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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

山本慎治のスウェーデンのアメリカンフットボール事情2020(上)

2020.8.28 11:30
ウプサラ86ersの練習風景=提供・山本慎治さん
ウプサラ86ersの練習風景=提供・山本慎治さん

 

 ご無沙汰しております。スウェーデン在住、アメリカンフットボールクラブチーム「ウプサラ86ers」のチームドクターの山本慎治です。

 以前、2015年と16年のスウェーデンのアメフトシーズンの情報を発信しております。

 今回は、新型コロナウイルス感染問題で世界が揺れる中、スウェーデンの2020年アメリカンフットボール事情を3回に分けてお伝えしたいと思います。

 

 ▽スウェーデンの新型コロナウイルス感染状況

 スウェーデンは人口1000万人の国ですが、8月下旬の段階で5800人以上の新型コロナ感染による死亡者が出ております。

 3月下旬から4月にかけて感染症患者数、重症者数、死亡者数のピークがあり、その時期には一日100人以上亡くなられるような状況でしたが、その後減ってきております。

 

 ▽スウェーデンでの今年のスポーツの状況

 スウェーデンでのスポーツの状況ですが、このような新型コロナ感染状況で、通常春にスタートするサッカーリーグもアメリカンフットボールリーグも早々に開幕延期が発表されました。

 スポーツとして一番人気が高いサッカーは、シーズン開幕は6月半ばからとなりました。現在も無観客試合となっており、チームの収入に大きな打撃となっています。

 ちなみに、ウプサラに本拠地を置くトップリーグのチーム、IKシリウスでは、日本人の杉田祐希也選手が中心選手として活躍されています。チームは現在16チーム中6位と健闘しています。

 

 杉田選手にお話を聞いたところ、当初は練習の後シャワールームを使用しないなどの対策がとられ、また、シーズン開幕後にチームで一斉に抗体検査をしたとのことです。

 現在の対策は、一般的な手洗いの奨励、試合に出ていない選手や途中交代の後は密接を避けるためベンチでなく観客席に着席などとなっております。

 なお、マスクは着用していません。他の都市への移動はこれまで通りチャーターバス、飛行機が使われているとのことです。

 

 日本では話題となることが多いマスクですが、そもそもスウェーデンではマスクを使う習慣はありません。

 そして、マスクの新型コロナウイルス感染予防効果が科学的に証明されていないとして、スウェーデン公衆衛生局から現時点では一般的な公共の場でのマスク着用要請はありません。

 

 それ以外のスポーツの情報ですが、私はスウェーデン空手協会の医療委員でもあります。

 5月に予定されていたパリでの世界大会、そして10月に予定されていた今年のスウェーデン空手選手権などの大会が中止されました。

 来年スウェーデンのイエーテボリで予定されている欧州選手権が開催されるのかどうか、今後の欧州の感染事情によって左右されると思われます。

 

 ▽スウェーデンのアメフト事情2020

 4月に開幕予定だったスウェーデンのアメリカンフットボールリーグは、8月22日に開幕しました。

 なお、夏に予定されていた、北欧諸国の19歳以下(U―19)国際試合は中止となりました。

ウプサラ86ersの開幕戦=提供・山本慎治さん
ウプサラ86ersの開幕戦=提供・山本慎治さん

 

 今年のシーズンは、スウェーデンアメフト協会が定めた「コロナガイドライン」に則って開催されています。

 観客数は、国の方針に合わせて50人と限定されております。観客は2メートルの間隔を空けて試合前30分から入場着席、そして選手やスタッフとの交流接触はできません。

 競技場に関するガイドラインは以下の通りです。

・試合前後の清掃消毒

・手洗い用の石鹸と消毒用アルコールの準備

・用具の試合後の洗浄

・更衣室は選手、スタッフ、医療スタッフのみ入室可

・着替えは屋外が望ましい

・1チームでできるだけ多数の更衣室を使用する

・処置室は一度に一人の選手と一人の医療スタッフのみ入室可

・医師ならびに理学療法士は、スウェーデン公衆衛生庁のコロナガイドラインを遵守

・医療機器は各治療の間に消毒

・トイレエリアは最小限とする

・トイレ使用後は手洗いと消毒

・トイレエリアは使用前後に清掃

 

 試合に参加する全ての選手、スタッフ、審判員は、自己健康評価問診票に当日記入する必要があります。

 そして、各チームの医療責任者にその問診票を提出する事で、試合エリアへの入場許可を得ることができます。審判は主審に提出します。

 この自己健康評価問診票の目的は、感染者追跡を行いやすくすることです。そして20日間チームが書類を保管します。

 

 自己健康評価問診票での質問事項は「過去72時間に熱、 喉の痛み、 咳、 頭痛、 吐き気、 下痢、 筋肉痛、 その他の症状 」があったかというものです。

 この問診票をチームドクターが本人への問診とともに責任を持って確認します。

 

 さらに、選手へのガイドラインとして、控室での密接を避けること、各選手は入場の時に走らない、国歌斉唱の時はサイドラインに2列に並んで選手同士の距離を2メートル取る。

 試合開始前のコイントスは各チーム主将一人、審判員の2メートル以内に近づかない、試合中もサイドラインでの選手間の距離を保ち、オフェンス選手とディフェンス選手は極力離れる―などとなっています。

 試合後も相手チームとの握手など接触をしない、両チーム集合写真撮影の禁止、大きな旗を振るなどの行為はしない、チアリーダー、マスコットの参加は禁止。用具、タオルや水筒は各自自分のものを準備して共用しない―などの指針があります。

 

 これらのガイドラインに従って、試合がどう運営されるのか、不安と期待の入り混じる開幕戦、それが8月22日となりました。

(つづく)

 

山本 慎治(やまもと・しんじ)プロフィル  

 日本、アメリカの病院の一般外科、臓器移植外科で勤務した後、2005年からスウェーデンに移住。現在はウプサラ大学病院移植外科に外科専門医として勤務。14年ウプサラで開催された第1回アメリカンフットボール大学世界選手権の日本代表チームに現地スタッフとして帯同。その後、クラブチーム 「ウプサラ86ers」のチームドクターに就任。アメフトスウェーデン代表の各年代チームにも医療スタッフとして帯同。スウェーデン空手協会の医療委員も兼任している。

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