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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

編集長の独り言=「サイドスロー」

2021.1.2 13:02 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
2019年のライスボウルでパスを投げる関学大QB奥野耕世選手(3)=東京ドーム
2019年のライスボウルでパスを投げる関学大QB奥野耕世選手(3)=東京ドーム

 

 「サイドスロー」。懇意にしているアメリカンフットボールファンや会社の記者仲間から、関学大のエースQB奥野耕世選手の投げ方について「あれでいいのか?」という質問をよく受ける。

 答えは決まっていて「あれでいい」。なぜなら「早いタイミングで投げることで、相手守備の対応を遅らせる」「短いパスの場合、サイドスローの方がコントロールしやすい」というのがその理由だ。

 

 コーチをしたこともない小欄が、なぜここまで言い切れるかというと、それはすべてが関学大の小野宏チームディレクターの受け売りだからだ。

 自らも「ファイターズ」のQBとして活躍し豊富なコーチ経験を持つ小野さんは以前、QBを教える際には「肘を高く上げて、上から投げろ」と指導していた。

 しかし、今はリリースポイントの高さよりも、リリースの速さを優先した方がいいと感じているそうだ。

 

 「ロングハンドオフ」と呼ばれるWRへのサイドスクリーンや、RBへのスイングといったタイミングの早いパスでは、モーションの小さいサイドスローでいかに速くボールをデリバリーするかが鍵になるという。

 日大との甲子園ボウルで効果を発揮した、俊足RB三宅昂輝選手のスピードを生かしたオープン攻撃はその典型である。

 

 米プロフットボールのNFLでも、今季のピッツバーグ・スティーラーズのように、大型のQBがショートパスを駆使したオフェンスを展開して白星を重ねているチームがある。

 アメリカのプロのコーチも上から投げることを奨励しているが、トップのQBたちの実戦でのリリースポイントは、必ずしも高くない。

 

 奥野選手のスローイングフォームは、現代フットボールが求める要素に合致していて「リリースの高さを求める周囲の声に惑わされる必要はない」と、小野さんは折にふれてアドバイスしてきた。

 

 1月3日に東京ドームで開催される日本選手権「ライスボウル」で、関学大は8年前に15―21と肉薄した社会人王者のオービックと対戦する。

 今回は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、シーズンを通して出場チームが練習不足であることなどを理由に、本来の15分クオーターから12分クオーターに試合時間を短縮して開催される。

関学大とのライスボウルの試合終了間際、逆転のタッチダウンを決めるオービックRB古谷拓也選手(中央)=2013年、東京ドーム
関学大とのライスボウルの試合終了間際、逆転のタッチダウンを決めるオービックRB古谷拓也選手(中央)=2013年、東京ドーム

 

 関学大の大村和輝監督は、記者会見で「選手が最後まで集中できる」など、12分クオーターのメリットを口にしている。

 

 ライスボウルを誰よりもよく知る、関学大前監督の鳥内秀晃さんは言う。

 「15分クオーターだと、学生チームはメンバー交代で1年生を出すケースがあり、とても危険なので、12分はありがたい」「奥野がうまく動いてパスを決めることができれば、試合は面白くなる」

 RB、WRにタレントがそろっているのも強みだ。

 

 総合力でオービックの優位は動かないが、「何かやらんと、おもんないでしょう。大村監督は、いろいろ考えていると思いますよ」。

 バトンを渡した「硬派の知将」の手腕に期待する鳥内さんの見立てである。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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