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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

好きこそ物の上手なれ

2020.10.22 13:57 中村 多聞 なかむら・たもん
一流選手ほど用具にこだわり大切にする
一流選手ほど用具にこだわり大切にする

 

 アメリカンフットボールに限らず、その競技で上達したりチャンピオンを目指したりするなら、昔から伝わるこのことわざ「好きこそ物の上手なれ」というのがぴったりくるなと思っています。

 「上達には反復練習や積み重ねが大切」と毎度唱えておりますが、その前に大切なことは「フットボールを好きになる」や「自分のポジションを好きになる」ことだと思います。

 

 今回のポイントは①偏らず全てに詳しくなろう②用具にも詳しくなろう③しんどいことや嫌なことは、いつか消える日が来る―となります。

 順番に書いていきます。

 

 部活動やクラブチームに入って活動しているのですから、ほとんどの人はフットボールのどこかの部分が好きだから、気に入っているから続けているのが普通でしょう。

 ただ、フットボールは非常に複雑な競技です。格闘技の要素があり、瞬発力と耐久力を必要とし、役割分担をしながらも作戦面の実行力が強く求められます。そして、ボールや防具など多くの用具を使用します。

 

 つまり、フットボールで上達したり成功したりを目指すのであれば、これら全てに精通しているべきでしょう。

 フットボールはポジションが多く、トップチームだと20以上、ザックリ分類しても8種類はあり、体格や求められるスキルもさまざまです。

 

 人数の少ないチームだと一つのポジションに選手一人だけ、なんてことも大いにあり得ます。

 そういった場合、初心者は誰からもその専門的な知識を教えてもらえないまま引退を迎えるケースもあります。

 

 このようにチーム事情はいろいろあるでしょうし、チーム運営とコーチングシステムが完備されているチームは、日本ではそれほど多くありません。

 しかし、うまくなるためにチーム事情は関係ないですよね。自分がどれだけやるかにかかっています。

 

 今回のテーマである「好きこそ物の上手なれ」が大切だと思います。

 フットボールは好きだけれど、トレーニングは嫌いなのでやらない。痛いのは嫌いなのでぶつかり稽古は本気でやらない。持久走は苦手なので全力でやらない。

 作戦を覚えるのが苦手、雨の日は練習を休みたいなど、嫌なことはたくさんあります。それは誰でもそうでしょうし、僕も初級者の頃はそんな感じでした。

 

 逆に、トレーニングは好きなのでしっかりやっている、ぶつかり稽古は好きだ、持久走は得意だ、作戦を考えるのが好きという人もいるでしょう。

 その「好き度」を、フットボールに関わることなら全て同じにしてみてください。そしてその後はしっかり勉強して知識を得て「全てに詳しくなる」のが望ましいと思います。

 

 何か一つだけ得意でも、何かだけ詳しくてもフットボールは分業制だからいいのでは?  これは大きな間違いです。

 ポジションや攻撃、守備に関係なく、多くの知識を身につけることで、自分のやるべき本当の仕事がはっきりと見えてくるものです。

 

 「用具に詳しくなる」は、ヘルメットなどフットボールの特徴である防具類、動きやすさなどに影響するシューズやウエアにテーピング類。最近ではグローブも進化し、ボールを取りやすい粘着性の高いものが好まれています。

 こういった用具は本当に自分にジャストフィットしているのか? 同様の価格帯でもっと使いやすく動きやすいものがあるのではないか?

 自分の装具の一部分を3ミリ調節するだけで、格段に視野が広がったり、関節の可動域が大きく変化したりを全てチェックし調査することが大切です。

 

 先日、何人かの教え子がヘルメットの分解掃除すらしたことがないと言っていたので、一度やってみたらと勧めてみました。

 プロならプロの用具係が全てやってくれますが、自分でやって細部の仕組みも把握して微調整や部品の整備をしてより使いやすくして、試合中に故障を起こさず長い期間使えるようにすることが大切なのです。

 

 シューズは次の試合会場に敷かれている芝生や土に最適な仕様になっていますか? 靴ひもの調整や中敷の形状や厚さは、あなたのパフォーマンスが最高になるようにいろいろ試しましたか?

 試合で使うジャージーの形状やサイズは、防具を装着して体の動きがベストな状態ですか?

 用具類に「関心がないから、与えられた物を特に何も考えず使っている」では、用具を使うスポーツの競技者として残念な気がします。

 

 フットボール以外にも用具を使う競技はたくさんありますが、僕の感覚では一流の人ほど自分たちの使う用具に精通している印象を持っています。

 オートバイのレーサーがほんの少しの違いをメカニックにリクエストするのは、機械や道具に精通し鋭敏な感覚を研ぎ澄まして競技しているからなのです。

 

 最後の「しんどい、嫌と思わなくなる」ですが、フットボールのことを誰よりも深く好きになり詳しくなっていけば、やっぱり勲章やトロフィーに気持ちが向きます。

 自分が何より欲しい物を手にするために決めた「やらなければならないこと」は、だんだんと「自分のやりたいこと」に変化していきます。

 何キロの重さの物を動かす、何秒で走る、体重の増減調整などなど、全て「自分のやりたいこと」になるので「しんどい、嫌と思わなくなる」わけです。

 

 実際には息が苦しく、体中から悲鳴が上がるキツいキツい鍛錬を毎日何度も何度もやるわけですからしんどいです。

 でも、本当の意味を理解せず嫌々やらされているレベルの選手には理解できないでしょうし、決して味わえない世界なのです。

 

 タモン式「好きこそ物の上手なれ」論はこんな感じです。関心を持ち、全部を好きになり深く深く知識を得てこそ、自分の行く道が見えてくるのです。

 気付いた時には自宅のリビングに欲しかったトロフィーがポンと置いてある日が来るのです。

 

 フットボールは中途半端な気持ちでできる競技じゃないってことをみんなが知っているから、アメリカでは人気がありプレーヤーは尊敬されるのです。

 皆さん、どうせやるなら真剣勝負でやってみようじゃないですか!

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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