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共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

かつての強豪ビルズに復活の兆し 選手起用に信念貫くHC 

2017.11.2 11:40 生沢 浩 いけざわ・ひろし
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好調ビルズを指揮するショーン・マクダーモットHC(AP=共同)
好調ビルズを指揮するショーン・マクダーモットHC(AP=共同)

 バファロー・ビルズといえば1990~93年シーズンに4年連続でスーパーボウルに出場し、すべて敗退した事実を思い浮かべるファンも多いだろう。

 4季連続の敗退はビルズファンには触れられたくない「暗黒の歴史」なのかもしれないが、当時の中心メンバーであるQBジム・ケリー、RBサーマン・トーマス、DEブルース・スミス、そしてマーブ・リービーHCらがいずれも殿堂入りを果たしている強豪チームだった。

 そのビルズに復活の兆しが見える。第8週終了現在でAFC東地区2位の5勝2敗という成績で、近年にない好スタートを切っているのだ。17年ぶりのプレーオフに期待がかかる。

 ビルズが最後にプレーオフに出場したのは1999年シーズンだ。つまり、今世紀に入ってから一度もポストシーズンを経験していないのだ。

 これはNFLのみならず、北米4大プロリーグでも最も長い低迷なのだそうだ。

 今季は前パンサーズ守備コーディネーターのショーン・マクダーモットを新HCに迎えてチーム再建のプロセスに入るかと思われた。

 しかし、昨年リーグ1位だったランオフェンスなどチーム力を整備する基礎は確立しており、ビルズは予想を超えるスピードで立ち直りつつある。

 HC職は初めてのマクダーモットは、経験やネームバリューに関係なく、好調な選手を試合で起用するという方針を打ち出し、それを迷いなく実行している。

 例えば就任直後のフリーエージェント(FA)対策では、年俸高騰が懸念されたCBステフォン・ギルモアとの再契約を拒否し、かつてのドラフト1巡指名でエース扱いだったWRサミー・ワトキンスをトレードで放出した。

 ワトキンスの放出は批判された。代わる人材も見つからないままにトップレシーバーを手放したのだから無理もない。

 シーズン序盤にはWRへのパスがほとんど機能せずに苦しんだことも事実だ。しかし、故障の多かったワトキンスをそのままチームに置いておけば、FAとなる来年には年俸が上がる。

 ワトキンスがいなければ若手にチャンスが巡る。ビッグネームにこだわらないというマクダーモットの姿勢が最もよく表れた例だった。

 最近では先発DTマーセル・ダレウスをトレードで放出した。その一方で、パンサーズからWRケルビン・ベンジャミンをトレードで獲得して戦力補強も行った。

 ベンジャミンはスピードのあるレシーバーで、QBタイロッド・テイラーとの呼吸が合うようになればワトキンスに変わるエース格の存在となり得る。

 無名でも好調であれば与えられるチャンスをものにしているのがWRディオンテ・トンプソンだ。

 10月半ばにベアーズから解雇されたばかりだが、ビルズに拾われた直後の試合では100ヤードレシーブの活躍を見せた。

 こうしたマクダーモットの起用法は、若手が中心のチーム内に競争を生む。チャンスを求めて全員が必死になるからだ。

 そこにRBレショーン・マッコイやSマイカ・ハイドといったベテラン選手の力がポジティブに融合して現在の好調がある。

 さて、いよいよ後半戦が始まる。すでにバイウィークを終えたビルズは、残り9週間で毎週試合がある。

 これから対戦する相手にはセインツ(5勝2敗)、チーフス(6勝2敗)があるほか、同地区ライバルで最大の壁であるペイトリオッツ(6勝2敗)との直接対決も2度残している。まさに正念場だ。

 1999年シーズンのプレーオフは、残り16秒でFG成功によって16―15と逆転に成功しながら、最後のキックオフでタイタンズに再逆転のリターンTDを許してしまった。

 キックを受け取ったタイタンズRBロレンツォ・ニールからボールをハンドオフされたTEフランク・ワイチェックが、フィールドの反対側に位置するWRケビン・ダイソンにラテラルパスを投げ、そのままダイソンがエンドゾーンまで駆け抜けた劇的なプレーだった。

 試合が行われたテネシー州ナッシュビル(タイタンズのホーム)が音楽にゆかりのある街であることから「ミュージックシティーミラクル」と呼ばれている。

 これもビルズファンは思い出したくない試合かもしれないが、これを本当に過去のものにするには、プレーオフで新たな栄光の歴史を刻むしかない。今年はそのチャンスである。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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