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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

おお、我が母校 清教学園「ファイティングラッツ」の廃部に思う

2021.6.2 15:13 中村 多聞 なかむら・たもん
2004年度卒業の清教学園「ファイティングラッツ」の3年生=提供:清教学園高校
2004年度卒業の清教学園「ファイティングラッツ」の3年生=提供:清教学園高校

 

 自宅のマッサージチェアに身を任せながらウトウトしてしまい、ハッと起きたら首が痛くて動かせないので治療院や病院へ行きましたが、まだ治っていない中村多聞です。

 

 今回は大阪府の河内長野市にあります、清教学園高校のアメリカンフットボールチーム「ファイティングラッツ」が、学校の判断で「廃部」が決定したという情報を入手し、そのあたりの事情を伺ってみました。

 

 何故清教学園高校のフットボールチームのことかといいますと、実は僕はこの高校を卒業しておりまして、OBなんです。

 ただし、僕が在校中にはフットボールチームは存在しなかったので、チームのOBではないのですけどね。でもまあ気になるじゃないですか、母校だし。恩師の板橋秀行先生(故人)が作ったクラブですから。

 

 清教学園高校のフットボールチームの顧問が、僕の同級生で教諭をしている中道美史君なんです。

 中道先生は、清教学園高校から大阪教育大に進み母校に舞い戻ってきた男です。まあ彼が大阪で僕が東京っていうこともあり、年賀状のやりとり程度しか付き合いはありませんが「どないなってんのんな?」と取材してみました。

 

多聞:いつからフットボール部の顧問を?

中道先生:最初はサッカー部を見ていて、我々の恩師である「板橋先生」が退職されたので後任として私が担当になりました

多聞:ずっと一人で?

中道先生:フットボール経験があるのは私だけで、他にも二人の先生がいらっしゃいますよ

多聞:僕らに年の近い先生がいましたよね

中道先生:そうですそうです。一つ年上の西澤先生ね。清教学園ではその先生がやっていたスポーツに関係なく顧問をする部活を振り分けられるので、ほとんどの顧問先生はその競技の経験や専門知識がないんです。アメフト経験のある先生だからアメフト部ってことにはならないんです。

多聞:そんな感じなんですか。高校フットボールは3年生の冬まで部活しないんでしょう?

中道先生:それは各高校の考え方で、3年生の1学期に開催される「春大会」で引退する高校もあるし、クリスマスボウル(全国高校選手権決勝)出場のかかった「秋大会」が終わるまで引退しないという2種類があります。関西でいうと、大阪の公立の豊中高校や池田高校、私立の進学校の高槻高校は春まで。京都の立命館宇治などは秋までやります。

多聞:なるほど。高校フットボールってそうなっているんですね

 

 このように清教学園高校のフットボールチームやその周囲の事情をいろいろと教わり、今回の核心である「廃部」についても話してもらいました。

 

 まず高校フットボール全体に言えることで、部員数不足と指導者不足の問題が大きいようです。

 部員数は、かつての強豪名門校でも入部者が減少していたり、逆に大学並みに100人近い人数をそろえているチームもあります。

 高校生の体力では、夏のゲームに問題が出てくるそうです。一方は11人でギリギリ、そしてもう一方は交代メンバーが潤沢。こうなると、熱中症などに要注意で、下手をすると救急搬送が必要な事態にもなるそうです。

 

 Xリーグや大学生であれば、その時の気温などを考慮してナイトゲームにシフトすることもありますが、涼しくなるのは実際には日没後の19時ごろですから、試合終了時刻は22時前後になります。そこから片付けをして帰路についても24時近くになってしまいます。

 これを許容する理解ある保護者が多いのがアメフトの特徴ではありますが、いかんせん高校のクラブ活動は教育の場でもありますので、深夜の徘徊はタブーなわけです。

 

 そして、そもそも高校の試合会場には、試合ができるレベルの夜間照明設備は用意されていないケースがほとんどです。

 ですから結局は数十人の差がありながら、酷暑の中で実施するしか道はないわけです。

 

 近年ですと、3年前に起きた「悪質な反則タックル問題」の影響で、保護者や学校側がアメフトを敬遠してしまうという流れも、少なからずあるようです。

 ルールを守れば、アメフトは決して危険なスポーツではないことを、ここでは付け加えておきます。

 

 コロナ禍の影響もあります。それまではそれなりに試合でも攻守交代メンバーを組めたチームも、部員数が減っている実情があります。

 競技の特殊性もあって、2年生からの途中入部では難しい部分もあるので、安易に勧誘できないという事情もあるようです。

 

 清教学園高校のチームは、この部員数が減ったタイミングで、学校側は2022年のシーズンを最後にアメフト部は終了という決断を下しました。

 このジャッジが出て以降に入学してきた学年の部活動参加も不可能になってしまいましたので、既存部員+1年生以外の在校生でチームを作らねばなりません。

 元々人数が少ない中で、新入生の参加が認められないとなれば、練習そのものが危うくなります。

 サインプレーの練習や、実戦練習も限られてしまいます。紅白戦や他校との試合なども不可能になってしまいます。

 僕自身も、人数が少ないチームで苦労した経験がありますが、まだ夢や希望が残されていました。もっと先が明るく見えましたが、彼らはそうではありません。

 そこで、清教学園高校フットボールチーム出身で、見た目が僕によく似ている三井勇洋さん(京都大学―オービック・シーガルズ)にもお話を聞いてみました。

 

三井さん:学校側にも理由があるんでしょうけど、廃部にする理由になれへんやろと思っています。試合ができなくても人数が少なくても、やりたい子がいるならやらせてあげればいいと思います。クラブの形だけでも残してくれたらいいのに

多聞:一昨年に決まってたらしいです

三井さん:学校が「NO」と言うならしゃあないけど、難しいとこやなあと。周りのOBも「さみしいなあ」言うてましたね

多聞:もう決まってしまっているので、いまさらどうしようもないけど、現役の高校生たちに何かメッセージを

三井さん:今は苦しいし悲しいだろうけど、高校生活で過ごした時間は消えないし、ファイティングラッツで過ごしたことも貴重な3年間です。過去は変えられないし、未来も今はどうしようもないけど、今の積み重ねが未来につながると思うので、満足できないかもしれないけど、フットボールができる今の環境の中で最大限大事にやっていくことが、自分や周りのためになると思います。廃部を受けてサッサと受験勉強に(フットボールじゃ食っていけないし)切り替えればいいんだろうけど、そうじゃなくて今の時間をしっかり頑張ることが将来に絶対プラスになると思いますよ

多聞:クラブ活動をしていても、京都大学に入る人もいるんですもんね

三井さん:みんなには頑張ってほしいですね

多聞:今日はありがとうございました

オービックの一員としてライスボウル制覇に貢献した三井勇洋さん=提供:オービック・シーガルズ
オービックの一員としてライスボウル制覇に貢献した三井勇洋さん=提供:オービック・シーガルズ

 

 廃部は決定事項ですし、ひっくり返してどうこうしたいわけではありません。

 そもそも僕は、社会人チームに所属していた頃の1995年に少しだけコーチをして以来、練習を見に行ったこともないくらいですから、偉そうなことは言えませんが、僕の中学、高校の6年間を彩った母校のことなので、皆さんにお話ししておこうと思った次第です。

 

 少子化で高校だけでなく、大学も人数不足に悩まされているようです。これはアメフトに限らず他の競技でも言えることです。

 斬新で効果的な新入部員獲得法を、誰か編み出して発表してください!

 

〈清教学園高校ファイティングラッツの主な出身者〉

・三井勇洋(京都大学―オービック―大阪学院大学ヘッドコーチ)

・淺野匡洋(立命館大学―パナソニック)

・浦川貴史(立命館大学―富士通)

・橋本誠司(関西学院大学 2014年甲子園ボウルMVP)

・福嶋賢悟(神戸大学―エレコム神戸)

・三木達也(関西大学―エレコム神戸)

・山本晃大(近畿大学2019年度副将)

・朝枝 諒(関西学院大学2021年度副将)

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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