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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.369=「コーチングは心と心のやり取り」

2021.7.1 11:22 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
高校生に基本を教える水野彌一さん=木戸宗子郎さん提供
高校生に基本を教える水野彌一さん=木戸宗子郎さん提供

 

 張りのある声とよどみない語り口は健在だ。

 6月で81歳になった京大ギャングスターズ元監督の水野彌一さんと、久しぶりに電話でやり取りをした。

 

 2回目のワクチン接種を終えたばかりという水野さんは現在、京都両洋高校アメリカンフットボール部のコーチをしながら、京大の練習にも週2回ほど参加している。

 

 1996年シーズンを最後に、タイトルから遠ざかっているギャングスターズへの思いは、誰よりも強い。

 主にオフェンス構築の手伝いをしているそうで、オプション攻撃のノウハウを教えているという。

 

 あらためてコーチングについて尋ねると、興味深い話をしてくれた。

 「コーチングは、選手に負荷のかかる練習を強制してスキル(学習や訓練を通して獲得した能力)を身につけさせることが大切。それは尊敬する(元日大監督の)篠竹さんがやっていた方法で、僕もかつて同じことをしていた」

 

 単に技術や戦術を伝授するのではなく、人にものを教える作業とは「心と心のやり取りを指す」という言葉は、説得力に満ちている。

 「強制されて初めて、そうだったのかと思える。そうして気付くことが大事」

 

 練習時間などが細かく規制されている米国の大学では、コーチングのコアな部分はいわゆる「企業秘密」で表に出ていないものもあり、トップチームの指導者が安全面に配慮し、選手のスキルアップに特化した練習をしているのは間違いないと解説してくれた。

 

 ただ、今の日本は昔と違ってコーチが思い切り踏み込めない社会事情もあり、なかなか突出したチームが現れないのだそうだ。

 

 水野さんが注目しているのは、京大の2年生QB泉岳斗選手。米国で子どもの頃からアメフトに親しみ、都立西高で非凡な才能を発揮していた泉選手は、昨年現役で京大に合格した。

京大期待の2年生QB泉岳斗選手(17)=撮影:山口雅弘
京大期待の2年生QB泉岳斗選手(17)=撮影:山口雅弘

 「(1980年代後半の京大黄金時代に活躍したQBの)東海をはるかに超える素材。彼をどう育て生かすかは、京大がフットボール界に貢献する上で極めて重要」と話す。

 

 勝てるチームを作るには、全体的なフィジカル面の向上が欠かせないという考え方は変わっていない。

 「フットボールのような激しいスポーツをやろうとするなら、気概や旺盛な闘争心がなければ成功しない」

 水野さんが自らの指導哲学をしたためた著書が、近々上梓される予定だ。楽しみである。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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