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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

山本慎治のスウェーデンのアメリカンフットボール事情2020(中)

2020.9.1 13:25
ブラックナイツの本拠地で開幕戦を迎えた赤いジャージーの86ers=提供:山本慎治さん
ブラックナイツの本拠地で開幕戦を迎えた赤いジャージーの86ers=提供:山本慎治さん

 

 私がチームドクターをしている「ウプサラ86era」は、スウェーデントップリーグに所属しています。

 今年のチームの特徴は、アメリカやカナダなどからの補強外国人選手がいないこと、そしてファームチームとして契約した下部リーグ所属の「アーランダ・ジェッツ」と同じヘッドコーチ(HC)が指導し、同じプレーブックを使用することです。

 

 合同チームは今年1月に始動しました。冬の期間は屋内練習をしておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によるリーグ開幕延期の決定とともに、チーム練習はいったん中断されました。そして試合日程の決定後、チーム練習が再開されました。

 選手は十分確保できて、久しぶりの活気のある練習風景となり、一体感も感じます。

 

 しかし、86ersのマルティン・スーデルベリ会長によると、チームの経済事情は非常に厳しいということです。

 入場チケットやグッズ、会場での軽食販売等による収益も厳しい予想となっております。

 

 8月22日の開幕戦は、「オーレブロ・ブラックナイツ」との遠征試合。ウプサラから170キロ離れたオーレブロまで選手、スタッフが車に分乗しての移動となりました。

 私はスーデルベリ会長の車に同乗しました。その車には馬用家畜運搬トレーラーが付けられ、そこにボールやジャージーなどチーム用具を載せて運びます。

 まず用具搭載の手伝いから開幕戦の朝は始まりました。試合会場には12時に到着しました。試合は14時開始です。

 

 スウェーデンアメリカンフットボール協会が定めた新型コロナウイルスガイドラインに従い、会場入り口外で私は全選手の問診と問診票の確認をしました。

 登録書類と選手を開催責任者側が確認して、全選手が入場するまでに1時間以上を要しました。開催チームのスタッフも非常にナーバスに、そして慎重になっている印象でした。

 選手控え室には、これまでは試合前後もハーフタイムもよく出入りしておりましたが、今回は一度も行かず、サイドラインへのチームの用具運搬、設営などを手伝いました。

 

 そして、選手がフィールドに出てきて、久しぶりの試合前練習が始まりました。86ersの赤いヘルメットの選手にジェッツのオレンジのヘルメットの選手も混じっています。

 曇ったり晴れたり、小雨が降ってまた晴れたりという天候でしたが、選手たちそしてコーチの待ちに待った試合への喜びと期待を感じました。

 私はというと、とにかく遠征先でのけがや脳しんとうなどは起こらないでほしいという思いが強く心にありました。

 

 旗を持って勢いよくフィールドに走り込むチーム入場はなく、一人一人がゆっくりサイドラインまで歩いてきました。

 そして2列に並び選手間の距離を保って、スウェーデン国歌の独唱を聞きました。

 

 コイントスにはチームキャプテン1人が参加。待望の2020シーズンのキックオフとなりました。

 

 86ersのエースQBは去年の開幕戦、この場所で足を骨折をしてシーズンが終了しました。

 骨折は完治、今年こそはと期するものがあるとは思いますが、最近の練習では肩の不調を訴えておりました。

 対するブラックナイツも、昨年はチーム編成過渡期でリーグ最下位に終わり、今年は復活をかけたシーズンです。

 

 試合は開始早々に6点を取られましたが、その後すぐにTDパスとキックが決まって7―6とリードしました。

 しかし、QBの不振がたたって前半を終え7―21。後半から急遽RBがQBとしてプレーする状況でした。後半は双方得点なく、敗戦となりました。

パスを投げる86ersのQB=提供:山本慎治さん
パスを投げる86ersのQB=提供:山本慎治さん

 

 試合後HCは「今日は準備不足で負けた、気にするな」と言っていました。

 まさにその通りですが、新型コロナの状況下、準備不足はお互い様だったと思います。ただ、4チームでのリーグ戦、6試合終わって仮に最下位でもセミファイナル出場が決まっているので、この負けが大きな痛手にならないのも確かです。

 

 選手たちの表情を見ると、誰もが非常に伸び伸びプレーしていたように思いました。

 連携などがうまくいかず、声を荒らげ苛立ちを隠さないベテランもいたり、サイドラインでHCに出場を直訴する若い選手がいたりと、そういうところはやはり日本とは違うアメリカンフットボール文化だなと思われました。

 

 難しい環境でサイドライン立てたことは嬉しい反面、多くの若者と接することが私自身にとって危険であるという認識は常に心の中にありました。

 実際、マスクをしていたのはウプサラ側では私一人、オーレブロ側ではコーチとスタッフの二人だけという状況でした。

 

 オープンスペースのサイドラインとはいえ、チームドクターとして一人一人と接する時は当然密接しております。

 彼らはもちろん症状はないのですが、無症状での感染状態という可能性は否定できません。ですから、私ができる自己防御はマスクとシールド着用、そしてこまめな手洗いということになります。

 

 試合後、会長の車でウプサラに向かいました。途中のドライブインのマクドナルドで選手と食事をしましたが、そういう時は旅の楽しさもありました。

 

 ウプサラには夜到着しました。そして翌日の8月23日には、ジェッツの試合が予定されています。

(つづく)

 

山本 慎治(やまもと・しんじ)プロフィル  

 日本、アメリカの病院の一般外科、臓器移植外科で勤務した後、2005年からスウェーデンに移住。現在はウプサラ大学病院移植外科に外科専門医として勤務。14年ウプサラで開催された第1回アメリカンフットボール大学世界選手権の日本代表チームに現地スタッフとして帯同。その後、クラブチーム 「ウプサラ86ers」のチームドクターに就任。アメフトスウェーデン代表の各年代チームにも医療スタッフとして帯同。スウェーデン空手協会の医療委員も兼任している。

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