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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

QBロジャースはパッカーズ残留へ GMとの確執で退団の噂も

2021.7.28 12:20 生沢 浩 いけざわ・ひろし
パッカーズは今年1月のNFC決勝でバッカニアーズに敗れたが、QBアーロン・ロジャースはシーズンMVPに選ばれた(AP=共同)
パッカーズは今年1月のNFC決勝でバッカニアーズに敗れたが、QBアーロン・ロジャースはシーズンMVPに選ばれた(AP=共同)

 

 去就が注目されていたQBアーロン・ロジャースは、今季もパッカーズに残留する可能性が濃厚となった。ただし、これが彼にとってパッカーズで過ごす最後のシーズンになりそうだ。

 

 昨年NFLのシーズンMVPに選出されたロジャースはチーム首脳陣、特にブライアン・グーテクンストGMとの確執から退団を希望するとの情報があった。

 春のチーム合同練習を参加せず、ロジャース自身もその報道を裏付けるような行動をしていた。

 

 ところが、大きな動きがないままにキャンプインの日程(パッカーズは7月27日にチームが集合)が迫り、ロジャースもキャンプ地であるパッカーズの本拠地ランボー・フィールドに姿を現したと伝えられている。

 一両日中に、ロジャースがパッカーズに残留するための最終的な話し合いが行われる予定だ。

 

 本来は「残留」という言葉を使うのは正確ではない。なぜならロジャースとパッカーズの間の契約はあと3年間有効だからだ。

 契約下にあるのだからロジャースがパッカーズでプレーするのは当たり前だという論法は成り立つし、パッカーズも建前ではそう言い続けてきた。

 

 一方でロジャースの契約では、来年以降の年俸が保証されていない。つまり、パッカーズは来年以降に契約を破棄すればロジャースを解雇することができる。

 逆にロジャースは契約締結時のボーナスの分割分を除くサラリーがなくなる。これがロジャース退団の噂に信憑性を与える一因でもあった。

 

 一方でロジャースの年俸総額のうち、今季のサラリーキャップに換算されるのは3720万ドル(約40億円)と高額だ。

 パッカーズが水面下で画策していたとされる、ロジャースのトレードが成立しなかったのはこのサラリーキャップ額が原因だ。

 

 今年は長引いた新型コロナウイルスの感染拡大の影響でサラリーキャップ額は減額され、どのチームもそのやりくりに苦心している。

 ロジャースは是が非でも欲しいが、懐事情が許さないというチームは一つや二つではなかっただろう。

 

 ロジャースとパッカーズの関係に亀裂が入ったのは、昨年のドラフトでユタ州立大学のQBジョーダン・ラブを1巡(全体の26番目)で指名したことがきっかけだ。

 ラブは昨季は1試合も出場機会がなかったが、パッカーズは早ければ今季からラブをスターターとしてQBの世代交代を目指していた。

 

 パッカーズのその思惑は少なくとも数カ月から1年は後ろ倒しになる。

 パッカーズはロジャース慰留の準備を着々と進めている。控えQBブレイク・ボートルズをリリースし、かつてロジャースのナンバーワンターゲットとして活躍したWRランドール・コブ(現テキサンズ)をトレードで再獲得する動きのあるのがその証拠だ。

 

 ロジャースの残留は長くても今季いっぱいだろう。ラブとの契約は4年だ。

 今季ロジャースが先発QBを務めると仮定すると、ラブは契約の半分をバックアップとして過ごすことになる。巨額の投資をつぎ込む1巡指名QBにそんな無駄な時間を与える余裕はない。

 

 ロジャース残留で得をするのはいったい誰なのか。ロジャースがスーパーボウルを目指すなら、本人が望むか否かに関わらずパッカーズが最適なチームであるのは間違いない。

 望み通りスーパーボウルで勝てば、来年の移籍の際には引く手あまただろう。

 一方で不振のためにベンチに下げられたり深刻な負傷をしたりすれば、現役生活の残り少ないロジャースの価値は一気に下がり、引退に追い込まれかねない。

昨年8月にグリーンベイで行われたトレーニングキャンプに参加した、パッカーズのQBアーロン・ロジャース(AP=共同)
昨年8月にグリーンベイで行われたトレーニングキャンプに参加した、パッカーズのQBアーロン・ロジャース(AP=共同)

 

 今年も控えに甘んじるなら、ラブは貴重な実戦経験の機会をさらに失うことになり、2019年の秋以降の試合出場がないため勝負勘はどんどん鈍っていく。

 パッカーズはロジャース起用ならスーパーボウルを目指せるが、ラブを育成するならある程度の負けは覚悟しなければならない。

 

 ロジャース、パッカーズ、ラブの3者すべてに利がある状況は考えられない。

 誰かが得をすればまだましだが、結果的に誰も利益を享受できない「失われた一年」になる最悪のシナリオも否定できない。ロジャース残留の決断は、それだけ重いものなのだ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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