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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

バッカニアーズ、ブラウンズなどが勝つ NFLプレーオフ1回戦

2021.1.12 14:31 生沢 浩 いけざわ・ひろし
TDパスを決めるバッカニアーズのQBブレイディ(12)(AP=共同)
TDパスを決めるバッカニアーズのQBブレイディ(12)(AP=共同)

 

 NFLのプレーオフは1月9、10日(日本時間10、11日)に1回戦6試合が行われ、4試合でワイルドカードのチームが地区優勝チームを破る波乱の展開となった。

 

 久しぶりのプレーオフ出場となったブラウンズとバッカニアーズがそれぞれ勝ち進み、今季限りの引退が噂されるQBドルー・ブリーズ(セインツ)とフィリップ・リバース(コルツ)は明暗を分けた。

 最も長い18年間もプレーオフに届かなかったブラウンズ(AFC北地区3位)は同地区優勝のスティーラーズを48―37で破り、1994年以来となるプレーオフ勝利を飾った。

 94年と言えば、ビル・ベリチック氏(現ペイトリオッツHC)がHCを務めていた頃で隔世の感がある。またブラウンズがロードのプレーオフゲームで勝つのは69年以来のことだという。

 

 ブラウンズはスティーラーズのミスによって序盤に得点を重ね、試合を優位に運んだ。

 スティーラーズ最初のオフェンスプレーでCモーキス・パウンシーのスナップが大きくそれてエンドゾーンに転がり、それをリカバーしてあっという間に先制点を挙げた。

 その後もQBベン・ロスリスバーガーから4インターセプトを奪い、終始セーフティーリードを保ったまま逃げ切った。

 

 また、2007年以来の出場となるバッカニアーズ(NFC南地区2位)はワシントンFT(NFC東地区優勝)を31―23で破り、02年シーズンのスーパーボウル優勝を最後に縁のなかったプレーオフでの白星を手に入れた。

 QBトム・ブレイディは40回のパス試投で22回の成功と、確率こそよくなかったものの381ヤードをパスで稼ぎ、2TDパスを成功させた。

 

 選手の出場経験が大きなファクターとなるプレーオフでは、長いブランクを経て出場したチームが初戦で勝つのは非常に難しい。それをブラウンズとバッカニアーズが実現したことには理由がある。

 

 ブラウンズは、スティーラーズのミスに乗じて前半で28―0と大きくリードを奪った。QBベイカー・メイフィールドやRBニック・チャブなどプレーオフ初出場の選手が多い中でスナップミスやインターセプトから楽に連続得点できたことで、「負ければ終わり」というプレッシャーを克服することができた。

スティーラーズのLBウィリアムズ(98)のプレッシャーを受けながらパスを投げるブラウンズのQBメイフィールド(6)(AP=共同)
スティーラーズのLBウィリアムズ(98)のプレッシャーを受けながらパスを投げるブラウンズのQBメイフィールド(6)(AP=共同)

 プレッシャーを感じる暇もないうちに大量リードを奪ったと言っても過言ではない。

 後半に入るとスティーラーズが反撃に転じ、ブラウンズの勢いが失速する場面も見られたが、点差が大きかったため追いつかれることはなく逃げ切ることができた。

 

 バッカニアーズの場合は、ペイトリオッツ時代を含め41試合目のプレーオフ先発出場を果たしたブレイディの存在が大きい。

 バッカニアーズのほとんどの選手にとって、プレーオフはこれまでに味わったことのない緊張感が漂う試合だったに違いない。

 しかし、ブレイディは21年間のNFLキャリアでプレーオフに出場しなかったシーズンは3回しかない。

 43歳のブレイディにとっては、1月のポストシーズンの時期に試合に出場していることは当たり前なのだ。

 

 チームリーダーのプレーオフ経験が豊富なことは、若い選手に安心感を与える。しかもそれがスーパーボウルに9度出場し、6度優勝したQBならなおさらである。

 ブレイディは、バッカニアーズの精神的支柱としても大きな役割を果たした。

 

 ブレイディと同じく40歳を過ぎてチームをプレーオフに導いたブリーズは、これが彼の最後のシーズンになる可能性が高い。

 1月15日に42歳の誕生日を迎えるブリーズは、今年がセインツとの契約の最終年にあたる。

 シーズン終了後に契約を延長する可能性は残されているが、近年は故障で戦列を離れることも多く、今季限りでユニホームを脱ぐのではないかとみられている。

TDを挙げて喜ぶセインツのQBブリーズ(AP=共同)
TDを挙げて喜ぶセインツのQBブリーズ(AP=共同)

 

 そのブリーズが率いるセインツ(NFC南地区優勝)は、ベアーズ(NFC北地区2位)を21―9で下した。

 前半終了時で7―3と苦戦したように見えるが、リーグ4位のディフェンスがベアーズのオフェンスを封じ込め、後半にオフェンスが爆発して引き離した。

 ベアーズは試合の趨勢がほぼ決定的になってからようやくTDを挙げることができたが、内容は完敗だった。

 

 今年チャージャーズからコルツ(AFC南地区2位)に移籍したリバースは、チームをプレーオフに導くことで周囲の期待に応えることができた。

 しかし、攻守ともに戦力が充実しているビルズ(AFC東地区優勝)の前に24―27と力及ばなかった。ビルズは95年シーズン以来となるプレーオフ勝利だ。

 

 リバースは自らの去就について明らかにしていないものの、これがコルツでの最初で最後のシーズンとなるとの見方が強い。

今季もスーパーボウル進出はならなかったコルツのQBリバース(AP=共同)
今季もスーパーボウル進出はならなかったコルツのQBリバース(AP=共同)

 リバースは4人のQBがドラフト1巡で指名された04年のNFL入りだ。

 同期のロスリスバーガーやイーライ・マニング(ジャイアンツ、昨季限りで引退)がそれぞれ2回のリーグ優勝を経験したのに対し、リバースはパスでは彼らを上回る成績を残していながらスーパーボウルには縁がない。

 昨シーズン終了後には、15年在籍したチャージャーズから事実上の戦力外通告をされた。

 移籍をしてでも現役続行にこだわったのは、スーパーボウルへの渇望があるからだ。しかし、今年もそれはかなわなかった。

 

 リバースが06年にチャージャーズの正QBになったとき、ポジションを奪われる形でフリーエージェントとなって移籍したのがブリーズだ。

 ブリーズは移籍先のセインツで、ハリケーンで大きな被害を受けたニューオーリンズの復興のシンボル的存在となり、09年にはスーパーボウル優勝を経験する。

レーベンズのラン攻撃を支えるRBドビンズ(AP=共同)
レーベンズのラン攻撃を支えるRBドビンズ(AP=共同)

 

 ブリーズとリバースがともに今季限りの引退を噂されるなかで、プレーオフ1回戦は少なからず因縁のある二人の明暗が分かれた形となった。

 そのほか、ラムズ(NFC西地区2位)が地区ライバルのシーホークス(NFC西地区優勝)に30―20で勝ち、レーベンズ(AFC北地区2位)がタイタンズ(AFC南地区優勝)を20―13で下して昨年のディビジョナルプレーオフでのリベンジを果たした。

試合前に選手の士気を鼓舞するラムズのマクベイHC(AP=共同)
試合前に選手の士気を鼓舞するラムズのマクベイHC(AP=共同)

 

 次週のAFC、NFC準決勝(ディビジョナルプレーオフ)のスケジュールと対戦カードは次の通り。

 ▽1月16日(日本時間17日)

ラムズ@パッカーズ

レーベンズ@ビルズ

 ▽1月17日(同18日)

ブラウンズ@チーフス

バッカニアーズ@セインツ

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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