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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.355

2020.12.24 15:07 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
関学大―立命大が行われた大阪・万博記念競技場から見える「太陽の塔」
関学大―立命大が行われた大阪・万博記念競技場から見える「太陽の塔」

 

 〈スポーツは強い方が勝つ。「そんなことはない、スポーツには予測できないドラマがある」と人は言う。しかし、そのドラマもまた、他者が知り得なかった予想外の勝者の準備や作戦が生んだものなのだ。準備もなく、ミスを重ねて勝つ者はいない。だからスポーツの結果に、プレーヤーは生涯こだわり続ける。〉

 

 今年7月31日に亡くなった、広告界の大御所、岡康道さんが雑誌に連載していたエッセイの一節だ。

 

 元アメリカンフットボール選手の岡さんのスポーツに関する考察は、とても深みがある。ご本人は「選手としては三流だったので、見る目を養った」と言っていた。

 ヒットCMを世に送り出す源泉になっていた鋭い洞察力をもって語られる独自の哲学には、他者を納得させる不思議な力があった。

 

 新型コロナウイルスの影響を色濃く受けた今シーズン。取材した中で、国内の「ベストゲーム」はどれかと問われたら、迷わず史上初めてトーナメントで争われた関西学生リーグの関学大と立命大による決勝を挙げたい。

 結果はご承知の通り、関学大が試合終了と同時に劇的なFGを決めて逆転勝ちした。

 

 この試合でファンの俎上に上がるのは、立命大がリードして迎えた試合終盤の攻撃だ。

 エースRB立川玄明主将の力強いランで相手ゴール前に迫りながら、TDを狙ったパスがエンドゾーン手前で関学大DBにインターセプトされ追加点を奪えなかった。

パワフルな走りで関学大守備陣を切り裂く立命大のRB立川玄明主将(42)=撮影:山口雅弘
パワフルな走りで関学大守備陣を切り裂く立命大のRB立川玄明主将(42)=撮影:山口雅弘

 

 立命大の古橋由一郎監督は「あそこは立川の脚がつっていたので(攻撃コーディネーターが)弱気になってパスをコールしたのかなと思います」と振り返った。

 しかし、これを作戦ミスと断じてしまうのは酷である。考え抜いた末のベストの選択と理解したい。古橋監督もそう思っているはずだ。

 

 聞けば関学大は、こうした場面でどう対処するかという練習を、攻守の1軍メンバーが入念に重ねていたそうだ。すごいチームである。

 関学大の準備が、立命大のそれを上回った。まさに岡さんが言う「他者が知り得なかった予想外の勝者の準備や作戦が生んだ」結果だった。

 

 学生界をリードする関西の両雄が繰り広げたハイレベルな攻防は、あらためてアメリカンフットボールという競技の奥深さを教えてくれた。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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