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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

師弟対決制したQBブレイディ バッカニアーズがペイトリオッツに勝つ

2021.10.6 12:37 生沢 浩 いけざわ・ひろし
オフェンスメンバーにプレーの指示を出すバッカニアーズのQBブレイディ(AP=共同)
オフェンスメンバーにプレーの指示を出すバッカニアーズのQBブレイディ(AP=共同)

 

 NFLのレギュラーシーズン第4週の注目カードだったバッカニアーズ対ペイトリオッツの試合は、最後まで勝敗の分からない好ゲームとなった。

 バッカニアーズのQBトム・ブレイディにとっては古巣との初対戦。そしてかつての師匠ビル・ベリチックHCとの頭脳戦は今季序盤戦の目玉の一つだった。

 

 戦前の予想ではスーパーボウル王者のバッカニアーズが圧倒的に有利だったが、ブレイディとバッカニアーズが意外に苦戦する接戦となった。

 盟友TEロブ・グロンカウスキーをけがで欠くブレイディは、ペイトリオッツのパスラッシュに悩まされ、パス成功率はようやく50%を上回る程度だった。

 なるほど、ベリチックがブレイディ対策を考案するとこういう作戦になるのかと納得させられる内容だった。

 

 ペイトリオッツの新人QBマック・ジョーンズ(アラバマ大)はパスで275ヤード、2TDパス、1被インターセプトの成績で、レイティングはTDパスがなかったブレイディ(70・8)を上回る101・6を記録した。

 試合に勝っていれば「金星」となっていたところだが、やはりブレイディとバッカニアーズは一枚上手だった。その差は終盤の攻防に顕著に表れた。

 

 第4Qは両チーム合計で16得点を奪い合う展開だった。残り試合時間が8分を切ってからはKライアン・サカップ(バッカニアーズ)の27ヤードFG、Kニック・フォークの27ヤードFG、サカップの48ヤードFGと交互に決まってその都度リードする側が変わった。

 

 残り59秒でのフォークの56ヤードFGアテンプトが成功していればペイトリオッツがさらに試合をひっくり返していたのだが、それはかなわず、最後はバッカニアーズがニーダウンで時間を使い切り、19―17で勝利を握った。

 

 この約8分間の攻防だけを見ても、ブレイディとバッカニアーズの試合運びの巧さが際立つ。

 TDが奪えない苦しい展開でも、ブレイディは着実にFG圏内にまでドライブしてサカップにバトンを渡した。

 

 これは対抗するペイトリオッツも同様だったのだが、最後のドライブで56ヤードという難しい距離を残してしまった。

 激しい雨の降る中で、この距離のFG成功率はNFLでも50%前後ではないだろうか。

 「たられば」をあえて言うなら、あと10ヤード距離が短ければ成功確率は80%、さらに10ヤード前進していたなら9割以上の確率でキックは成功していたはずだ。

 

 最終ドライブでジョーンズは10ヤードを超えるパスを一度も投げていない。いや、バッカニアーズの守備に投げさせてもらえなかったと言った方が正確か。

 ディープゾーンはSがしっかりと守り、パスラッシュによってプレッシャーを与え続けられる中でジョーンズの選択肢はショートパスしかなかった。

 その結果、ファーストダウン更新は2回しかなかった。バッカニアーズはジョーンズとペイトリオッツに長い距離を残すことで試合をコントロールしたのだ。

ペイトリオッツを率いる名将ベリチックHC(AP=共同)
ペイトリオッツを率いる名将ベリチックHC(AP=共同)

 

 バッカニアーズが残したものはもう一つある。時間だ。フォークのFGが成功してペイトリオッツが20―19とリードしていたとしても、50秒前後の時間がバッカニアーズには残る。

 ブレイディがオフェンスをFG圏内にまでボールを進めるには十分だ。私たちはこれまで、何度もそういったシーンを目撃してきた。

 つまり、フォークのFGが成功していようとバッカニアーズには別のシナリオがしっかりと用意されていたのだ。これが試合巧者ということなのだろう。

 

 試合は確かに手に汗握る接戦だった。ジョーンズとペイトリオッツがブレイディとバッカニアーズ相手にこうした好勝負を演じたことは評価に値する。

 しかし、やはり両者の間にはスコアに表れない差が歴然とあった。ブレイディとバッカニアーズは勝つべくして勝った。そんな試合だった。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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