メニュー 閉じる メニュー
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

QBマレーの機動力生かす 好調なカージナルスオフェンス

2020.10.21 11:14 生沢 浩 いけざわ・ひろし
抜群の運動能力を駆使してカージナルスの攻撃をリードするQBマレー(AP=共同)
抜群の運動能力を駆使してカージナルスの攻撃をリードするQBマレー(AP=共同)

 

 過去4年間勝ち越しがなく、プレーオフからも遠ざかっているカージナルスが、第6週を終了して4勝2敗と好調だ。

 

 シーホークスが5戦全勝で首位を走るNFC西地区で、ラムズと並ぶ同率2位につけている。

 

 

 チームを支えるのは1試合平均402・5ヤード(NFL5位)のオフェンスだ。

 特にラッシングは平均161ヤード(同4位)を稼ぎ、攻撃の柱となっている。

 

 就任2年目のクリフ・キングスベリーHCは、膨大なフィルムスタディーに基づくクリエーティブなプレーコールでディフェンスの裏を突くことに成功している。

 

 

 一昨年までヒューストン大学やテキサス農工大、テキサス工科大などでオフェンスのコーチを務めたキングスベリーHCは、カレッジで効力を発揮しているプレーの導入に積極的だ。その代表的な例がQBのランだ。

 

 NFLでは故障を恐れてQBのランを避けるのが常識だった。

 

 しかし、レーベンズのラマー・ジャクソンのように、QBであっても脚力が武器となる選手は、その能力を十分に活用しようとするチームが出てきている。

 

 トレンドは変わりつつある。カージナルスもその流れに乗るチームの一つだ。

好調カージナルスを率いるキングスベリーHC(AP=共同)
好調カージナルスを率いるキングスベリーHC(AP=共同)

 

 

 カージナルスがカイル・マレーという運動能力に優れたQBに恵まれたことが、キングスベリーがこうしたオフェンスを展開できる大きな理由だ。

 

 昨年のドラフト全体1位指名のマレーは、スクランブルではなくデザインされたQBランを見事にこなし、今季6試合で370ヤード、6TDをマークしている。

 

 シーズンで987ヤード、16TDのペースで、実現すれば並のRB以上の数字を残すことになる。

 

 

 第6週は相性のいいAT&Tスタジアムでカウボーイズと対戦したマレーは、RBへのハンドオフフェイクやWRのエンドランのフェイクからQBランを展開し、ビッグプレーを連発した。

 

 テキサス州出身のマレーは高校時代にこのスタジアムで5勝、オクラホマ大学時代とNFLでそれぞれ1勝を挙げ、7勝0敗の成績を残している。

 

 今季のマレーはパスでも成長を見せている。ランを警戒してディフェンスが浅いゾーンの守りを厚くしていることを逆手にとり、プレーアクションからWRクリスチャン・カークやデアンドレ・ホプキンスへロングパスを通す。

スピードで相手守備選手を振り切るカージナルスのWRホプキンス(10)(AP=共同)
スピードで相手守備選手を振り切るカージナルスのWRホプキンス(10)(AP=共同)

 

 

 マレーは身長が178センチで、多くのNFLチームがQBとしての起用を断念するほど小柄だ。

 

 しかし、脚力を活用することでDLに遮られがちな視野を確保し、ダウンフィールドへのパスを成功させる。

 

 マレーにとって自らのランは身長の不利を克服するために不可欠な手段でもある。これがキングスベリーのオフェンスフィロソフィーに合致した。

 

 

 次週はシーホークスとの今季1回目の対戦だ。カージナルスのこれまでの勝ち星は、いずれも勝率5割以下のチームからのものだ。シーホークスとのディビジョン内対決は真価を試される一戦となる。

 

 

 シーホークスのQBラッセル・ウィルソンも決してサイズには恵まれていないが、脚力とパス能力を兼ね備える。

 

 特に近年はパスの安定感が増し、試合終盤での勝負強さにも磨きがかかってきた。

 

 マレーにとっては目標とする存在かもしれない。

 

 「新旧モバイルQB対決」というと陳腐な表現になるが、地区の首位争いが21世紀にふさわしい、新たなスタイルのQBの活躍に彩られるのも一興だ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

最新記事