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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

最強RBへの道Vol.12(中・上級者編)~その2~

2020.8.27 10:07 中村 多聞 なかむら・たもん
多聞さんの自宅にあるトレーニングルームで下半身を鍛える選手
多聞さんの自宅にあるトレーニングルームで下半身を鍛える選手

 

 前回はトレーニングも練習と位置付けて競技に関連させるべきで、パワーや筋肉量をゴールにせず、それを100%使い切れる工夫が必要、といったようなことを述べました。

 今回は、もう少し細かい部分に目を向けてみましょう。

 

 例外はもちろんありますが、通常の基本的なウエートトレーニングでは重りをゆっくりと上げたり下ろしたりして、体に刺激を加えて体を大きく、そして強くします。

 ウエートトレーニングの上級者になってくると、今どの筋肉をどのように操作し体がどう反応しているかまで認知できるようになります。

 このあたりのレベルから「効かせる!」なんて用語が出てきます。真のトレーニングは何キロを何回やったかよりも、自分の狙った場所に狙った通りの負荷をかけられたかどうかが重要なのです。

 

 フットボール用のストレングスとしてトレーニングする私たちRBをはじめフットボール選手は「筋肉に効かせられた」だけで終われません。

 前回も述べましたが、筋力と筋肉量などは全く無意味なのではなく、それだけでは足らないという意味です。

 

 トレーニングや運動中の関節可動域「レンジ・オブ・モーション」というのがありますが、ウエートトレーニングではその筋肉を鍛えるためにレンジ・オブ・モーションの範囲で目いっぱいで重りを上下させます。

 可動域にはコレといった決まりはなく、全然動かない人や、見ていて気持ちが悪くなるほどに柔らかい人とさまざまです。

 

 今回のお話ではこの可動域が大きい小さい、つまり関節が柔らかい硬いは関係ありません。

 そこでウエートトレーニングだと分かりづらいかもしれませんので、ストレッチを例にしてみましょう。

 

 ストレッチは昔風に言うと柔軟体操ですが、これにはいくつかの代表的な方法が世に広まっています。

 どこかの偉い先生が発案し、より多くの運動関係者の好みに合った方法が生き残っているのでしょう。

 

 例えば、自力でちょうどいいところまで伸ばす。反動をつけて勢いよく伸ばす。他にも、他人や機械に無理やり伸ばされるなど、いろいろな方法があります。

 今回述べたいのは「この伸びている場所への繊細なコントロール」です。どのようなストレッチでも構いませんのでイメージしてみてください。

 

 ギューっと伸ばして「きっつー!」と感じるあたりで、外から見ている人には認識できないほどの小さな動きでその部分を動かしてみてください。

 曲げたり伸ばしたりひねったり、いろいろな動きを入れてみてください。あんまり上手に操作できないですよね。ザックリした動きしか言うことを聞いてくれないと思います。

 

 これをウエートトレーニングなどの時にも丁寧に繊細に操作できるようになると、「本当の自分のレンジ・オブ・モーション」を認知して、その範囲内の隅から隅まで自由自在に操作できるようになります。

 そうすればけがをしなくなるかというと、それではまだ少し足りません。

 

 自身の「レンジ・オブ・モーション」から外に飛び出すような外圧や負荷がかかってしまうと、腱や筋肉は過伸展を起こしたり断裂という事態になってしまいますので「レンジ・オブ・モーション」の範囲で「絶対止める」という技術と癖を身につける必要があります。

 

 つまり、肉体が破綻しかねないような無理をしない技術です。操作可能な部分ではしっかり操作する。

 それ以上には伸びて(動いて)しまわないように絶対に止めるというロックを効かせて、全ての「レンジ・オブ・モーション」で「止める操作」ができるようになりましょう。

 

 これが「タモン式RB養成所」で言うところの「スタビリティー(体幹の安定性)」です。

 止めなければいけないところで強大な力と技術を使って止める。「体を固める」なんて言い方もします。

 前回「地面の力を十分に活用し、正確でハードなヒットを」と説明しましたが、これにプラスして体をカッチカチに固めていたら「強いRBだなあ」と認知されると思います。

 理屈を知ったからといって簡単に身につけられることではありませんので、他の技術習得と同様に途方もない反復練習を必要とします。

 

 ゲームや練習で良いプレーをすることと、体に無理をさせるのは同じではありません。

 体に無理をさせずに良いプレーをする努力と工夫をする。そして「ここは無茶してでもヤル!」シーンは、自分の全てをぶつけなければなりません。

 その時に甘いレベルでリミッターが作動してしまうのではなく、自分のレッドゾーンはどこからで、どうなれば壊れるのかを知っておくことが大切です。

 

 もしあなたがその鍛えた肉体やコントロール技術、スタビリティーコントロール能力を十分に備えていたとしましょう。

 絶対に勝たねばならない重要なゲームで、残り時間わずかで小差の展開。体力の消耗は両チームとも非常に激しく疲労困憊や緊張もあり脈拍は著しく高まり、筋肉が痙攣しかけています。そして数秒後には戦いが再開します。

 

 もちろん相手はあなたの回復を待ってくれません。この時に自分が蓄えてきた力を全て発揮してこそ「アスリート」と言えるわけです。

 このような厳しい状況下でも、しっかり戦えるようになる最低条件として、心肺機能と筋持久力をとにかく鍛えて強くしておかねばなりません。結局のところ、試合中に使える武器は「体力」だけなのですから。

 

 最終クオーターの最後まで元気いっぱいに暴れまくることで相手に嫌がられ、味方に頼りにされるのが「最強RB」です。

 

 フォーメーションの練習だけしていればいいのは、僕が出場を成し遂げられなかったNFLのオールスターゲーム「PRO BOWL」だけです。

 残暑厳しいですが、しっかり鍛えてシーズンの最後に笑いましょう!

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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