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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

ドラマのような展開で勝利に導く レーベンズのQBジャクソン

2020.12.16 12:36 生沢 浩 いけざわ・ひろし
自ら走ってTDを挙げるレーベンズのQBジャクソン(AP=共同)
自ら走ってTDを挙げるレーベンズのQBジャクソン(AP=共同)

 

 チーム敗戦のピンチに、けがをしたはずのエースQBが颯爽と現れて逆転勝ちを演出する。そんなドラマのような展開がNFL第14週のマンデーナイトゲームで起こった。

 主役はレーベンズのラマー・ジャクソンだ。

 

 レーベンズ(8勝5敗)のこの日の対戦相手は、同じAFC北地区のブラウンズ(9勝4敗)。1995年を最後にオハイオ州クリーブランドを離れてメリーランド州ボルティモアに移転し、ブラウンズの名を捨てて新チームとなった現在のレーベンズにとって、1999年に新興チームとして誕生して旧チームの歴史を受け継いだ現行ブラウンズは因縁の相手だ。

 

 同地区でスティーラーズ(11勝2敗)が頭一つ抜け出ているなかでプレーオフ枠を争う2チームだが、第3Q終了時にはレーベンズが34―20と大きくリードしていた。

 ところが、ここでレーベンズをアクシデントが襲う。QBジャクソンがけいれんを起こしてロッカールームに戻ってしまったのだ。この時点でジャクソンの試合復帰の確率50%と発表された。

 

 QBがトレース・マクソーリーに代わって、レーベンズのオフェンスがやや停滞した隙に、ブラウンズはQBベイカー・メイフィールドのTDパスとTDラン、2点コンバージョンの成功で35―34と逆転に成功する。

 さらに悪いことに、残り試合時間2分12秒で行ったレーベンズの第3ダウンのプレーでマクソーリーが足を負傷してしまう。

 第4ダウンで5ヤードを残し、レーベンズは絶体絶命のピンチに陥った。

 

 その時である。テレビの画面ではロッカールームを勢いよく飛び出すレーベンズの背番号8が映し出された。

 ジャクソンはけがの影響などみじんも感じさせない身軽さでサイドラインに戻ると、スタッフからヘルメットを受け取ってそのままフィールドに戻った。

 

 レーベンズとジャクソンにとって幸いだったのは、試合が2ミニッツウオーニングに入ったことだった。

 そのインターバルがあったからこそ、ロッカールームから飛び出してフィールドに戻ることができたのだ。

 

 やはりジャクソンは役者が違う。戻って来るやいなや、右に大きくスプリントアウトしたかと思うとWRマーキス・ブラウンに44ヤードのTDパスを決めてしまうのだから。

 あっという間もないほどの逆転劇である。こちらも2点コンバージョンが成功して42―35とリードを奪う。

TDパスを決めるブラウンズのQBメイフィールド(AP=共同)
TDパスを決めるブラウンズのQBメイフィールド(AP=共同)

 

 陳腐なドラマと違うのはこれでジ・エンドとならなかったことだ。

 ブラウンズも18年ぶりのプレーオフ出場に向けて好調さを維持しているだけあって、わずか4プレーでメイフィールドからRBカリーム・ハントへのTDパスが成功し、試合を42―42の振り出しに戻した。

 

 ただし、この時点で残り試合時間は1分4秒。試合巧者のジャクソンとレーベンズにとってはFG(3点)で再逆転するには十分だった。

 最後のブラウンズの攻撃はラテラルパスを繰り返した結果、エンドゾーンでボールキャリアーがタックルされてセーフティー。最終スコアは47―42だった。

 

 不思議なことにスター選手には見せ場が回ってくるものだ。そして、その見せ場で能力を存分に発揮できる選手だけが「スーパースター」と呼ばれるにふさわしい。

 ジャクソンはやはり、稀代のスーパースターの一人である。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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