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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

アメフトから学んだ協調、挑戦そして我慢 ファミリーマート社長・細見研介さん

2021.8.10 7:00 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
母校への思いを語る細見研介さん=東京・芝浦のファミリーマート本社
母校への思いを語る細見研介さん=東京・芝浦のファミリーマート本社

 

 「アメリカンフットボールから学んだこと? それは協調と挑戦そして我慢ですかね」―。

 アメフトに明け暮れた学生時代をそう振り返るのは、神戸大「レイバンズ」OBで大手コンビニエンスストア「ファミリーマート」の代表取締役社長の細見研介さん(58)だ。

 

 細見さんは今年3月、執行役員などを務めた伊藤忠商事からファミリーマートの社長に就任。伊藤忠では主にファッション関係などの繊維畑を歩いてきたビジネスマンが、9月に創立40周年の節目を迎えるファミリーマートで手腕を発揮している。

 

 大阪の進学校、豊中高でアメフトを始めた。ポジションはTEとDE。「人数が少なくて、両面でプレーしていた」という細見さんは、1浪後神戸大に入学した。

 「体が大きくないので、大学では無理やろうと思って、入学してから3カ月ほどはぶらぶらしていたが、レイバンズにいた高校の先輩に勧誘されて入部した」という。

 

 大学でのポジションはDE/LB。闘志を前面に出したプレースタイルで、強豪・関学大のスターQBを3プレー連続でサックするなど存在感を示した。

 1985年。4年になると、リーダーシップを買われて主将に指名された。

 

 細見さんが2年だった83年。京大が初めて甲子園ボウルを制し、ライスボウルでも勝って日本一になった。

 翌年は、同じ国立大ということもあり、神戸大はチーム史上最多となる50人近い新入生を迎え、部員100人を超える大所帯になった。

京大のQB東海辰弥選手(19)のパスを阻止する細見研介さん(25)=ファミリーマート本社提供
京大のQB東海辰弥選手(19)のパスを阻止する細見研介さん(25)=ファミリーマート本社提供

 

 84年度のチームは、春の試合で京大を破るなど注目された。

 しかし、その時の主力メンバーが大量に卒業した細見さん率いるレイバンズは、戦力的に苦しくなった。

 「僕がキャプテンになって、新人が交通事故で亡くなったりして、チームの状況は良くなかった。それまでの伝統を捨て、ディフェンスを変えるなどして、どんなことをしても勝つんだというチーム運営をしていた」と述懐する。

 

 仲間の死という受け入れがたい現実に直面しながら、自身もアクシデントに見舞われる。

 夏の合宿練習でふくらはぎの筋肉を断裂し、秋のリーグ戦は2試合しか出場できなかった。

 「みんなからはブーブー言われたが、鬼軍曹に徹した」という細見主将の下で、チームは開幕から3連敗した後の試合を3勝1敗で乗り切り、3勝4敗の同率4位で秋のリーグ戦を終えた。

4年の夏合宿でチームメートと記念写真に収まる細見研介さん(54)=ファミリーマート本社提供
4年の夏合宿でチームメートと記念写真に収まる細見研介さん(54)=ファミリーマート本社提供

 「1部残留を決めて肩の荷がすっと下りた。あのときの感覚は、今も忘れられない」

 

 就職先に総合商社を選んだ理由は「世界が身近にあると学生時代に感じていたから」。

 「アメフトもビジネスも、個とチームのバランスを常に考えながら、どれだけ最大限の力を発揮するかが大事。それと情報収集が大切なところも共通している」と、学生時代の経験が激しい生存競争を繰り広げる商社での仕事に生きたという。

 

 フランチャイズ企業であるファミリーマートは全国に約1万6600店舗を展開し、約5600人の社員と20万人の店舗スタッフが働いている。

 「全国の店舗に、美味しいおむすびとお弁当を安定して提供するシステムを作り上げているのは、日本人の勤勉さと正直さが根底にある。世界に誇れるカルチャーだと思っている」

 コンビニという巨大組織のトップとしての矜持(きょうじ)を忘れず、日々の仕事と向き合っている。

 

 伊藤忠の岡藤正広会長は入社時の上司。細見さんは岡藤さんの「懐刀」として、さまざまなビジネスシーンで成果を挙げてきた。

 「仕事で50カ国以上に行ったが、日本ってほんまにいい国やなと思う。世界を回って感じたのは、人間あんまり変わらんな、分かり合えるものやなということ」

 

 読書家としても知られる。お薦めの一冊である「アルケミスト 夢を旅した少年」は、主人公の少年が、ピラミッドの近くに眠る宝物の夢を見て、エジプトに旅立つ物語だ。

 「世界に出たいだとか、冒険心だとか、新しいことに挑戦したいという思いが、読んできた本に表れている。経営者としては、リアリストでありながら夢を持っていないといけないと思っている」

 

 主将として心がけたのは「人の意見を聞くこと。最終的に決めるのは自分だが、独裁は良くない」。組織を動かすための要諦を身につけた背景には、学生時代の試行錯誤がある。

 レイバンズは、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻さを増す前の2019年秋のリーグ戦で、関学大に15―17と肉薄し1部3位になった。

 「僕らOBは、後輩の活躍に力をもらっている。感謝しかない。コロナ禍の影響もあって、1部リーグの中では支援なども他校に比べると少ないと思うが、自主的に頑張ることが社会に出て必ず生きるはず」と、現役の学生にエールを送る。

神戸大4年時の立命大とのリーグ最終戦後の細見研介さん(25)=ファミリーマート本社提供
神戸大4年時の立命大とのリーグ最終戦後の細見研介さん(25)=ファミリーマート本社提供

 

 「社会のインフラである以上、美味しいものを提供するのはもちろんだが、それ以外でも人と人をつなぐ存在として、どう貢献できるかを模索している」

 熱く語る理想のコンビニ像には、デジタル化の波に乗り遅れることなく世の中に寄り添いながら、利益を追求する企業としての成長を目指すという気概が見てとれる。

 

 白いTシャツとサマースーツを粋に着こなし、関西人らしいユーモアのセンスを持ち合わせた細見さんに、社長イチ押しの商品を聞いてみると「8月から販売している『SPAMむすび』が、めちゃくちゃうまいんですよ。いやほんまに!」。

 さっそく試してみたところ、これが本当に美味しかった。

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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