×
メニュー 閉じる メニュー
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

期待の新人が初先発 ドルフィンズのQBタンゴベイロア

2020.11.4 11:43 生沢 浩 いけざわ・ひろし
ラムズ戦でレシーバーを探すドルフィンズのQBタンゴベイロア(AP=共同)
ラムズ戦でレシーバーを探すドルフィンズのQBタンゴベイロア(AP=共同)

 

 NFLドルフィンズの新人QBで、今年のドラフト1巡全体5番目指名のトゥア・タンゴベイロアが、第8週のラムズ戦で先発デビューを果たした。

 

 新人QBが今季のレギュラーシーズンで先発出場するのは、ベンガルズのジョー・バーロウ、チャージャーズのジャスティン・ハーバートに続き3人目だ。

 

 

 試合は28―17でドルフィンズが快勝したが、勝利に貢献したのは四つのターンオーバーを奪ったディフェンスとパントリターンTDを記録したスペシャルチームだった。

 

 タンゴベイロアにとってはむしろ、NFLの厳しさを学ぶ一戦となった。

 

 

 22回の試投で12回の成功、93ヤードゲインで1TD、レーティング80・3に終わったタンゴベイロアは試合後、「このオフェンスの持つポテンシャルを引き出すことができなかった。今日はディフェンスに感謝だ」と述べた。

 

 NFLの洗礼を浴びたのは、ドルフィンズのオフェンス開始からわずか2プレー目立った。

 

 パスを投げようとしたタンゴベイロアはあっという間にポケットをつぶしてくるラムズのDLになすすべなく、DEアーロン・ドナルドのストリップサックを受けてファンブルロストしてしまう。ラムズはこのターンオーバーを生かし、先制TDを挙げた。

 

 

 その後もタンゴベイロアには「ルーキーミステーク」が目立った。

 

 簡単なバブルスクリーンのパスでコントロールミスをしたり、レシーバーを探せずにQBサックを受けたりした。

 

 

 非凡な才能の片りんをうかがわせたのは、第1Qの最終プレーでのTDパスだ。

 

 ゴール前3ヤードの地点から、エンドゾーンを右から左に走ってくるWRデバンテ・パーカーにパスを成功させた。

 

 この時パーカーは、ラムズのディフェンダーに背後からコンタクトを受けて体勢を崩し、倒れかかっていた(ディフェンスのパスインターフェアランスの反則。ドルフィンズのディクラインでTD成立)。

 

 そのパーカーがキャッチできるほんのわずかのスペースに正確にボールをデリバリーしたのだ。

 

 この場面での集中力とTDパスを成功させる能力は、さすがに名門アラバマ大学で全米制覇を果たしたQBだけのことはある。

 

 

 ただ、第4Qの残り2分以内で、あと3ヤードを取ればファーストダウン更新で、タイムアウトを使い切ったラムズに対してニーダウンで試合が終了という場面でパントに終わり、ラムズに1分8秒の攻撃時間を与えてしまった。

 

 この時点で11点の差があったから事なきを得たものの、ゲームマネジメントの点では未熟さを露呈した。

NFLで初先発したドルフィンズのQBタンゴベイロア(1)(AP=共同)
NFLで初先発したドルフィンズのQBタンゴベイロア(1)(AP=共同)

 

 

 タンゴベイロアへの先発交代は、いつか必ず起こりうるものだったが、このタイミングでの実現はやや唐突な感じは否めなかった。

 

 というのも、ドルフィンズは第6週までライアン・フィッツパトリックを先発QBに起用し、1勝3敗のスタートのあと2連勝して上昇気流に乗っていたからだ。

 

 第6週の同地区ライバルのジェッツ戦では24―0と完勝だったため、終盤にはタンゴベイロアが登場した。

 

 

 今年は新型コロナウイルスの影響でプレシーズンゲームが行われなかったから、タンゴベイロアにとってはこれが正真正銘のNFLでの実戦デビューだった。

 

 出場機会が短かったため、パスを2回成功させただけで終わった。

 

 

 しかし試合後、ブライアン・フローレスHCはフィッツパトリックからタンゴベイロアへの先発交代を宣言。バイウイークだった第7週に体制を変えることにしたのだった。

 

 

 フィッツパトリックはこの決定に「非常に傷ついた」と不快感をあらわにしたが、バイウイークの間は実に細やかにタンゴベイロアの支援をしたそうだ。

 

 9月の開幕からタンゴベイロアにアドバイスを送り続けてきたフィッツパトリックだが、それは先発と控えの立場が逆転しても変わることはなかった。

 

 ドルフィンズ対ラムズの試合を中継したFOXテレビの映像では、二人が仲良くスタジアム入りする様子が放映され、関係が良好であることが示された。

10月の49ersとの試合前に話をするタンゴベイロア(1)とフィッツパトリック(14)(AP=共同)
10月の49ersとの試合前に話をするタンゴベイロア(1)とフィッツパトリック(14)(AP=共同)

 

 

 昨季終了後には現役を退くことも示唆していたフィッツパトリック。NFL選手である以上は先発にこだわりたいのだろうが、一方でタンゴベイロアを育成したいという気持ちもあるのだろうか。

 

 

 タンゴベイロアは、これから実戦を通じて成長していかなければならない。

 

 そのためにはこれまで複数のチームを渡り歩き、先発とバックアップの両方を経験してきたフィッツパトリックの存在は何物にも代えがたい。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

最新記事