【編集後記】Vol.352

囲み取材の輪が解けた後、日大のエースQB林大希選手から声を掛けられた。
「宍戸さん、僕が去年の今頃宣言したこと覚えていますか? 来年は絶対に勝って甲子園に行くって言いましたよね。(昨年優勝の)早稲田とは試合ができなかったけど、約束守りました」
彼は確かに、力強くそう宣言していた。横浜スタジアムで行われた、関東大学リーグ1部BIG8の優勝決定戦。相手はこの日と同じ桜美林大だった。
11月29日、東京・アミノバイタルフィールドで行われた、桜美林大との1部TOP8の優勝決定戦。林選手は前半にけがをして、後半はサイドラインから戦況を見守った。
「僕がけがをしてから、みんなの顔が急に晴れやかになって逆転してくれた」。そう言って取材者の笑いを誘うあたりが、また憎い。
林選手には「いつも同じ質問で申し訳ない」と前置きして聞くことがある。「何で日大QBのエースナンバーの10番ではなく、19番を付けているのですか?」
返ってくる答えは「余っていたから」と素っ気ない。
林選手は、3年前の2017年に「10番」を背負い、「フェニックス」を27年ぶりの大学日本一に導き、1年生では史上初めて年間最優秀選手に贈られる「チャック・ミルズ杯」に輝いた。
林選手は言う。「10番には誇りを持っているけど、19番にも誇りを持っている」
「10番は分かるけど、19番はなぜ?」としつこく尋ねると「昔、立命の東野さんが付けていたでしょう」と言う。
「東野さん」とは、1994年に立命大が初出場で甲子園ボウルを制した時の2年生QBで、抜群の身体能力を披露してミルズ杯を獲得した東野稔さんのことだ。
当時、立命大で東野選手を教えていたのが橋詰功現日大監督である。

橋詰監督に全幅の信頼を寄せる林選手なので、理由はそこにあるのかと思い橋詰監督に確認したところ「そういう話はしたことがない」と笑っていた。
今、SNS上ではある日大OBが発起人になって「林君に10番を付けてもらいましょう」キャンペーンが、一般のファンを巻き込んで展開されている。
3年ぶりに実現した、ライバル関学大との甲子園ボウルは12月13日。果たしてサプライズはあるのでしょうか。(編集長・宍戸博昭)