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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

「プライドは命がけで守るもの」 新たな歴史作りに挑む日大フェニックス

2020.10.14 13:29 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
法政との試合前に先発メンバーを発表する日大の伊東慧太主将=アミノバイタルフィールド
法政との試合前に先発メンバーを発表する日大の伊東慧太主将=アミノバイタルフィールド

 

 試合は、日大のオフェンスで始まった。

 最初の攻撃シリーズ。「19番」を付けたエースQB林大希選手(4年)は、主審と対戦相手の法政ベンチに向かって丁寧に一礼した。彼なりの感謝の気持ちの表れとみた。

 

 3年ぶりに復帰した関東大学リーグの最高峰1部TOP8での初戦は、林選手をはじめ「フェニックス」の面々にとっては特別な思いが詰まっていたのだろう。

 

 日大は、2018年春の関学大との定期戦で起きた「危険な反則タックル問題」で、関東学連から秋の公式戦への出場資格停止処分を受けた。

 昨年は、降格した1部下位のBIG8でリーグ戦に復帰。7戦全勝でTOP8に返り咲いた。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大を予防する観点から、今季の試合は原則無観客で行われる。

 会場となった東京・アミノバイタルフィールドでは出場チーム、連盟関係者、取材申請をしたマスコミ各社の記者らが試合を見守った。

 

 スタンドからの歓声や拍手は、もちろん聞こえない。静寂の中、選手の息づかいやサイドラインでのコーチと選手のやり取りが、はっきりと聞こえてきた。

 

 法政―日大といえば、長年関東のライバル対決として注目され激戦を展開してきた「黄金カード」である。それが開幕戦で組まれるのも、異例だった。

 

 試合は、終盤に決定力の差が出て日大が44―34で制した。序盤から負傷者が続出したのは、新型コロナウイルスの影響で十分に練習ができなかったからだろう。

 

 「あいつらと俺らでは、乗り越えてきた壁の数が違う。俺らはやってきたぞ。自分と仲間に自信を持て。フェニックスにプライドを持て」―。

 試合前、日大の伊東慧太主将(4年)はこう言って士気を鼓舞した。

 

 ただ、「あいつら」呼ばわりはいただけない。好敵手に対して失礼であり、とても気になった。

 苦しみながら歩んできた道のりの険しさを振り返り、言葉がつい過激になったのだろうが「この日を迎えられたことに感謝して、今日はクリーンに思い切りプレーしよう」くらいが良かったのではないか。

 あれだけの問題を起こした日大には、これからも世間の厳しい目が注がれていることを忘れてはならない。

関東大学リーグの主会場となるアミノバイタルフィールドI
関東大学リーグの主会場となるアミノバイタルフィールド

 

 誰よりもフェニックスを愛し、独特の指導法でチーム哲学を確立した故篠竹幹夫元監督は生前、学生を前によくこう話していた。「プライドとは、命がけで守るもの」

 

 表舞台に戻ってきた不死鳥が、新たな歴史を作る大切なシーズンが始まった。

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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