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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

〝ラストシーズン〟にかける名QB スティーラーズのロスリスバーガー

2021.6.3 12:33 生沢 浩 いけざわ・ひろし
昨季のブラウンズとのプレーオフ1回戦で、手痛いスナップミスを犯したスティーラーズのCモーキス・パウンシー(53)を慰めるQBベン・ロスリスバーガー(7)(AP=共同)
昨季のブラウンズとのプレーオフ1回戦で、手痛いスナップミスをしたスティーラーズのCモーキス・パウンシー(53)を慰めるQBベン・ロスリスバーガー(7)(AP=共同)

 

 スティーラーズ一筋に、NFLでの選手生活18年目を迎えるQBベン・ロスリスバーガー(39)が、2021年シーズンに向けて静かに始動した。おそらくこれが、彼の現役生活最後のシーズンとなる。

 

 オハイオ州にあるマイアミ大出身のロスリスバーガーは、2004年のドラフトで1巡11番目指名を受けてスティーラーズに入団した。

 伝統的に強固なディフェンスを後ろ盾に、ラン主体のオフェンスを構築し続けてきたスティーラーズが、パスを武器にするチームに変貌する立役者となったのが彼だ。

 

 ルーキーシーズンの第4週目から先発QBとなり、昨年までに3回のスーパーボウル出場で2度の優勝を経験している。

 同じ年に1巡指名されてライバルとして戦ったイーライ・マニング(元ジャイアンツ)、フィリップ・リバース(元チャージャーズ、コルツ)はすでにユニホームを脱いだ。

 

 最近5年ほどはシーズンが終わるたびに引退の噂が流れる。スティーラーズとの契約は今年いっぱいで満期を迎える。

 来季以降の契約延長や移籍しての現役続行という選択肢は残されているが、現実的ではないというのが大方の予想だ。

 

 最近行われたメディア対応で、ロスリスバーガーは「自分には(チームカラーの)ブラック&ゴールドの血が流れている。人生の半分近くをスティーラーズでプレーしてきた。ここが自分の故郷だ。他のチームには行きたくない」と述べており、よほどのことがない限り移籍はないと思われる。

 

 今年3月には500万ドル(約5億5000万円)のペイカットをチームに申し入れた。

 ペイカット前の契約から算出されるサラリーキャップ換算額は4200万ドル(約46億円)にも及び、スティーラーズの台所事情を圧迫していた。ペイカットによって換算額は1500万ドル(約16億4000万円)ほど減額された。

 

 ペイカットの申し入れは高額なキャップ換算額を理由に解雇されることを防ぎ、さらにチームが選手補強に使用できる額を増やすのが目的だ。

 今年のスティーラーズはすでに、サラリーキャップ上限額をオーバーしており、自チームのフリーエージェント(FA)選手の再契約にも苦戦している。

 エースWRジュジュ・スミスシュースターとは1年契約がやっとだったし、OLアレハンドロ・ビラヌエバ、RBジェームズ・コナー、LBバド・デュプリーら主力の慰留には失敗し、移籍を許した。

 

 ロスリスバーガーは「スティーラーズには素晴らしいディフェンスがあるし、オフェンスにも驚くべき人材がそろっている。現役を続けてこの特別なチームの一員になりたいと思った」と、ペイカットの理由を説明している。

 深読みすれば現状の戦力を可能な限り維持して今季を戦いたいということだ。毎年のように「引退」の二文字がちらつくロスリスバーガーだけに、今年にかける決意表明にも聞こえるのだ。

 

 スティーラーズはFAによる補強はほとんどないが、ドラフトではアラバマ大のRBナジー・ハリスを1巡で指名して、去年の弱点だったランオフェンスのテコ入れを図った。

 右肘の手術から2年が経つロスリスバーガーのパスが昨年並みの安定度を見せれば、オフェンスは戦力アップが見込めるだろう。

 

 「毎年『これが最後』という覚悟で戦っている。将来のことはわからない。ただ、スーパーボウルで勝つために全力を尽くすだけだ」とロスリスバーガーは語る。

 ラストランを3度目の栄冠で締めくくることができるか。ロスリスバーガーの最後の挑戦だ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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