メニュー 閉じる メニュー
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

突然の先発出場で大活躍 チャージャーズの新人QBハーバート

2020.9.24 11:52 生沢 浩 いけざわ・ひろし
チーフス守備陣のプレッシャーを受けながらパスを試みるチャージャーズの新人QBハーバート(AP=共同)
チーフス守備陣のプレッシャーを受けながらパスを試みるチャージャーズの新人QBハーバート(AP=共同)

 

 チャージャーズがラムズと共用する新球場ソーファイスタジアムで初のホームゲームを行ったNFL 第2週、ファンには嬉しいサプライズがあった。新人QBジャスティン・ハーバート(オレゴン大出)のプロデビューだ。

 オーバータイムの末チーフスに20―23で惜敗したが、スーパーボウル王者をあと一歩まで追い詰めた22歳の新鋭の登場は、新たなスターの誕生を予感させるものだった。

 

 実はハーバートの出場は想定外のアクシデントによるものだった。先発が予定されていたタイロッド・テイラーが、ウオーミングアップ中に胸部のけがを悪化させてしまい出場が不可能になった。

 チャージャーズのアンソニー・リンHCにその事実が伝えられたのは、既に試合前のコイントスが終わった後だという。そして、ハーバートが先発出場の指令を受けたのはキックオフの10秒ほど前だった。

 

 試合はチーフスのキックオフで始まったため、ハーバートはいきなりオフェンスを率いることになった。

 ハドルの中では事情を知らずに驚いた選手がいたかもしれない。ところが、彼らが本当に驚くのはその後だった。

 

 最初の2プレーはRBオースティン・エケラーのランでファーストダウンを更新。これで落ち着いたのか、3プレー目で初めてのパスを投げるがこれは失敗した。

 続くプレーでRBジョシュア・エリーへのショートパスが35ヤードのロングゲインにつながって一気に敵陣26ヤードまで攻め込む。

 そして4プレー後、自らエンドゾーンに走り込んで先制のTDを挙げた。初の実戦でいきなり79ヤードのTDドライブを完結させたのだ。

自らのランでTDを挙げたチャージャーズの新人QBハーバート(AP=共同)
自らのランでTDを挙げたチャージャーズの新人QBハーバート(AP=共同)

 

 NFL初のポゼッションで自らTDを決めたハーバートは試合後「(先発出場は)人生で待ち焦がれた瞬間だ。チームメートと一緒にフィールドに出て、チーフスと対戦したあの瞬間は一生忘れない」と語った。

 

 ハーバートは33回の試投で22回の成功、311ヤードを獲得し1TDパス成功で1インターセプト、1TDランという成績だった。

 この数字には表れていないが、17―17の同点で迎えた第4Qには、10分21秒ものボールコントロールオフェンスを見せた。これは新人らしからぬ司令塔ぶりだ。

 ただ、敵陣4ヤードでファーストダウンを獲得しながら、自らの被サックもあってFGに終わったのは今後の課題だ。チーフスはFGで同点に追いつき、OTで勝利をものにした。

 

 オフェンスのスリーアンドアウトはわずか2回しかなかった。それだけハーバートはオフェンスを継続することができたということだ。

 もっとも、そのうちの1回はオーバータイムでの最初のオフェンスシリーズで、その直後にチーフスの決勝FGを許すことになったのだが。

 

 今季のNFLで新人QBが先発出場したのは開幕週のジョー・バーロウ(ベンガルズ、ドラフト全体1位指名)に続きハーバートが二人目だ。

 ハーバートは全体6番目指名だったが、今季はテイラーが先発を務めるというのがチームのプランであり、こんなに早く実戦デビューする予定ではなかった。

 敗れたとはいえハーバートの新人離れしたプレーぶりは、フィリップ・リバースに続くフランチャイズQBの台頭を望むファンには希望の光となったことだろう。

 

 ただし、リンHCはあくまでもテイラーを先発起用する方針に変更はないと強調する。

 彼は「タイロッド・テイラーは百パーセント我々のQBだ。体調に問題がない限り彼が先発する」と語り、ハーバート待望論には消極的だ。

 テイラーが次週のパンサーズ戦までに回復すれば、ハーバートはまたバックアップに戻ることになる。

 

 プレッシャーがかかるのはテイラーだ。ハーバートが実力を見せつけてしまっただけに、不振に陥れば先発の座が危うい。本来ならもっと先だったはずの先発QB争いが前倒しになった形だ。

 ファンにとってはテイラーが好調でチームが勝てばいいが、一方でハーバートにも早くエースQBになってほしいという思いがあるに違いない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

最新記事