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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

CFL挑戦の日本選手にエール 歴史的瞬間に立ち会える幸せ実感

2021.8.4 17:17 生沢 浩 いけざわ・ひろし
アクティブロースター入りを目指すアルエッツのRB李卓選手(26)=MontrealAlouettes– Dominick Gravel
アクティブロースター入りを目指すアルエッツのRB李卓選手(26)=MontrealAlouettes– Dominick Gravel

 

 私事で恐縮だが、筆者が日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼国際戦略担当に就任して1カ月が経過した。そんな筆者にとって7月31日は早くも大きな節目となった。

 この日は現地時間8月5日(日本時間6日)に開幕するカナディアンフットボールリーグ(CFL)の各チームが開幕ロースターを決定する期限だったからだ。

 そして、トレーニングキャンプに参加している6人の日本人選手全員が、それぞれのチームのアクティブロースター(試合出場登録する可能性のある上限44人)またはプラクティスロースター(チームに帯同する練習生、同13人)に登録されて残留が決まったのだ。

 100年を超す歴史を持つCFLで、これだけの日本人選手が実力を認められたのは快挙と言っていい。

 協会としては2019年秋にCFLとパートナーシップを結んでから、2年弱で成果を出したことになる。

 

 6人の日本人選手のうち、LB丸尾玲寿里選手(アサヒ飲料チャレンジャーズ―ウィニペグ・ブルーボマーズ)とK山﨑丈路選手(オービック・シーガルズ―BCライオンズ)はアクティブロースターに登録となり、早ければ開幕週にも出場の機会がある。

 現地からの情報によれば、丸尾選手はスペシャルチームで出場する可能性が高い。また、山﨑選手はアクティブロースター上で唯一のK、すなわち先発メンバーなのでフル出場は確実だ。活躍を期待したい。

開幕戦でデビューする可能性が高い、ブルボマーズのK山﨑丈路選手=BCLions
開幕戦でデビューする可能性が高い、BCライオンズのK山﨑丈路選手=BCLions

 

 プラクティスロースター入りして今後の出場機会を狙うのはRB李卓選手(オービック―モントリオール・アルエッツ)、LB山岸明生選手(富士通フロンティアーズ―アルエッツ)、OL町野友哉選手(富士通―ブルーボマーズ)、K佐藤敏基選手(IBMビッグブルー―トロント・アーゴナーツ)だ。

 佐藤選手自身のSNSの投稿によれば、アーゴナーツはグローバル選手をローテーションでアクティブロースターに登録する方針のため、佐藤選手もレギュラーシーズンのどこかのタイミングで公式戦デビューを果たすものとみられる。

 

 筆者が現職に正式に就任したのは7月1日だが、実は昨秋から業務提携という形で協会の仕事には一部関わってきた。

 その間に行われたCFLコンバイン(体力測定会、2月)、CFLと選手のオンライン面談(3月)、グローバルドラフト(4月)、トレーニングキャンプ出発直前の個別インタビュー(7月)を通じて感じたのは、この6選手のプロに挑戦する意識の高さと覚悟の強さだった。

 

 6選手はすべて昨年2月に行われた国内コンバインで選出された。本来ならその1か月後にトロントで現地のコンバインに参加して4月のドラフトに臨むというスケジュールだったのが、新型コロナウイルスの感染拡大のためにCFLの活動そのものが中止となった。

 CFL挑戦が1年先送りされるなかで、佐藤選手はNFL挑戦を視野に入れながら渡米してトレーニングをし、NFLで活躍したKニック・ノバック氏の指導を受けてきた。

 李選手はNFLのIPP(International Player Pathway)プログラム(国際的視野からの人材発掘プログラム)候補生となって米国でトレーニングを積み、山﨑選手は4月のドラフトで指名された後に仕事を辞めてCFL挑戦に専念する道を選んだ。

 

 町野選手と山岸選手は富士通での業務に携わりながら、フロンティアーズの練習にも参加し、それぞれの課題に取り組むトレーニングを継続。丸尾選手は母校テキサス大学サンアントニオ校の施設で本場のアメリカンフットボール選手とともに、パス守備向上を課題とするワークアウトを重ねてきた。

開幕はプラクティスロースターで迎えるアルエッツのLB山岸明生選手(59)=Montreal Alouettes-Dominick Gravel
開幕はプラクティスロースターで迎えるアルエッツのLB山岸明生選手(59)=Montreal Alouettes-Dominick Gravel

 

 彼らは例外なく自分の能力を信じ、それを海外のプロリーグでどのように発揮するかの青写真をしっかりと描いている。

 そこには過信も謙遜もなく、自分の実力と置かれた状況を冷静に分析した「現実」があるだけだ。

 その「現実」をさらなる高みにある「理想」に近づけようとする強い意志がある。その意志を貫徹するためには多少の犠牲もいとわない覚悟が必要だ。

 その覚悟を決めた6選手にはある種の凄みさえ感じるのである。

 

 当面はCFLに挑戦するが、その先に見ているのは最高峰の米プロリーグNFLだ。

 これも6選手が例外なく口にする目標だ。今、彼らはそれに向かっていよいよ現実的な一歩を踏み出そうとしている。

 筆者は今、この歴史的な瞬間にスタッフの一人として関わる幸運に恵まれた。新聞記者時代には味わえなかった感慨がある。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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