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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

「いつもと違うシーズン」 コロナ禍で開幕したNFL

2020.9.16 10:54 生沢 浩 いけざわ・ひろし
タイタンズとの開幕戦を観戦するブロンコスのファン(AP=共同)
タイタンズとの開幕戦を観戦するブロンコスのファン(AP=共同)

 

 NFLは現地時間9月10日から14日にかけて、開幕週の全16試合を予定通りに行った。

 新型コロナウイルスの感染防止のため、コーチたちはマスクやフェースシールドを着用し、普段は満員になるはずのスタジアムは人数制限されるか無観客だった(対応は主催権利のあるチームの判断による)。

 

 世界的なコロナ禍において、当初の予定通りにシーズンの開幕が迎えられた例はあらゆるスポーツリーグ、スポーツイベントでごくまれであり、その意味でNFLの通常開幕は異例中の異例だ。

 「新しい生活様式=ニューノーマル」が求められる世の中で、NFLがどのようにリーグ運営を行うかは世界中の注目を浴びる。

 

 選手や選手と接触する機会の多いコーチや関係者は日常的にPCR検査を受け、万が一感染者が出た場合には濃厚接触者も含めてすぐに隔離される。

 試合出場登録選手は通常の46から48人(ただし、OLを8人以上含むことが条件。そうでなければ47人)に拡張し、シーズン中の復帰人数に制限のある故障者リザーブリストも3週間の登録期間を過ぎれば何人でも出場再登録を認めるなど、可能な限り新型コロナウイルスを理由とする試合中止を防ぐ方針だ。

試合前に健闘を誓い合うシーホークスのピート・キャロルHC(左)とファルコンズのダン・クインHC(AP=共同)
試合前に健闘を誓い合うシーホークスのピート・キャロルHC(左)とファルコンズのダン・クインHC(AP=共同)

 

 フットボール特有の工夫もある。人工的なクラウドノイズがそれだ。満員の観客が生み出すクラウドノイズは、ビジターチームのコミュニケーションを難しくする。ホームチームが持つ重要なアドバンテージの一つだ。

 無観客または人数制限のあるスタジアムでは、そのアドバンテージが生かせない。そこでNFLが考案したのが過去に録音したクラウドノイズをスタジアム内で人工的に流すというアイデアだ。

 

 テレビ中継をご覧になったNFLファンも多いと思うが、観客がいないはずのスタジアムから歓声が聞こえていたのはこのためだ(放送局によっては独自に録音した音声データを放送に乗せているケースもある)。

 ただし、NFLが用意する人工的クラウドノイズの大きさは70デシベルと決められており、これを超えないように監視するスタッフがスタジアムに派遣されるという。

 70デシベルとは街中の喧騒、室内の掃除機の音、間近に聞こえる蝉の声などに例えられる。

 人が不快を感じるレベルだとされるが、大声で話せば1、2メートルほど離れた人とも会話ができる。

 

 ところが、満員のNFLスタジアムのクラウドノイズは100を大きく超える。

 例えば、開幕週でバッカニアーズと対戦したセインツのスーパードームでは120デシベルが通常だとされる。

 間近で聞く飛行機のエンジン音、電車が通過するときのガード下の騒音、近くの落雷の音などがそれにあたる。聴覚に異常をきたすリスクがある。

 

 120は数字の上では70の1・7倍に過ぎないが、デシベルは対数なので実際には120デシベルは70デシベルの32倍なのだそうだ。

 人工的なクラウドノイズは本物ほどの効果はなく、ホームフィールドアドバンテージとはならないのだ。

客席にファンの写真を設置するイーグルスの本拠地のスタッフ(AP=共同)
客席にファンの写真を設置するイーグルスの本拠地のスタッフ(AP=共同)

 

 しかし、これも今シーズンのNFLに与えられた条件の一つだ。こうした条件を受け入れながら17週のレギュラーシーズン、それに続くプレーオフを過ごしていかなければならない。

 来年の2月7日(日本時間8日)にフロリダ州タンパで行われるスーパーボウルが無事に開催されるまで、NFLもファンも「いつもと違うシーズン」を受け入れていくしかない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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