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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

輝かしいキャリアに終止符 地元ニューオーリンズを愛したQBブリーズ

2021.3.16 13:17 生沢 浩 いけざわ・ひろし
2009年シーズンのスーパーボウルを制し、優勝トロフィーを手にするセインツのQBドルー・ブリーズ(AP=共同)
2009年シーズンのスーパーボウルを制し、優勝トロフィーを手にするセインツのQBドルー・ブリーズ(AP=共同)

 

 QBドルー・ブリーズの、20年間にわたるNFL選手としての輝かしいキャリアがついに終幕を迎えた。

 今年1月15日に42歳となったブリーズは、そのちょうど2カ月後にあたる3月15日、SNSに投稿する形で自らの引退を発表した。

 

 ブリーズは「ボロボロになって倒れる最後の瞬間まで、セインツとニューオーリンズにすべてをささげてきた。僕はフットボールからは引退するが、ニューオーリンズからは『引退』しない。これはさよならではない」とのメッセージを寄せた。

 

 リーグを代表するパスの名手だった。身長は183センチでNFLの水準ではむしろQBには不向きだ。にもかかわらず、正確無比なコントロールでパスを投げ続けた。

 パス成功率のNFL記録(74・4%)保持者であり、生涯パス獲得距離(8万0358ヤード)は2位のトム・ブレイディ(バッカニアーズ)とわずか1154ヤード差ながらNFLの歴代トップだ。

 間違いなく、同年代のブレイディ、ペイトン・マニング(コルツ、ブロンコス)、アーロン・ロジャーズ(パッカーズ)とともにパス隆盛時代を築いた一人である。

 

 ブリーズはまた、ニューオーリンズ復興の象徴的存在でもあった。

 ブリーズがセインツにフリーエージェントとして移籍したのは、ニューオーリンズがハリケーン「カトリーナ」による壊滅的なダメージを受けてから1年後の2006年だった。

 同年に就任したショーン・ペイトンHCの独創的で爆発力のあるパッシングオフェンスを忠実に実行できる能力を持っていたブリーズは、移籍初年でチームをNFC決勝に導いた。

 ベアーズに敗れたものの、絶望感に包まれていたニューオーリンズ市民に心のよりどころとなる希望を与えたのだった。

今季のレギュラーシーズンでの試合後、健闘をたたえ合うセインツのQBブリーズ(左)とバッカニアーズのQBブレイディ(AP=共同)
今季のレギュラーシーズンでの試合後、健闘をたたえ合うセインツのQBブリーズ(左)とバッカニアーズのQBブレイディ(AP=共同)

 

 その3年後にはフランチャイズ初、そして自身も最初で最後となるスーパーボウル優勝を達成した。

 ニューオーリンズがハリケーンの被害からかなりの部分で復興した現在でも、ブリーズは変わらず地域貢献を続ける。彼が人格者としてNFLで尊敬され、市民に愛されるゆえんである。

 

 自身が長くフィールドに立ち続ける間に、セインツやNFLは大きく世代交代をしていった。

 2014年から3年連続で負け越すなどその波に乗り遅れた感もあったが、WRマイケル・トーマスやRBアルビン・カマラらが入団したことで転機を迎えた。

 若手を牽引するベテランらしさを発揮して、セインツを再びプレーオフの常連として復活させたのだ。

 

 2017年からは前人未到のNFC南地区4連覇を達成した。しかし、スーパーボウルには届かなかった。

 2017年のディビジョナルプレーオフでは、終了間際にバイキングズに61ヤードの逆転TDパスを許して涙をのみ、翌年は相手側の明らかなパスインターフェアランスを見逃されて悔しい思いをした。

 2019年も延長戦の末にバイキングズに屈し、昨年はブレイディ率いるバッカニアーズに敗れた。これがブリーズにとって最後の試合になった。

 

 体格に恵まれなかったにもかかわらず、故障に強い選手だった。

 それでも最近2年は親指の骨折や肋骨骨折で戦列を離れるシーズンが続いた。こうしたことも、ユニホームを脱ぐという決断に至った理由かもしれない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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