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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

テーマはアメリカ人のフットボールをどう伝えるか 

2017.11.9 10:53 中村 多聞 なかむら・たもん
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大雨の中で行われた早大―日大=10月29日・富士通スタジアム川崎
大雨の中で行われた早大―日大=10月29日・富士通スタジアム川崎

 僕がコーチをしているノジマ相模原ライズは10月29日、大雨の横浜スタジアムで全勝のパナソニック・インパルスと対戦しました。

 前半終了時点では14―21となかなかの好ゲームです。第3Qにノジマが3本目のタッチダウンを取り同点になるはずがPATのキックを外してしまい、試合の最後で同点にするため仕方なく2ポイントコンバージョンを狙い失敗、2点差で敗れたという結末でした。

 昨年度から変更された新しいリーグ戦方式は、拮抗した展開が増えてどのゲームも試合結果が先読みしづらくなってファンは楽しめるのですが、やる側は本当に大変になりました。

 今年度の「SUPER9」同士の対戦だと、平均点差が約14点と一方的な試合がほとんどありません。

 以前だと決勝に進出するような強豪チームだと開幕からの2、3戦はやる前から結果の見えている試合がありましたので、調整が可能でした。

 しかし、現在は本場NFL同様に開幕戦から優勝候補同士の激突があったりします。まだお互いに本領を発揮できないまま決着がついてしまうので、少しもったいなくはありますが、この辺りが将来の社会人リーグを面白くできるかどうかのポイントになっていくのでしょう。

 そして今週末の11月11日、僕の長女の21歳の誕生日に、8チームによるトーナメントが始まります。

 横浜では、当日券2000円で一日に3試合を観戦できます。大阪の長居では1ゲームです。ノジマはリーグ戦でシャットアウト負けを喫したオービックとの再戦です。

 昨年度のノジマはポストシーズンに残れなかったために、順位決定戦があり11月末までシーズンが続きました。

 でも今年は勝ち残っているのに、負ければ即終了となり、昨年より3週間も早くシーズンが終わってしまいます。それではちょっと寂しいですし、選手諸君には頑張ってもらい次のステップに連れて行ってほしいものです。

 シーズンがここまで深まってくると、僕のようなテクニカルコーチにできることはあまりありませんが、技術的にも精神的にも未成熟で不安定な若手選手をサポートするのが使命だと思っています。

 昭和50年代を思い起こさせる僕の怒号を聞きに、ぜひ横浜スタジアムまでいらしていただければと思います。

 観客席の一番上まで余裕で聞こえる大声で張り切っています。ちなみに試合は午前11時開始です。

 そして僕が教えているもう一つのチーム、早稲田大学ビッグベアーズも12日にリーグ戦の第6節を迎えます。

 前節は、日本大学フェニックスの気迫の前に敗れました。昨年のリベンジを果たされた格好です。

 僕はノジマのゲームを横浜で終えてから川崎に移動したのですが、大雨でランプレーの比重が高かったのか予想よりも30分以上も試合進行が早く、ハーフタイム頃に到着予定が第4Qに差し掛かる時間になってしまいました。

 到着した時には3―7で負けていました。150人以上が立つビッグベアーズのベンチも意気消沈し、すさまじい負のエネルギーを発しています。

 普段のフットボールを楽しむおおらかで陽気なみんながどこにもいません。「みんな元気出して出して!」なんて言ってはみましたが、僕ごときではどうにもなりません。

 そうしているうちにもう1TDを追加されてしまい3―14です。残り時間的にはまだ逆転が可能だったのですが、やることがあまりうまくいかず試合はそのまま終了しました。

 3年連続のリーグ優勝&甲子園ボウル出場は、日大が残りの2試合に負けた上で早稲田が残りの2試合を勝つ必要があるという、かなり険しい条件になってしまいました。ひとまずは自分たちのできることに集中し、練習に励む以外に方法はありません。

 大雨でもあれだけのパフォーマンスを演じられる、日大の1年生QB林選手を称賛する声が多く上がっています。

 今後の成長がとても楽しみな選手ですから、大きなけがをせずに4年間プレーしてくれればと思います。学生フットボールが盛り上がること間違いなしです。

 問題は早稲田のランニングバック陣です。記録上では3人合わせて22回持って52ヤード獲得で、タッチダウンなし。1回平均2・3ヤード。そら負けますわ。

 ランニングバックたる者、活躍できたときは周りのみんなのお陰で、その逆は自分の責任だとこれまで教え込んできています。

 1回に2・3ヤードしか進まないランプレーじゃ、作戦も何もあったものじゃないと、一人ずつ呼び出しては叱りまくりました。

 もっともっと精進してもらわねばなりませんが、教え方も悪いはずなのでもっと「シゴキ」に磨きをかけていこうと思います。

 昨今のフットボールは脳しんとう問題などいろいろあるので、それほど毎日猛練習をする環境ではありません。

 負けを取り返すために今までの倍の練習をやる、などという習慣がありません。ですから選手たちはシーズン中に上達するのが難しくなっています。

 フォーメーションやセットプレーを総ざらいし、イマジネーション力を高めてから練習を開始し、シーズンに入ってからは強烈なヒットやタックルはけがを防止する意味でほとんど行われないので、試合に出た選手しか「トップリーグの選手が織りなす本気のスピードやパワー、ヒットやタックルを味わうこと」ができなくなります。

 本場アメリカのプロも、シーズン中の練習で自チームの選手相手には本気のヒットやタックルをお見舞いすることはありません。

 各種格闘技でも同じだと思いますが、全ての練習を試合と同じだけの打撃を打ち込むには安全管理と準備が大変です。

 フットボールも試合形式の練習で「寸止め」のテクニックが要求されます。実際に強く打つには「撃ち抜く」というイメージでなければなりません。

 しかし寸止めで練習効果を大きく求めようとするには、撃ち抜く時と同じスピードとパワーで敵に迫り、超のつく急ブレーキで寸止めを完了させる技術が求められます。これが難しい。日本でこれを上手にやれている選手はほんの数人です。

 この精度が高ければ「寸止め」の練習でも、試合さながらのスピードとパワーを発揮した上でなおかつ安全ですので、コーチ間での会話もしばしばここに行き着きます。

 高い実力を持った人の「寸止め」と未成熟な人の「寸止め」では、練習効果が全く違ってしまいます。ですから未成熟な人が多いチームでは「寸止め練習」をしていてもうまくならないのです。

 僕もレベルの低かった大学時代は、当たり前のように練習でもフルにタックルしていましたが、そのタックル自体の威力が弱いので誰もけがをしません。

 試合形式の練習で、プロの守備陣にロックオンされて何百プレーも練習できたのは、とても貴重な経験でした。

 「このまま突っ込まれれば確実に大けがをさせられたな」と思う場面もしょっちゅうありました。彼らは上級者ですので絶対に安全なのですが、やはり体も大きいですし怖いわけです。

 必死で走りつつも、恐怖を克服する気持ちの余裕を残しておかねばなりません。

 そのスリルの中で密集に突っ込み、わずかに見える隙間(デイライト)に向かって方向を変えたり速度を上げながら勝負する。プロの練習では、相手も味方もほぼミスをしない中で「最高の演武」をコーチに見てもらう、という表現の場でしたので、僕は練習の仕方にとてもとてもこだわりがあります。

 指導している選手らには少しずつそういうことが伝わってきていますが、いかんせん彼らは「本物のプロ選手」を生で見たことがありません。

 アメリカ人のフットボールをどうやって伝えていくかが、しばらくはテーマになりそうです。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優 勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は梅田と西麻布でバーガーショップを運営する有限会社 タモンズ代表取締役。。

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