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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

コロナ対策進むNFL ワクチン接種巡り選手間で賛否も

2021.6.23 11:36 生沢 浩 いけざわ・ひろし
NFLは通常開催に向けて、新型コロナウイルス対策に一層力を入れている(AP=共同)
NFLは通常開催に向けて、新型コロナウイルス対策に一層力を入れている(AP=共同)

 

 新型コロナウイルスのワクチン接種が順調に進むアメリカでは、MLBで観客動員数の制限が撤廃される地域があるなど、スポーツを取り巻く環境がかつての日常を取り戻しつつある。

 

 この流れに沿う形でNFLも新型コロナウイルスに関するプロトコル(規約)を改訂した。

 

 ワクチン接種を完了した選手に対しては、これまでの行動制限が大きく緩和される内容だ。今秋のシーズンでは、基本的に制限なく観客を入れて試合をしたいNFLがその目標に向けて一歩踏み出したといえる。

 

 これまでにも、NFLはワクチン接種を終えた選手や関係者についてはチーム施設内に限ってマスク着用の義務はないとするなど、プロトコルを緩和してきたが、今回は遠征中の行動についてもほぼ制限のない自由な行動が認められるようになった。

 

 もっとも、これはあくまでもワクチンを接種した選手が対象である。プロトコルの内容を読むと、ワクチンを接種していない選手への禁止事項が羅列されており、これらを守らなければ厳しく取り締まる方針だ。

 

 例えばワクチンを接種していない選手、関係者はPCRや抗原検査を日常的に受ける必要があり、マスク着用とソーシャルディスタンスの維持が義務付けられる。

 また、遠征中はチームメートとの食事やメディアとの接触、ホテルのサウナやスティームルームの使用、外出などがすべて禁じられる。

 これらのプロトコルに違反すると50000ドル(約550万円)という高額の罰金が待っている。

 

 こうしたプロトコル改訂は、チームを運営する側にはおおむね歓迎されているようだ。

 昨年ホームゲームを無観客で行ったビルズは、今季は観客の入場を認めることを決定した。また、レーベンズは早くも夏のトレーニングキャンプからファンの受け入れを再開する予定だ。

 

 ただし、選手間には戸惑いが広がっている。ビルズのWRコール・ビーズリーはSNSで、ワクチン接種の拒否を明言している。

 ビーズリーは「コロナで死ぬことになるかもしれないが、自由が制限されて生きるよりましだ。(拒否が原因で)引退に追い込まれるならそれまでだ」と言い切った。

 

 NFLはワクチン接種を義務化していない。また、罰金もあくまでプロトコル違反に対するものであってワクチン接種の有無が対象ではない。

 ビーズリーはまた「自分は(ワクチンを打たずに)外出もするし、人前にも出る。自分に近づきたくなかったら距離を置くかワクチンを打てばいい」とやや大人げない投稿もしており、NFLの新しいプロトコルに過剰に反応している部分は否めない。

 

 ビーズリーは極端な例だとしても、ワシントンのLBモンテス・スウィートはワクチン接種をしない方針を表明しているし、ジェッツからパンサーズに移籍したQBサム・ダーノルドは接種しないつもりだったが、最近になってその決心が揺らいでいることを告白している。

 

 選手の間に一種の拒否反応があるのはワクチンの副反応やその効用について完全には明らかになっていないからだ。

 これらの症状に個人差もあり、判断が難しい。体調に人一倍気を配るNFL選手が、体への影響に懸念を抱くのも仕方のないことだ。

 

 NFLはこれから行われるトレーニングキャンプやレギュラーシーズン、プレーオフを通じて可能な限り観客動員を一昨年までの「日常」に戻す方向に舵を切った。その鍵を握るのはワクチン接種だ。

 しかし、ワクチン接種はあくまでも個人の選択によるもので強要はできない。この両立は想像以上に難しいかもしれない。

 

 NFLは引き続き、ワクチンに関する情報をより広く集めて選手に提供する必要がある。

 接種の是非は選手本人にゆだねるにしても、いわゆる「ワクチンハラスメント(ワクチンを接種していない人に対する差別)」や、摂取した選手とそうではない選手との分断を避ける努力は最大限にしなければならない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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