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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.371=「信念の人」

2021.9.2 16:32 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
日大の監督として最後の日に学生に話しかける橋詰功さん=8月31日、東京・桜上水にある日大グラウンド
日大の監督として最後の日に学生に話しかける橋詰功さん=8月31日、日大グラウンド

 

 3年前の8月だった。東京・桜上水にある日大アメリカンフットボール部のグラウンドで、新監督に内定した立命大OBの橋詰功さんを多くのメディア関係者が囲んだ。

 

 そこには、不祥事で体制の一新を迫られたチームの新しいリーダーに、いきり立って質問する自分がいた。

 「日大というチームを、これまでどう見ていたのか?」「日大には独特の文化があって、それをどう継承していくのか?」「チームの歴史をどの程度知っているのか?」―。

 

 母校のピンチにこの人で大丈夫なのか。「フェニックス」に異文化が入ってくるのではないか。

 不安と怒りのようなものをむき出しにした、まさにOB的な発想であれこれ聞いた。

 

 それまで監督経験がない〝外様〟の指導者の力量に疑問を感じていた。だから正式に監督に就任してからも「これは違う」と思うと、その都度指摘してきた。

 なんたる狭量。思い出しては、我が身を恥じる。

監督就任前の記者会見で抱負を語る日大の橋詰功さん=2018年8月7日、東京・桜上水の日大グラウンド
監督就任前の記者会見で抱負を語る橋詰功さん=2018年8月7日、日大グラウンド

 

 橋詰さんは「信念の人」である。誰になんと言われようと自分のやり方を貫く。学生はそれを見抜き、日々の練習で「この人についていけば間違いない」と感じたのだろう。

 チームは確かな足取りで復活し、昨年は3年ぶりの甲子園ボウル出場を果たした。

 

 「不死鳥」は、15年前に亡くなった篠竹幹夫元監督がその礎を築いたチームである。

 他の大学とは一線を画した指導法で関東の強豪になり、学生王者・関学大に対抗してきた歴史がある。

 

 橋詰さんは「篠竹さんの指導は、究極の学生主体」と表現した。

 アプローチの仕方は違うが、一貫して目指したのは篠竹流の「フェニックスらしい、圧倒的な勝ち方」であり「学生に考えさせるフットボール」だった。

 

 8月31日での退任を前に、橋詰さんとじっくり話をした。

 「地元(滋賀)に帰って、うどん屋でもやろうかと思っているんです。昔からの夢だったので」

 本気かどうかは定かではないが、監督として過ごした3年間について語る言葉の端々から、志半ばでチームを去る無念さが伝わってきた。

東京・桜上水にある日大アメリカンフットボール部練習場
東京・桜上水にある日大アメリカンフットボール部練習場

 

 「我が家」と呼ぶ、3年間住んだクラブハウスの玄関まで見送ってくれた橋詰さんが、別れ際にぽつりと言った。

 「そういえば、きのうは篠竹さんの誕生日でしたね」(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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