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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

バッカニアーズが18年ぶり優勝 QBブレイディは5度目のMVP

2021.2.8 14:40 生沢 浩 いけざわ・ひろし
ともにペイトリオッツから移籍して1年目でスーパーボウル優勝に貢献したバッカニアーズのTEグロンカウスキー(87)とQBブレイディ(12)(AP=共同)
ともにペイトリオッツから移籍して1年目でスーパーボウル優勝に貢献したバッカニアーズのTEグロンカウスキー(87)とQBブレイディ(12)(AP=共同)

 

 NFLの2020年シーズンの王者を決める「第55回スーパーボウル」は2月7日(日本時間8日)、フロリダ州タンパのレイモンドジェームズスタジアムで行われ、史上初めて地元チームとして出場したNFC代表のタンパベイ・バッカニアーズが、前年度チャンピオンでAFC代表のカンザスシティー・チーフスを31―9で破り、18年ぶり2度目の優勝を飾った。

 3TDパス成功のバッカニアーズのQBトム・ブレイディ(43)は、自身10度目のスーパーボウル出場で7度目の制覇、さらに5度目となる最優秀選手(MVP)受賞はいずれも史上最多。

自身10度目のスーパーボウル出場で5度目に最優秀選手に選ばれたバッカニアーズのQBブレイディ(AP=共同)
自身10度目のスーパーボウル出場で5度目の最優秀選手に選ばれたバッカニアーズのQBブレイディ(AP=共同)

 QBとして2チームでのスーパーボウル優勝は、ペイトン・マニング(インディアナポリス・コルツ、デンバー・ブロンコス)に次いで2人目の快挙となった。

 

 移籍1年目でチームを牽引する重責を担ったブレイディは、試合後に「このチームは自信にあふれている。いいタイミングでチームが一つになった。今夜はこういう結果になると信じていた。今季最高の試合ができた。もちろん来年もこの舞台の戻ってくる」と述べた。

 

 バッカニアーズは第5シードとしてプレーオフに出場し、NFC決勝までの3試合をすべてロードで戦ってきた。

 今季のスーパーボウルはNFCがホームチームのため、着用するユニホームの色を選択する権利を持っていたが、あえてアウェー用の「白」を着用して試合に臨んだ。

 

 試合はチーフスが2度目のポゼッションでFGを決めて3―0と先制した。

 しかし、その直後のバッカニアーズはRBレナード・フォーネットの3連続ランでファーストダウンを更新すると、プレーアクションパスを織り交ぜた鮮やかなドライブでTDを返した。

 バッカニアーズ最初のTDは、ブレイディから盟友TEロブ・グロンカウスキーへの8ヤードパスだった。

優勝トロフィーを手にするバッカニアーズのQBブレイディ(AP=共同)
優勝トロフィーを手にするバッカニアーズのQBブレイディ(AP=共同)

 

 バッカニアーズは、次のポゼッションでゴール前1ヤードまで進んだが、チーフスのディフェンスに阻まれ好機を逃した。

 この後の両チームのポゼッションが、試合の流れを大きく左右した。

 

 エンドゾーンを背負ってオフェンスを始めたチーフスは、ファーストダウンを1度更新するものの、第4ダウン8ヤードとなってパントを選択する。

 このパントによって敵陣30ヤードまで陣地を回復したはずだったが、このプレーでチーフス側にホールディングの反則があって蹴り直しとなる。

 Pトミー・タウンゼントの2度目のパントはミスキックとなり、チーフス陣内の38ヤードでアウトオブバウンズに出てしまった。

 

 続くバッカニアーズオフェンスでの第3ダウン4ヤードのプレーだ。ブレイディのパスはWRマイク・エバンスがはじいてしまい、そのボールをチーフスのSSタイラン・マシュ-がキャッチしてターンオーバーかと思われた。

 しかし、このプレー中にCBチャーバリアス・ウォードのホールディングの反則があり、インターセプトは無効になった。

 

 さらにバッカニアーズは、チーフスの22ヤード地点で第4ダウン5ヤードとなってFGを蹴るが、今度はチーフスのメコール・ハードマンがオフサイドの反則。これがバッカニアーズにファーストダウンを与える結果となり、その直後のプレーでブレイディからグロンカウスキーへ2本目のTDパスが決まって14―3と点差が広がった。

 このように、この試合でのチーフスは自らのビッグプレーが反則で帳消しになる場面が目立ち、終始リズムをつかめなかった。

 

 前半終了間際のバッカニアーズのオフェンスの時には、残り49秒からタイムアウトで時間を止めた。

 前半のうちに自分たちのオフェンスに時間を残すのが狙いだったが、逆にバッカニアーズに余裕を与えてしまい、ブレイディからWRアントニオ・ブラウンへのTDパスで21―3と傷口を広げる結果となってしまった。

 

 チーフス自慢のオフェンスは、バッカニアーズディフェンスにことごとく抑えられた。

 QBパトリック・マホームズはプレーオフで痛めた左足親指の影響が出て、本来なら武器となるスクランブルやロールアウトといった自らのランに精彩を欠いた。

倒れながらパスを投げるチーフスのQBマホームズ(AP=共同)
倒れながらパスを投げるチーフスのQBマホームズ(AP=共同)

 

 LTエリック・フィッシャーがAFC決勝でアキレス腱断裂の重傷を負ったことで、RTマイク・レマーズを左サイドに、アンドルー・ワイリーをRTに起用したOL陣は、バッカニアーズの執拗なパスラッシュに対応できず、本来の機動力を欠くマホームズは余計にプレッシャーを受ける形となった。

 

 パスディフェンスでも、バッカニアーズはLBラボンテ・デービッド、デビン・ホワイト、DBアントワン・ウィンフィールドjr.らが、要所でパスカットを決めてチーフスを封じた。

 チーフスは頼みのWRタイリーク・ヒルが7回のパスキャッチで73ヤード、TEトラビス・ケルシーは10キャッチで133ヤードを稼いだが、エンドゾーンには届かなかった。

 マホームズがTDを一つも決められずに終わったのは、2018年シーズンに先発QBとなってから初めて。それだけバッカニアーズのディフェンスは強く、堅かった。

フィールドに座り込むチーフスのTEケルシー(87)と好守備を見せたバッカニアーズのLBホワイト(45)(AP=共同)
フィールドに座り込むチーフスのTEケルシー(87)と好守備を見せたバッカニアーズのLBホワイト(45)(AP=共同)

 対照的にバッカニアーズのオフェンスは、第4Qには既に時間消費を意識したプレーコールが随所に見られるなど、前半のリードに守られて余裕のある試合運びをすることができた。

 

 今季は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でドラフトがバーチャル開催となり、プレシーズンゲームやプロボウルが中止となった。

 レギュラーシーズン中は無観客を含め、入場者数を限定された試合がほとんどで、スーパーボウルもキャパシティーの3分の1にも満たない2万2000人に制限された。

 

 チーム内で感染者が出たために日程変更となった試合も少なくなかった。

 そんな中で開催された「特別なシーズン」のスーパーボウルは、43歳のベテランQBが、また一つ歴史にその名を刻んで幕を閉じた。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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