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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

注目の京大2年生QB泉のパス決まらず 盛り上がり欠いた伝統の「関京戦」

2021.10.19 16:49 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
高校時代から非凡な才能が注目された京大の2年生QB泉(17)=撮影:山口雅弘
高校時代から非凡な才能が注目された京大の2年生QB泉(17)=撮影:山口雅弘

 

 本格的な秋の訪れを告げる、六甲山系から吹き下ろす、いわゆる「六甲おろし」の冷たい風がフィールドを駆け抜ける。

 10月17日、神戸市王子スタジアムで行われた伝統の「関京戦」に、かつての熱気はなかった。

 

 試合は、レベルの高い関学大RB陣がロングゲインを重ねて京大守備陣を切り裂き、前半で31―0と大差がついた。

 関学大が控え選手を投入した後半も京大に得点のチャンスはなく、過去には4万人の観客が集まった「黄金カード」は盛り上がりを欠いたまま、ファイターズが45―0でギャングスターズを粉砕した。

 

 注目の京大の2年生QB泉岳斗は、パスを22回投げて8回成功、わずか83ヤードに終わった。

 都立西高時代から、強肩と抜群の走力が注目されていた逸材は、昨年現役で京大に合格。コロナ禍の影響で8校によるトーナメント方式で争われた昨季の関西学生リーグでは関学大との対戦はなく、出場は数プレーにとどまった。

 

 2年ぶりに実現した「関京戦」でオフェンスをリードした泉は「高校と大学ではプレースピードなど全てが違う。今日、関学と対戦してそれを実感した」と敗戦を振り返った。

 

 リーグ戦序盤で負けがこんでも、関学大との試合は別のチームのように立ち向かい、過去に何度もアップセットを演じてきたのがギャングスターズだった。

 泉のパッシング能力を生かし、徹底的に空中戦を仕掛ける戦略もあったと思うが、バランスアタックにこだわったことで、中途半端な試合運びになったという印象だ。

 

 試合後、テレビ中継の解説を務めた関学大の鳥内秀晃前監督は「こんなことしとったらあかんよね」と、QBがボールをRBに手渡しするジェスチャーをして、京大のオフェンスにはもっと思い切った策があったはずと言いたげだった。

機動力もある京大の2年生QB泉(17)=撮影:山口雅弘
機動力もある京大の2年生QB泉(17)=撮影:山口雅弘

 

 過去に何度も痛い目に遭っている関学大と京大では、伝統の一戦に臨む気構えに温度差があるように感じたが、それもまた時代の流れというものかもしれない。

 1970年代後半から90年代中盤まで、水野彌一氏が監督として率いたギャングスターズは関西学生リーグの主役だった。

 しかし、今の学生はその時代を知らない。学生フットボール史に残る激戦を繰り広げてきたライバル対決に対する特別な思いが、残念ながら見る側に伝わってこなかった。

 

 身長178センチ、体重は少し増えて87キロ。高校2年の時、東京・駒沢第二球技場で話をして以来、3年ぶりに会った泉はすっかり大人になっていた。

 「京大は(スポーツをする)環境面で劣っているのは事実。でも、本気で日本一を目指している学生はたくさんいる。去年のオフェンスの中心だった4回生のOLが抜けて、今年は人材がいるパスユニットを生かさないといけないのに、今日はそれが壊滅的だった」と分析した。

 

 2敗目を喫し、同じブロックの関学大と関大が既に2勝しているため、京大が今季の「甲子園ボウル」に出場する可能性はなくなった。

 「日本一という目標は僕の力不足でかなわないが、残りの試合で『泉がQBで良かった』と思ってもらえるようなプレーをしたい」と泉は言った。

 

 この日スタンドから試合を見守った水野氏から、泉は定期的にアドバイスをもらっているという。

 「水野さんからは『アメフトは頭を使うスポーツ。いろんなことを覚えようと思えば教えてもらうのは簡単。でも、自然に動けるようになることが大切。臨機応変にプレーを変えたり、タイミングをずらしたりできる選手が理想。お前にはそれが備わっている』と言われた」そうだ。

関学大との試合後インタビューに答える京大の2年生QB泉=10月17日、神戸市王子スタジアム
関学大との試合後インタビューに答える京大の2年生QB泉=10月17日、神戸市王子スタジアム

 

 「自分にはあと2年ある。チームのみんなと、関学を倒すためにはどうするかを考えていきたい」

 コーチとして京大の指導現場へ復帰する意欲を示している水野氏との相性はいいとみた。

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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