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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.360=「古川明さん」

2021.2.18 15:35 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
甲子園ボウルなどの写真や資料を前に、当時の思い出を語る古川明さん=兵庫県尼崎市の自宅(1995年12月撮影)
甲子園ボウルなどの写真や資料を前に、当時の思い出を語る古川明さん=兵庫県尼崎市の自宅(1995年12月撮影)

 

 特徴のある手書きの文字で綴られた文章が、会社のファクスに送信されてきた。送り主は、関西学生アメリカンフットボール連盟の古川明顧問だ。

 日本協会の理事長などの要職を歴任し、2004年には日本アメリカンフットボールの殿堂入りをしている古川さんは、「生き字引」として長年競技の発展に貢献してきた。

 

 ファクスには、1月18日に92歳で亡くなったチャック・ミルズさんの死亡記事を配信した共同通信と、記事を書いた小欄への謝意がしたためられていた。

 

 3月で90歳になる古川さんは、大阪・池田中でアメリカンフットボールを始め、関学大時代は第4、5回甲子園ボウルで優勝した経験を持っている。

 大学卒業後は米デンバー大に留学し、帰国すると指導者、審判員として活躍。関西学生リーグの隆盛を支えてきた立役者である。

 

 マスコミ対応を重視し、試合会場には必ず「記者席」を設け、できる限りの情報提供をする「関西流」は、古川さんが確立したと言っていい。

 「そんなことも知らんのか」と言いたくなるような、不勉強な記者の質問にも丁寧に答え、最後の一人が記者席を出るまで付き合う。

 時には、試合会場近くの居酒屋に取材者を誘い「フットボール談義」に花を咲かせる。

 

 いつも元気な古川さんを、最近甲子園ボウルなどでお見かけしないので心配していた。

 ファクスのお礼に、尼崎のご自宅に電話をしてみると「持病もなく、体はいたって健康。ただ、年寄りが新型コロナウイルスに感染して皆さんに迷惑をかけてはいけないので、自宅でおとなしくしているのです」ということだった。いかにも古川さんらしい。

 

 何日かして、再びファクスが送られてきた。今度は「王子公園に大学誘致へ」という見出しがついた神戸新聞の記事の写しだった。

 記事の内容は、神戸市が大学の誘致を目指すとともに、王子公園内のスポーツ施設の再整備に着手するというものだった。

古川さんからファクスで送られてきた新聞記事
古川さんからファクスで送られてきた新聞記事

 

 現在、関西学生リーグの主会場である「神戸市王子スタジアム」は、陸上競技のトラックがあり、フィールドと客席の間に距離がある。

 古川さんは以前から、神戸にアメリカンフットボール専用スタジアムを建設する大切さを説き、そのための準備に尽力してきた。

 それだけに「新しいスタジアムの予定に、ほっとしています」というくだりには、実感がこもっていた。

 

 「ワクチンを打ったら、また現場に参ります」

 コロナ禍で不自由な生活を強いられる中、古川さんの一番の楽しみは、まだ小さいお孫さんの相手をすることだそうだ。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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