×
メニュー 閉じる メニュー
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.365=「五月病なんて似合わない」

2021.5.20 14:12 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
東京・桜上水にある日大グラウンド
東京・桜上水にある日大グラウンド

 

 5月の連休後に学校や会社に行きたくない、授業や仕事に集中できないなどの状態を「五月病」と言うが、最近はあまり聞かなくなった。

 

 新型コロナウイルスの影響で、大学の授業や会社の研修はオンラインが中心で、五月病の一因となる他人との交流が希薄になっているからかもしれない。

 

 我が身を振り返ると、学生時代と社会人になってからの環境に違いに戸惑った経験がある。

 記者になって間もない5月。大相撲の夏場所が開催されている東京・両国国技館での取材を命じられた。

 口の重い力士とのやり取りは〝新弟子記者〟には格好の訓練になるからだ。何を聞いても返事は素っ気なく、面白くない談話を記事にまとめる作業は想像以上に難しかった。

 

 その姿を見た他社の先輩記者が、近づいてきてこう尋ねる。「君、原稿書けるの?」

 相手の学生時代を知っての意地悪な質問には、いつもこう答えていた。「書けるわけないじゃないですか。4年間、グラウンドで走り回っていただけですから。これから勉強しますよ」

 引け目を感じてうろたえないこと。こちらが弱みを見せると、心のすきにつけ込んでくる。人間とはそういう生き物だからだ。

 

 お相撲さんの口数が少ないのは、部屋の師匠から「弱そうに見えるから、ぺらぺらしゃべるな」とくぎを刺されているからだと聞いていたが、後にその力士が親方になってテレビの解説者として流暢に話しているのを見て妙に納得した。

 

 この春に卒業した大学の後輩が、「社会人生活はたくさんの壁だらけで、打ちのめされている部分が少なからずある」と打ち明けてきた。

 彼には、こうアドバイスした。

 「あなたの過ごした大学での4年間は、誰も経験できない濃厚で貴重なものだったはずだ。スタートでの出遅れは、全く心配ない。すぐに追いつけるから」

 

 どん底から這い上がり一つのことを究めた君に、五月病なんて似合わない。

 「一歩ずつ目の前のことに取り組めば、おのずと道は開かれると思っています」。ピンチを自らの判断で切り抜けてきた、彼らしい言葉が返ってきた。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

最新記事