を生かしたプレースタイルだとも言えるだろう。

 

 パスの成功率が高いのは今季のマレーが多くのレシーバーに投げ分けられていることと無関係ではない。

 今季のカージナルスはWRデアンドレ・ホプキンス、クリスチャン・カーク、RBチェイス・エドモンズの26回を筆頭に20回以上のパスキャッチをマークしている選手が6人いる。

 フィールドとディフェンダーの動きがよく見えている証拠で、これはマレーの大きな成長の証として評価するべきポイントだ。

今季好調のカージナルスWRホプキンス(AP=共同)
今季好調のカージナルスWRホプキンス(AP=共同)

 

 NFLではQBが開花するまでに3年を要するとよく言われる。実戦経験を積み、オフェンスシステムを完全に把握し、それを自在に操れるようになるまでにこれだけの時間が必要だということだ。

 だから、その間にHCや攻撃コーディネーターが交代することでシステムが変わってしまうと成長が滞ってしまうことがある。

 

 マレーはちょうど今年が3年目。HC兼オフェンスのプレーコーラーであるクリフ・キングズベリーもテキサス工科大から就任してちょうど3年目だ。ともにいいペースでNFLに順応しているのだろう。

 

 カージナルスの所属するNFC西地区ではラムズ(5勝1敗)も好調で、最大のライバルだ。カージナルスは既に直接対決(しかもアウェー)で勝利しているのは大きい。

 今後のスケジュールでは第8週のパッカーズ(5勝1敗)との試合が一つの山となりそうだ。そして、第14週のラムズとの2戦目が地区優勝を占う上で重要な試合となる。

 

 マレーは2年前のドラフト全体1位指名だが、実は全体1位指名でNFL入りしたQBが先発としてスーパーボウルで勝った例は実に少ない。

ブラウンズ戦でTDを挙げ笑顔を見せるカージナルスのWRカーク(AP=共同)
ブラウンズ戦でTDを挙げ笑顔を見せるカージナルスのWRカーク(AP=共同)

 過去20年ではペイトンとイーライのマニング兄弟(延べ4回)だけだ。マレーがその仲間入りを果たせるのか、大いに期待のかかるところだ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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