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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

シーホークスQBウィルソンにトレードの噂 弱いOLに不満との報道

2021.3.3 12:29 生沢 浩 いけざわ・ひろし
2020年シーズンの「ウォルター・ペイトン賞」を受賞した、シーホークスのQBラッセル・ウィルソン(AP=共同)
2020年シーズンの「ウォルター・ペイトン賞」を受賞した、シーホークスのQBラッセル・ウィルソン(AP=共同)

 

 NFLシーホークスのスターQBラッセル・ウィルソンに、まさかのトレードの噂がある。

 

 発端は北米やイギリスで展開するウェブのスポーツサイト「The Athletic」が、ウィルソンがシーホークスに対して不満を抱えているとの記事を報じたことだ。

 

 

 「The Athletic」によれば、その不満とはOLが弱いことによるプロテクションの不備だということだ。

 

 ウィルソンは2012年のNFLデビュー以来、今季までの9シーズンで計394回ものQBサックを受けている。

 

 年間43・7回の計算で、機動力があるモバイル系のカテゴリーに入るウィルソンにしては多すぎるのは事実だ。

 

 

 今季序盤は5試合連続でパサーレーティング100を超えるパフォーマンスを見せ、チームを開幕5連勝に導いた。この頃は、シーズンMVP候補の筆頭に挙げられるほど好調だった。

 

 しかし、11月に入ると急激に調子が下降する。特にひどかったのは第9、10週で、この2試合だけで11回のQBサックを浴び、4インターセプトを喫した。

 

 

 この不振の原因の一つとして指摘されたのが、OLのパスプロテクションの弱さだ。

 

 近年のウィルソンは、早めのスクランブルでゲインを重ねられる場面でもあえてパスにこだわることが多い。これはパサーとしてより効果的にドライブを進めるうえで評価できる姿勢だ。

 

 しかし、パスプロテクションが弱ければパスを投げる前にタックルされる機会が増えるわけで、それがウィルソンのパスワークの低下につながった。

 

 少なくとも、ウィルソン「サイド」はそのように判断し、それをウィルソン本人の不満としてチームに訴えたと「The Athletic」は報じている。

 

 

 ここで重要なのは本人ではなくウィルソン「サイド」、つまり彼の代理人グループがシーホークスに対して主張している点だ。

 

 うがった見方かもしれないが、ウィルソンの契約を取り仕切ることで報酬を得る代理人にとって、ウィルソンは「商品」だ。

 

 QBサックによるダメージで選手生命が危機にさらされたり、プロテクション不備に起因するインターセプトでパフォーマンスの評価を下げられたりすることは受け入れがたい。

 

 こうした思惑が背景でうごめいているとは考えたくないが、完全に否定もできないのが事実だ。

 

 

 では、ウィルソンのトレード放出は本当にあるのだろうか。

 

 ウィルソンとシーホークスの契約には、トレードによる放出を禁じる条項が含まれている。ただし、ウィルソンが退団を望んだ場合はその限りではない。

 

 これはあくまでも、シーホークスがウィルソンの意に反してトレードすることを認めないというものだ。

 

 さらに状況を複雑にしているのがESPNの報道だ。

 

 ESPNは「ウィルソンは今後もシーホークスでプレーしたいという希望を持っているが、もしトレードが考慮されるならば可能性のある移籍先はベアーズ、カウボーイズ、レイダーズ、セインツだとチームに伝えた」と報じたのだ。これで状況が分からなくなった。

 

 

 これまでだったら、既にフランチャイズQBとしての地位を築き、フィールド外では熱心な慈善活動を評価され、2020年シーズンの「ウォルター・ペイトン賞」を受賞したウィルソンの移籍など考えられないと一笑に付していたかもしれない。

 

 しかし昨年は、リーグを代表するQBトム・ブレイディが、ペイトリオッツからバッカニアーズに移籍しスーパーボウル制覇を果たした。

 

 今年はマシュー・スタッフォードとジャレッド・ゴフの大型QBトレードが成立した。今のNFLでは何が起きても不思議ではないのだ。

 

 

 シーホークスの立場から考えると、ウィルソンを放出することによる戦力低下は大きく、トレードのメリットはほとんどない。

 

 しかし、何らかの理由でシーホークスがメリットを見いだすようなことが起きれば、NFLファンを驚かすビッグニュースが飛び込んでくるかもしれない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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